カンヌ最高賞のポン・ジュノ監督が語る、クリエイターとしての姿勢とは【インタビュー】

2019年06月05日 話題 #韓国映画

ポン・ジュノ監督は相変わらずだった。

彼が第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でパルムドールを受賞した時、韓国映画界が一丸となってお祝いムードを盛り上げたのは、おそらく日頃の振る舞いも少なからず影響したはずだ。

(関連記事:カンヌ最高賞に輝くポン・ジュノ監督『パラサイト』、何が評価されたか

ポン監督は撮影現場でエキストラはもちろん、末端スタッフの名前までほとんど覚え、気遣うことで有名だ。

カンヌでは誰とでもフレンドリーに言葉を交わし、観客との交流を大事にした。映画一筋で走ってきた中、一緒に働く人たちへの礼儀を優先させてきたポン監督を支持し、応援するファンは多い。

彼の映画はいつも「人が中心」だ。特に今回の『パラサイト』は、貧富の差を赤裸々に表現しているため、ある人には不快感すら与えるだろう。ただ、ポン監督のワールドには様々な人間群像と、我々が表せられない人間の本性も描かれているため、スリルさえ感じさせる。

そんなポン監督に対し、人々が最も聞きたがる質問の一つは「裕福な家庭環境で育った彼がどうやって下流社会の深層を描くことができたのか」ではないだろうか。ポン監督は言う。

「体験や経験していないことを表現しなければならないのが、クリエイターの義務であり重荷だ。殺人を犯さないで『殺人の追憶』を撮ったように(笑)。私の父は大学の教授だったので裕福なほうだった。『パラサイト』に出てくる2つの家族で言えば、その真ん中くらい。

だからと言って資料調査だけでシナリオを書くわけではない。

いろんな記憶や経験もある。例えば私も90年代にとてつもなくお金持ちの中学男子の家庭教師をしたことがある。2階にサウナーがあって、お金持ち特有の静かな雰囲気が衝撃だった。そういう経験が映画に練りこまれている」

ポン監督との会話は作品に見劣りしないほど愉快で、繊細だ。

そのため、一緒に仕事をする俳優たちも、ポン監督と一晩中おしゃべりすることを好むという。

これまで数多くの俳優と映画を作ってきたポン監督が、最も頼りにしている俳優はやはり「ソン・ガンホ」だそうだ。

パルムドール受賞の喜びを分かち合ったソン・ガンホ(左)とポン・ジュノ(右)

「ソン・ガンホという俳優は僕にとって薬のような存在。彼を見ていると心が落ち着く。“あの人なら全て上手くいく”という安定感を与えてくれる。長編デビュー作が失敗したあと、(ソン・ガンホが出演した)『殺人の追憶』からフォーマットされた気分だった。精神的な希望を持てるように助けてくれた」

そんなソン・ガンホと4度目のタッグを組んだ最新作『パラサイト』は現在、韓国で1日100万人に及ぶ観客を動員している。

リピート客も続出しており、このままだと“観客動員数1000万人”も夢の話ではなさそうだ。

ポン監督は、『パラサイト』を通じて何を話したかったのか。

「一緒に生きることへの難しさだ。映画の90%は家の中でのシーン。これはつまり、その人のプライベートが描かれるということだ。観客は映画に出てくる家族のプライベートを観て、聞く。自分と違う境遇の人の私生活を目撃するのがこのストーリーの危険な部分だ」

その予想は的中したようだ。極端に違う二つの家族のプライベートを覗いた観客は、その衝撃をあらゆる言葉で現している。

知人から届く感想メールもさほど違わないとポン監督は語った。

「今回は、いただく感想などがとりわけ長い。まず世代を問わず“泣いた”という反応が多い。”余韻が長い”、”脳みそに擦り傷ができたみたい“といった、精神的な傷を追ったような感じもあった。“ちょっと刺激が強かったか”とも思う。ただ、カンヌ(での光輝)は私にとってすでに過去のもの。私はまた新しい執着(こだわり)を始めるのではないだろうか」

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