地方自治体と円満に合意し、無事公開できるのだろうか。
8月31日午後、ソウルのロッテシネマ建大入口では、映画『雉岳山』(原題)のマスコミ試写会が行われた。この場にはキム・ソンウン監督をはじめ、主演俳優ユン・ギュンサン、キム・イェウォン、ヨン・ジェウク、ペ・グリンなどが参加した。
『雉岳山』は、実在する韓国の雉岳山(チアクサン)にまつわる怪談をモチーフにしたホラー作品で、山岳バイクサークルの会員たちが、30年前に謎の死体の一部が発見された雉岳山の山小屋を訪ねたことで起きる事件を描いている。
モチーフとなっているのは、1980年に雉岳山で18個にぶつ切りにされた10の遺体が数日おきに発見されたが、公にされず、秘密裏に捜査が行われたという怪談。ただ、この話はインターネット上に出回った都市伝説、怪談の類に過ぎず、警察は事実ではなく記録もないとしている。
キム・ソンウン監督は「雉岳山怪談は虚構から始まった話だ。数百万件の再生数から始まった」とし、「話を再構成してホラーコンテンツで観客に披露するため作った」と事実ではないことを強調。続けて「最初に短編を作った時もホラー映画でデビューし、怪談やその周辺で起きる都市怪談に関心が多かった」とし、「雉岳山怪談は偶然知ったのだが、これで作れば面白そうだと思った。(死体の)切断面がきれいに斬られていたというミステリー部分が興味深かった」と話した。
また、「私たちの映画をご覧になったなら分かると思うが、自転車が出てくる。この映画を作る時、私が自転車に入門したばかりの時だった。始めた時に自転車の詳しい知識を知ったので、怪談に自転車を足せばいいんじゃないかと思った。さらなる体験型恐怖とエクストリームを混ぜて作ってみようと思った」と企画の経緯を明かしている。
斬新なテーマということもあり、公開前に116カ国に先行販売されたことについて、「作品に対するものもあるだろうし、最近は韓国文化K-POPなどへの関心が高い。雉岳山という美しい山を舞台にした“Kホラー”はどうだろうか?という関心が大きく作用したようだ」と語った主演のユン・ギュンサン。キム・イェウォンも「私たちの映画には多様なテーマがよく混ざっている気がする。ジャンル物であるにもかかわらず、豊かな感じだと思う。恐らく、そういった点が国を問わずストライクになりうる点ではないかと思う」とし、ヨン・ジェウクは「韓国型怪談ミステリーが、他の国では果たしてどうなのかという疑問があって先行販売されたのではないかと思う」と答えた。
しかし、本作の公開を控えては、舞台となっている江原道・原州市(カンウォンド・ウォンジュシ)の警察に「連続殺人が実際に起きた事件なのか?」と尋ねる電話が殺到したことで、原州市がイメージ毀損を心配し、強力な対応している状況だ。
事実ではない怪談レベルの内容のため、代表的な観光地である国立公園雉岳山にネガティブイメージが付きまとうのではないかと懸念しているという。
原州市側が映画会社に要求した事項は計4つだ。「実際の地名である“雉岳山”がそのまま使われたタイトルの変更」「映画の中の“雉岳山”という台詞が登場する部分を削除、または無音処理」「映画本編に出てくる実際の地域と事件は関係なく、虚構の内容を加工したことを告知」「ネット上で広がった監督個人用途の非公式ポスター削除」だ。
だが、映画会社側が2度の要求を拒絶すると、原州市は『雉岳山』に対して上映禁止仮処分を申請。それだけでなく、本作の上映で発生しうる、すべての有形無形被害に対して損害賠償請求訴訟など強力な法的措置をする計画だと伝えた。ここに原州市に位置する九龍寺の信徒会も公開中断を要求するなど、事態は深刻の一途を辿っている。
そのため同日、マスコミ試写会直前に原州市社会団体協議会はゲリラ記者会見を開き、自分たちの立場を表明した。
原州市社会団体協議会は「原州市民を無視して映画公開を強行している映画製作会社を強く糾弾する。『雉岳山』製作会社は原州市との2次協議も一方的に無視したまま、頑なに映画試写会と封切りをゴリ押しし、36万の原州市民を愚弄している」とし、「ありもしない雉岳山バラバラ怪談を映画広報に利用したことで、ポータルサイトの検索欄に“雉岳”だけを検索しても『雉岳山怪談』と『雉岳山バラバラ殺人』が出てくる。原州市民を代表する団体の映画公開反対声明書発表にも何の措置も取らず、このすべてを広報と金儲け手段だけに使っている」と批判した。
続いて「雉岳山は毎年100万人以上が訪れる名山だ。原州市民の生計がかかっているにもかかわらず、映画タイトル変更のような原州市の要請を受け入れることはできないという意味のない立場文だけを出している」とし、「何の後続措置もなしに、そのまま映画公開日程を推し進める映画製作会社は許せない」と強く主張したのだ。
要求として「すべての映画試写会日程を取り消すこと、映画公開を直ちに中断すること、映画タイトルで“雉岳山”の3文字を絶対に使わない」とし、「この状況が守られない場合、いかなる措置も辞さない」と糾弾した。
このような強い要求に対して監督は「噂になるという姿勢で臨まなかった。この映画が怪談・虚構の話を持って作られ、ホラーコンテンツで観てほしいと思っている。とにかく、このような葛藤は、作った人々の労苦などを考えると円満に解決されれば良いだろう。解決において、原州市民が憂慮する声があるが、共生の方向で円満に進めが良い」として願いを口にした。
ユン・ギュンサンもやはり「全く予想した状況ではない。最初にニュース記事で接し、製作会社を通じて話を聞いた時には慌てた。映画を見れば分かるが、お互いの誤解があるかもしれないと思う」とし、「映画を撮った俳優の立場としては、製作会社と原州市が円満に合意し、この映画が楽しめる映画だということを知ってほしい」と答えた。
また「私たちの映画は低予算で始まり、一丸となって撮った。怖い内容ではあるが、残暑を少しでも忘れられる時間になればと思う。よろしくお願いします」と最後のメッセージを伝えた。
最後に監督は「雉岳山は大韓民国の名山だ。登山客は80万人いて、周囲には120万人が観光する大韓民国の名所だ。雉岳山の桃やリンゴはブランドとして(地域を)活性化している」として、「私たちの映画『雉岳山』は、怪談をもとに虚構から始まった映画だ。ある意味『コンジアム』や『哭声/コクソン』のような事例のように、原州市、雉岳山と共生しながら原州市の恐怖コンテンツとして位置づけられ、ともに映画『雉岳山』、名山“雉岳山”が共生の道を歩けることを願う」と伝えた。
さまざまな面で注目を集めている『雉岳山』は、韓国で9月13日より公開予定。
(記事提供=OSEN)
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