アメリカで公開されると同時に大ヒットしているハリウッド映画『バービー』。世界各国でもヒットを記録しており、すでに全世界での興行収入は10億6680万8894ドル以上となっている。映画『スーパーマリオブラザーズ』(13億5619万570ドル)に迫る勢いで、日本でも8月11日から公開されている。
ただ、その日本よりも一足早い7月19日から公開されている韓国での成績はあまり良くない。
韓国映画振興委員会の映画館入場券統合ネットワークの集計を見ると、『バービー』は8月12日の時点で54万8947人の累計観客動員数を記録している。韓国でも、封切り前から世界各国で人気を呼んでいることが紹介されていたが、韓国ではヒットとは呼べない状態である。
『バービー』が韓国で苦戦しているのは、同時期に公開された海外映画シリーズの人気が相対的に高かったことも関係しているかもしれない。
例えば日本のアニメ映画『名探偵コナン 黒鉄の御影』は『バービー』よりも一日遅れて公開されたにもかかわらず、根強いファンのおかげで観客動員が容易だった。
韓国ファンが多いピクサーや俳優トム・クルーズへの忠誠心もあった。アニメ映画『マイ・エレメント』や新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』は、いずれも『バービー』よりもヒットしている。
韓国映画『密輸』(原題)などがヒットしていることもあり、『バービー』への関心が相対的に高くなかったことも関係していると言えるだろう。
ただ、そもそも韓国ではバービーとケンが北米ほどに訴求力があるわけでもない。北米ほどに馴染みがあるキャラクターではないのだ。
さらに『バービー』を巡ってはフェミニズム論争が膨らんだことも不運だった。女性監督がメガホンを取り、マーゴット・ロビーが主演の『バービー』をフェミニスト映画と規定する声が出てそれが逆効果を生んだ。
映画を見た一部の観客たちは、家父長的で男性中心の支配文化の弊害を指摘し、女性優越主義的メッセージも感じられたグレタ・ガーウィグ監督の演出に不快感を覚えたようだ。
これは女性キャラクターを前面に掲げた女性映画に対する無関心から大きく逸脱しない。
韓国社会ではフェミニスト、フェミニズムという単語がときに嫌悪の対象となりやすく、その烙印を憂慮して単純に映画を楽しみたいと思っていた女性観客さえも、『バービー』を忌避するようになったのだ。
『バービー』は当初、女性たちに勇気と希望を与えるために作られた作品ではあるが、伝えようとしている究極的な指向点は、男性と同等な立場で同伴者的関係を構築しようとする女性を視覚的に再現したことにある。
バービー役のマーゴット・ロビーも「映画『バービー』は完璧なフェミニズムDNAに基づいており、幻想的なヒューマニスト映画」と話していた。
韓国で多少変質してしまった感があるフェミニズムという言葉は、そもそも女性を崇めようというわけでもなく、単に男性に対抗しようというわけでもないことを知らなければならない。
『バービー』は女性映画に対する事由を可能にする一つの道具として、観客たちとともに有意義に、いやむしろさらに活発に議論されなければならない映画だと思うのだが…。
(記事提供=OSEN)
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