動画配信サービスNetfllix(ネットフリックス)が今年、韓国コンテンツに5億ドル(約520億円)を投資するという。
Netflixが2月25日に開催したコンテンツ・ロードショー「See What's Next Korea 2021」で、Netflixアジア地域総括のキム・ミニョン氏はその発表とともに、「優秀な韓国コンテンツを世界中に知らせる」と意気込んでいた。
2015年から2020年まで、Netflixの韓国コンテンツへの投資額が7億ドル(約742億円)だったことを考慮すれば、1年間で5億ドルはかなり思い切った攻めだとも言えなくもない。
Netflixは韓国上陸直後から映画『オクジャ』『ペルソナ-仮面の下の素顔-』といった韓国オリジナル作品に投資してきたが、ここ2~3年の動きは“積極的”というよりも“攻撃的”と感じるほどだ。
例えば、2019年には韓国大手エンタメ会社CJ ENM、『愛の不時着』や『サイコだけど大丈夫』などを生み出したスタジオドラゴン、さらにはケーブル局JTBCと、3年間で合計21本以上のコンテンツを供給、もしくは制作協力するというMOUを締結した。
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『キングダム』や『Sweet Home-俺と世界の絶望-』のようなオリジナルシリーズの制作に取り組んでいるし、今年に入っては韓国ソウル近郊の坡州(パジュ)市と漣川(ヨンチョン)郡の2カ所にアジア地域では初のプロダクション施設を設立したとも発表した。
「See What's Next Korea 2021」の開会の挨拶をしたNetflix共同最高経営者(CEO)テッド・サランドス氏は、「ここ2年間、全世界は韓国で制作された作品に驚きを示している」と強調しながら、韓国発コンテンツの代表的な成功例となった『キングダム』をはじめ『#生きている』『人間レッスン』『Sweet Home-俺と世界の絶望-』『スペース・スウィーパーズ』などを一つひとつ言及していた。
日本でも大ヒットとなった『愛の不時着』に至っては、「愛らしいカップルの誕生を目撃した」とコメント。主演のヒョンビンとソン・イェジンが今年の元旦に熱愛を認めたことを意識した計らいも見せた。
こうしたNetflixの存在は、韓国のコンテンツクリエイターたちにとっては一筋の光になっているようだ。
韓国メディア『韓国経済』の取材に応じたドラマ関係者は、「過去には最も良い企画をテレビ局に持ち込んだが、今は奇抜で独特、大規模な作品なら真っ先にNetflixに提案する」と語っている。
つまり、何かと制約が厳しいテレビ局では実現が見込めない斬新な企画が、Netflixに続々と集まっているのだ。
「See What's Next Korea 2021」に出席した『キングダム』の脚本家キム・ウニも、次のように語っている。
「Netflixがなかったら『キングダム』の制作はできなかったと思う。2016年の企画当時、首が飛ぶなどの残酷なシーンは地上波では無理だったし、時代劇である上にゾンビまで登場するので制作費も心配だったが、まさかNetflixが快くOKしてくれるとは思わなかった」
キム・ウニ作家はNetflixとの仕事に大満足の様子で「干渉せず、意見もくれず、お金だけ出してくれる」と称賛していた。
“不可能を可能にしてくれる”Netflixの懐の大きさに、魅力を感じないクリエイターなどいるのだろうか。
今年はDisney+が韓国進出を決定しており、港ではApple TV+も上陸すると噂もある。強力なライバルたちがパイを奪おうと押し寄せるなか、5億ドルの投資や専用プロダクション施設を駆使したNetflixの進撃は、これまで以上に活発になりそうだ。年内に配信予定のNetflixオリジナル作品は『キングダム:アシンの物語』『静寂の海』『イカゲーム』『今、私たちの学校は…』『D.P. -脱走兵追跡官-』(原題)などだ。
「グローバルエンターテインメントのトレンドとして定着した」(サランドス氏)という韓国コンテンツの可能性は、どこまで広がるか。日本でも『愛の不時着』『梨泰院クラス』に続く、新たな話題作が誕生することを期待したい。
(文=慎 武宏)
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