その思想と行動が人類に多大な犠牲をもたらした「ナチス」や「アドルフ・ヒトラー」は、世界中でタブー視されている。
韓国芸能界も例外ではないが、関連する論争がたびたび浮上しているのが現実だ。
11月11日、歌手のMCモンが自宅にヒトラーの肖像画を飾っていることへの批判を受け、「オク・スンチョル作家の初期作品で、人間の欲望や利己心、他者の血を吸う野蛮さを表現したものだ。作品として理解してほしい」と釈明した。
彼は「私はヒトラーが嫌いだ。本当に、本当に、本当に。戦争を起こすすべての人間が嫌いだ」と強調しつつも、「芸術も理解せず、自分たちの勝手な目的を作り上げて文章を書いている」と“ヒトラー賛美”疑惑を提起した人々を非難した。
それでもMCモンへの批判は止んでいない。韓国をはじめ世界において、ナチスやヒトラーは“理解や解釈の余地すら挟ませない拒絶の対象”であるという現実が、改めて浮かび上がっている。
一方でMCモン本人の立場からすれば、「批判のための芸術作品」であり、擁護や称揚の意図は皆無であるにもかかわらず、なぜこれほどまで非難されるのかという戸惑いと理不尽さを抱えているのも想像に難くない。
実際、ファン目線では「そこまで叩く必要があるのか」「悪意はなかったはずだ」と感じられるナチス関連の炎上は、K-POPシーンで繰り返されてきた。
例えば、BTSが挙げられる。
2018年、米ユダヤ人団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」は、BTSがナチス親衛隊(SS)を連想させる帽子や旗を使用したとして抗議声明を発表。批判は瞬く間に世界へ広がった。
これを受けて所属事務所(当時Big HItエンターテイメント)は「ナチスを含むすべての全体主義、極端的な政治性向を帯びたすべての団体や組織を支持せず、これに反対する」とし、「歴史的被害を受けた方々を傷つける意図はなかった」と正式に謝罪した。
問題視された旗は、ソ・テジの楽曲『教室イデア』を象徴する演出デザインの一部であり、ナチスへの賛同とは無関係だったが、説明より謝罪が優先された。「文脈がどうであれ、見えたものがすべて」という現実がそこにあったわけだ。
また、2022年にはボーイズグループEPEXの新曲『Anthem of Teen Spirit』が「ホロコースト」を連想させると議論となった。歌詞中の「水晶の中の夜」「Crystal Night is coming」が、ナチスによるユダヤ人大迫害「クリスタル・ナハト(水晶の夜)」を連想させると批判されたのだ。
海外ファンの批判を受け、EPEXは「歌詞の中の“水晶の中の夜”は、青少年たちの現実的な生を表現するにあたり、毎晩水晶のように明るく灯された数多くの学院の窓ガラスの中で競争に燃える子供たちの姿と、『1984』に登場する“ガラス問診”を比喩して使った」と説明し、「実際の歴史的事件とはまったく関係ない」と伝えた。
それでも「議論を呼びかねない内容の使用に注意を払えなかった点について、国内外のすべての方々に心からお詫び申し上げる」と謝罪し、歌詞の一部を修正すると明かした。
さらに2021年にはGFRIENDのソウォンの写真が炎上。軍服姿のマネキンに寄り添う写真が「ナチスを想起させる」と受け取られ、世界規模の批判を呼んだ。
所属事務所は「ビハインド映像の撮影当時、現場チェックの過程で当該のマネキンの服装に問題があることを担当部署が認知していなかった」とし、「歴史的事実と社会問題に対して細心の注意を払うことができなかった点、申し訳ない」と謝罪に踏み切った。
いずれのケースも、当事者に悪意も賛同の意思もなかった。それでも「そこまで?」と感じられる批判が殺到した。ここにあるのは理不尽さではなく、すでに世界が共有している“境界線”の存在ではないだろうか。
ナチスやヒトラーの象徴は、もはや文脈で読み替えることのできる記号ではない。ホロコーストや戦争の記憶は歴史ではなく、現在進行形のトラウマとして共有され、“何を伝えたかったか”ではなく“何が見えてしまったか”が優先される領域にあると捉えるほうが、世界の受け止められ方に近いといえる。
K-POPが世界的な注目を集めている今、歴史的象徴が画面に映り込んだ瞬間、評価軸は作品の文脈ではなく世界の基準へ移ってしまう。そこで問われるのは「説明の正当性」よりも、「誤解を生まない想像力」や「線を踏み越えない配慮」なのだ。
その視点から見れば、MCモンが“批判の意図があった”と強調してもなお反発が止まない背景も、より立体的に見えてくるのではないだろうか。
(文=スポーツソウル日本版編集部)
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