ほぼ“すっぴん”で演技の女優チョン・ヨビン、新Netflixドラマ『グリッチ』で開いた新境地【インタビュー】

2022年10月12日 話題

多少難解なストーリーは、チョン・ヨビンとナナの滑らかな演技の呼吸で補われ、視聴者の没入感を高める。

チョン・ヨビンは「作品を選択するとき、自分の心に響く作品を本能的に選ぶようだ。『グリッチ』は10部作のなかで4話までの台本を先に受け取ったが、巨大な叙事の終わりがどう帰結するかわからないものの、冒険に飛び込みたい気持ちになった」と、作品選択の背景を説明した。

「撮影中ずっと自分がどこに進むかもわからず走らなければならない不安が、未知の世界に飛び込む原動力になったようだ。おかげで何の計算もなく、ホン・ジヒョというキャラクターを演じることができた。劇中、ジヒョが見る宇宙人は、単語で説明しにくい個人の内密な歴史と経験ではないだろうか。必ずしも悲しみでなくても、誰もが抱いている、明らかにされていない突拍子もない部分だと思う」

(写真提供=Netflix)『グリッチ-青い閃光の記憶-』

チョン・ヨビンはジヒョ役のためにすっぴんに近いメイクをし、10話の間、ずっとストライプTシャツだけを着用した。彼女は「ノ・ドク監督が顔のそばかすを生かしてほしいと言って、できるだけ暗いトーンで肌のベースを合わせた。『楽園の夜』や『罪深い少女』のときも、ほとんど扮装をしなかったので負担はなかった。生のものなら、生のままの良い絵が出てくる」と話した。

ジヒョが主に着たストライプTシャツは、ノ・ドク監督とチン・ハンセ作家の大きな絵だ。チョン・ヨビンは「縞模様はジヒョの内面の『グリッチ』を表現するためのもの」とし、「驚くべきことに毎回違う縞模様のTシャツを着た」と笑った。

釜山国際映画祭で初のMC 

チョン・ヨビンは『グリッチ-青い閃光の記憶-』の公開に先立って10月5日、第47回釜山国際映画祭の開幕式のMCを務めた。

彼女は「昨年、Netflix『楽園の夜』で釜山国際映画祭のオンスクリーンセクションに招待されたときは、『地獄が呼んでいる』と『マイネーム:偽りと復讐』だけが大きなブースが作られていて寂しかったが、今年は『グリッチ』の招待に続き、開幕式の司会まで引き受けることになった」とし、「練習をたくさんしたが、ずっと緊張していた」と微笑んだ。

(写真提供=Netflix)チョン・ヨビン

「『罪深い少女』で釜山国際映画祭を訪問したときが目の前がまったく見えなかったとすれば、今は目の前の観客が笑う姿が見えるくらいというか。しかし依然として、あまりにも緊張して観客と何の会話をしたのか覚えていない」

釜山国際映画祭を盛り上げた香港映画の看板スターであるトニー・レオンと、彼の配偶者で女優のカリーナ・ラウとの夕食は、チョン・ヨビンにとって忘れられない思い出だ。

「トニー・レオン先輩の善良な瞳と笑顔が記憶に残る。私たちに“韓国映画が良い時期に入ったから、よく楽しめ”とおっしゃった。私が“先輩はどんな気持ちで演技をするのか”と尋ねると、“私はラッキーな人だ。私の周りにはいつもいい人が多くて、足りないときに助けてもらったりもした。今はヒットより利益より、この話に参加したいのか心の声に従おうと思う”と話した。私もある起点に来ている時点だが、トニー・レオン先輩の助言のおかげで、あれこれ計算せずに、どぼんと落ちる勇気を思い起こすことができた」

デビュー当初のインタビューでは、自分の演技で他者にヒーリングを与えたいという恐れのない発言をしたチョン・ヨビンは、今では自分の演技で解放感を覚えながら、自分を見つけたいと話した。

「『グリッチ』を通じて、あなたの中の宇宙人を探しても、探せなくても大丈夫だということを知った。私たちは皆、変な人間かもしれないが、大丈夫だ。グローバルな順位よりは、ただ一人の視聴者でも見てほしい。大衆の反応を通じて、自分の心が整理されることを感じる」

◇チョン・ヨビン プロフィール

1989年7月26日生まれ。他界した祖母との約束で、医師になる夢を叶えるために勉学に励むも、入試で不合格に。大きな目標が失い、沈んでいた時、アメリカ映画『いまを生きる』を見て、女優になることを決意する。映画『背徳の王宮』(2015年作)でデビューしたあと、映画『罪深き少女』(2018年)で主演を務め、持ち前の演技力を見せつけた。Netflixで配信中のドラマ『ヴィンチェンツォ』では、従来のヒロイン像を覆した歯に衣着せぬキャラクターで大きな注目を集めた。

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