韓国芸能界の“闇”が炙り出されている。
トップ中のトップ、俳優ユ・アイン、イ・ソンギュン、BIGBANGのG-DRAGON(本名クォン・ジヨン、以下GD)の麻薬疑惑だ。
今年2月に疑惑が発覚したユ・アインは現在も公判が進行中で、イ・ソンギュンとGDは正式調査を控えている。
わずか数年前までは“麻薬清浄国”だった韓国だが、今は一年に約3万人近い麻薬事件が発生する「麻薬消費国」へと転落したようだ。韓国最高検察庁によると、今年8月まで取り締まった麻薬事件は、なんと1万8000人だという。このままでは、今年だけで3万人まで増えると推定されている。
また法曹界は、単純な事件件数だけでなく、薬の種類もかなり増えたと伝えている。以前は大麻やプロポフォール(全身麻酔)、向精神性物質のヒロポン程度だったが、現在はコカイン、ケタミン、ゾルピデムなども確認されるという。
そのなかでもユ・アインは、なんと8種類の麻薬を投薬していたことが国立捜査研究院の毛髪精密検査で明らかになった。有名芸能人である点、初犯である点を考慮し、拘束は避けているが、薬物の種類が複数だったなどの点を考えると実刑も十分にあり得る。
ユ・アインに続いて韓国の大衆に衝撃を与えたのがイ・ソンギュンだった。彼はアジア作品として初のアカデミー賞作品賞に輝いた『パラサイト 半地下の家族』など、多くの名作に出演してきた、まさに大物俳優だ。「家庭的」「爽やか」「善良」といったイメージの俳優だっただけに、世間にもたらした衝撃度は計り知れない。
そんななか、本日(11月4日)13時頃からはイ・ソンギュンの正式調査が行われる。彼の処罰は、どれほどのものになるのだろうか。さまざまな視点から分析してみたい。
イ・ソンギュンについて言及する前に、韓国では大麻がさほど珍しい物ではなかったことに触れておこう。
1970年代から数多くの歌手が大麻を使用してきており、一部は復帰もしている。代表的なのはヒョン・ジニョン、キム・テウォンなどだ。また海外では大麻が合法の国もあり、一般人も好奇心で喫煙するケースもあることから、比較的寛容な人も少なくない。
法律事務所セナのペク・チユン弁護士は「大麻はノンケミカルに分類される。自然から生まれ、幻覚や中毒性も比較的弱い。ただし、大麻を禁止するのは危険な麻薬に手を出すきっかけとなる、“ゲートウェイドラッグ”になるため」とし、「言い換えれば、大麻からヒロポンに移っても、ヒロポンから大麻に移ることはない」と説明する。
プロポフォールも医療麻酔薬として普段から活用されているものだ。これは自分も気付かない内に深い睡眠に落ちるため、極度の不眠症患者などは治療の一環として使用することもある。
このようなことから、大麻やプロポフォールの処罰レベルは比較的軽い。韓国の麻薬類管理関連の法律によると、プロポフォールと大麻は5年以下の懲役、または5000万ウォン(約550万円)以下の罰金刑に処されるという。また、初犯の場合は執行猶予と5000万ウォン以下の罰金になる可能性が高い。
ある芸能界関係者は「大麻は好奇心で、プロポフォールは治療で接する時がある。正しいわけではないが、一般人も少なくない。程度が酷ければ問題になるが、好奇心で1、2回する場合もしばしばある」とし、「だが、ユ・アインはコカイン、ケタミンなどが検出されたことで雰囲気が一変した」と話している。
大麻やプロポフォールと違い、ヒロポン、ケタミン、ゾルピデムなどの向精神薬は本格的な麻薬に分類される。陰で横行するため一般的に入手も難しいことから、自ら接近したと考えるのが自然だろう。
また、コカイン、ヒロポン、ヘロインは薬物の中でも特に強い幻覚と中毒を起こす“3大麻薬”に挙げられる。最近はケタミンやゾルピデムのような新形態の物もできているとのことだ。
今年2月に疑惑が発覚したユ・アインは、ソウル警察庁・麻薬犯罪捜査隊の簡易検査では大麻の陽性反応が確認され、国立科学捜査研究院の精密検査でコカイン、ケタミン、ゾルピデムなどが検出された。続いて6月に睡眠麻酔医薬品であるミタゾラム、アルプラゾラムが追加検出。このほかにも、さらに一種類の睡眠薬成分の薬物が検出されている。
法律によると、向精神薬は10年以下の懲役、10億ウォン(約1億1000万円)以下の罰金に相当する。ユ・アインは向精神薬を多用していたため、かなり大きな処罰になると予想される。
前出のペク弁護士は「麻薬法の定義規定には、向精神薬は中枢神経系に作用すると書いている。誤用・乱用すれば人体の深刻な問題となる。麻薬で死亡するケースもある」として、「そのようなことを防ぐために、買収、売買はもちろん所持だけでも全て処罰する」と説明。
続けて「麻薬は一度やると忘れられないので、供給側がサンプルとして渡したりもする。そのような人々のせいで麻薬事件が増えている」と付け加えた。
警察は現在、イ・ソンギュンが大麻のほかに向精神薬を使用したと見て調査を進めている。10月28日には試薬検査を行い、毛髪や体毛を国立科学捜査研究院に提出したという。
毛髪検査の結果が出るまでは2~3週間ほどかかる。過去1年の間に投薬した麻薬の回数、種類などが確認できる。一部によると、イ・ソンギュンは多少悔しさを訴えているという。
イ・ソンギュンと親しい知人によると、普段は麻薬中毒者のような症状を微塵も見せたことはなく、もしも薬物を使用していたとしても多くはないはずだと期待している。
またイ・ソンギュンと親しい関係者は、「普段から元気で運動もたくさんしていた。精神的にもかなり健康な人だった。ここまで来た以上、していないとは言えないが、中毒者レベルではないと思う」と話す。
イ・ソンギュンの処罰は精密検査の結果次第となる。ただ、知人や関係者の言葉から推察するならば、ユ・アインのように複数種類を高頻度で使用した可能性は高くないと見られる。初犯であることも考慮されるだろう。いずれにせよ、処罰の強度に関係なく、しっかりと反省してもらいたいものだ。
◇ユ・アイン プロフィール
1986年10月6日生まれ。韓国・大邱(テグ)出身。2003年のドラマ『四捨五入』でAraの恋人役を演じ一躍有名になる。デビューから1年でファンミーティングが開催されるほど異例の速さで人気を高めるが、芸能活動を一時休止。2006年から活動を再開し、様々なドラマや映画で助演を務める。2010年のドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』で強い存在感を発揮し、ドラマ『ファッション王』『チャン・オクチョン』『密会』、映画『ワンドゥギ』『ベテラン』『王の運命 -歴史を変えた八日間-』『バーニング 劇場版』『#生きている』などの話題作に出演して活躍している。
◇イ・ソンギュン プロフィール
1975年3月2日生まれ。2001年、MBCのシチュエーションコメディ『恋人たち』(原題)でデビュー。2007年のドラマ『白い巨塔』韓国版で正義感の強い“チェ・ドンヨン(日本の里見脩二)役”を演じてブレイクし、『コーヒープリンス1号店』『パスタ~恋が出来るまで~』『ゴールデンタイム』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』と数多くの人気ドラマに出演した。映画『僕の妻のすべて』『最後まで行く』『パラサイト 半地下の家族』などでも高い演技力を発揮。プライベートでは2009年5月に女優チョン・ヘジンと結婚しており、同年11月に長男が、2011年8月に次男が産まれている。
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