女優チン・ギジュが、自身初主演となった映画『殺人鬼から逃げる夜』で、“スリラークイーン”のタイトルに挑戦状を突きつけた。
韓国で去る6月30日に公開された初主演映画『殺人鬼から逃げる夜』で、チン・ギジュは聴覚障害をもつ女性キョンミを演じ、連続殺人犯のドシク(演者ウィ・ハジュン)との死闘を描いた。
2人の追いつ追われつの“追撃シーン”は、今作の名場面として知られている。
「公開されてから主演作ということに実感が湧く」というチン・ギジュは、「最初にシナリオを読んだときにキョンミに愛情が抱いたので、この作品に出演することにした。聴覚を使わずに演技をしなければならないと決まったとき、“私は大変なことをしたな”と思った」とし、「個人的に音に敏感な方なので心配したが、撮影は意外と苦労しなかった。ほかの俳優が横で大声を出しても、その声に反応して驚かなかった。今考えても不思議だ。撮影する前にマインドコントロールやイメージトレーニングをしたことが役に立ったと思う」と振り返った。
彼女にとって、今回の撮影現場は「大変なことよりも、学ぶことが多かった」という。
「聴覚障害をもつキョンミを演じながら涙が溢れる瞬間があったし、息苦しさも感じた。それに、“この役を演じていなければ手話がわからなかっただろうな”と思った」と話すチン・ギジュは、「手話は手の動きだけで完成されるものではなく、口の動きや表情すべてが合わさって表現される言語。日常生活で手話をする方に話しかけられたときは、“わからない”ではなくもう少し関心をもって見守ってもらいたい」と呼び掛けた。
映画の追撃シーンも欠かせない。チン・ギジュは「膝の調子が良くない」とし、「今も疲れたときに膝がずきずき痛むようになった。走るシーンでの負担が大きかった。本当に死に物狂いで走って、普段の自分では出せないような速度が出た。今後あんな速さで走るのは不可能だと思う。『アイドル陸上大会』(MBC)の映像も見た。走るフォームの参考にするために見た。監督が“よく走った”と言ってくださったので安心した」と明かした。
では、チン・ギジュを走らせた連続殺人犯ドシクを演じたウィ・ハジュンとの共演はどうだったのか。
2人は劇中でこそ対立する関係だったが、撮影現場ではかけがえのない“同志”だったという。チン・ギジュは「(ウィ・ハジュンは)共演しやすい俳優だ。仲間愛がある。映画の内容上、昼と夜が入れ替わっての撮影も多かったが、頼りにできる相手だった。お互いを応援し合う気持ちで演技したし、湿布もプレゼントして意気投合した」と微笑んだ。
チン・ギジュは派手さこそないものの、淡々とした生活を披露する演技でさらに自身を引き立たせている。その中心には、彼女がこれまで積んできた多くの経験があった。
中央(チュンアン)大学でコンピューター工学科と新聞放送学科を専攻したチン・ギジュは、卒業後にサムスンSDSに就職。その後、G1江原民放の放送記者を経て、2014年に第23回スーパーモデル選抜大会でオリビアローレン賞を受賞し、芸能界入りを果たした。過去のインタビューでは「もう転職はしない」と打ち明けるほど、女優業に対する愛情は深い。
チン・ギジュは『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』でのサブキャストなどを経て、『ミスティ~愛の真実~』『ここに来て抱きしめて』『初対面だけど愛してます』で主演に挑戦。なかでも『ミスティ~愛の真実~』で演じた社会部記者出身のアンカー役は、実経験が元になっていただけに好評を集めた。
また、昨年には『オー!サムグァンビラ』(原題)で芯の強い女性イ・ビッチェウンを演じ、自身の存在感をアピール。そして今回、『殺人鬼から逃げる夜』で映画初主演まで成し遂げてみせた。
だが彼女の多様なスペックをめぐっては、さまざまな意見もあったという。最近、tvNのトーク番組『You Quiz on the Block』に出演した際には、自身の人生史を慎重に解いたあと、チン・ギジュという人物そのものに関心が集まった。
「私が今まで行ってきたことに関して、知っている方々は応援してくれたが、理解に苦しむ方もいた。放送後に変わった点は、理解してくださる方、応援してくださる方が増えたという点」と話したチン・ギジュ。この話をしながら、彼女は涙を流していた。涙の意味を尋ねると、「たくさん励まされたから」と強調した。
続けて、「両親や知人たちも、私が最初から女優になっていたらもっと若いうちに売れていたというが、私は今がもっと良いと思う。女優以外の生活をしていたからこそ、その経験がどんな作品にでも役に立っていると信じている」と述べた。
女優生活も早7年目を迎えるチン・ギジュは、この先どのような女優になりたいのだろうか。
「今回、前の職場の同僚たちが『殺人鬼から逃げる夜』を見て“面白かった”と言ってくれた。“大変だったね”と応援してくれて、それが最高だった」とし、「まだ足りないところもあるが、徐々に女優になってきたと感じる。視野が広がっているような感じだ。昔は緊張して自由に動けなかったが、最近は現場でずいぶんと柔軟に動けるようになった。これからも現場での適応力と、表現力豊かに女優になりたい」と意気込みを語った。
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