韓国で“公平性”が物議を醸してきた「芸術・体育要員」の兵役特例制度について、「時代に合わない」という兵務庁長の見解が注目を集めている。
兵務庁のイ・ギシク庁長は4月2日、ソウル地方兵務庁で行われた『聯合ニュース』とのインタビュー内で、「芸術・体育要員を含む補充役(兵役特例)制度は、導入当時と比べて時代環境、国民認識、兵役資源状況などの側面で多くの変化があった」とし、制度廃止の可能性に言及した。
続けて、イ庁長は「芸術・体育要員は国民が共感できる方向で全面的に再検討し、専門研究・産業機能要員は国家競争力を育み、国家の未来の材料を創出できる政府重点育成事業を中心に支援し、公衆保健医師制度など公益分野は、疎外される方々が出ずすべての国民に寄与できる方向で検討する」と説明した。
また、「芸術・体育要員」の兵役特例については「なくなる可能性もある。まだ決まっておらず、色々な方案があり得る。どれが最適な案かという基準は、兵役義務履行の公正性と国民の目線だ」と述べた。
韓国政府は国防部や兵務庁、文化体育観光部など関係省庁によるタスクフォース(TF)を今月中に構成し、兵役特例制度の改善案を年内にまとめて発表する予定だ。
現在の兵役特例は、△オリンピックやアジア競技大会、国際コンクールなど大会で入賞した「芸術・体育要員」、△国家産業発展目的の「専門研究・産業機能要員」、△公共医療分野で服務する「公衆保健医師」などに区分される。
このうち、「専門研究・産業技能要員」と「公衆保健医師」は社会的必要性によって運営される兵役特例だが、「芸術・体育要員」は個人の成果に対する補償のレベルで行われるものであるため、兵役義務履行の公平性の側面から「今後は廃止しなければならない」という指摘が絶えず提起されてきた。
これに先立ち、K-POPの新たな歴史を書き、国家的地位を高めたBTS(防弾少年団)の軍入隊をめぐっても、兵役特例の公平性問題が浮き彫りになった。
兵役特例対象に大衆歌手が含まれない点が「逆差別だ」という主張が飛び交ったなか、当のBTSメンバーは2022年11月のJINを皮切りに7人全員が入隊し、話題を集めた。
イ庁長は「芸術・体育要員は完全に(個人の成果に対する)補償レベル」とし、「過去にオリンピックやアジア大会に出場し、金メダルを取ることが国家の地位を高めることだとされた際に作られた制度だ。それが今でも必要かということだ。今はエリート体育ではなく社会体育だ」と話した。
そして、BTSメンバーたちの現役服務が、兵役義務履行の公平性の側面で「非常にポジティブなシグナルをもたらした」と評価した。
イ庁長は、BTSメンバーが軍事警察団・特殊任務隊(SDT)や新兵訓練所助教などに選抜され、熱心に軍服務をする姿を国民が見守っている点、BTSの楽曲がビルボードチャートに上がっている点を強調し、「BTSメンバーが皆除隊し、再び完全体となれば、人気はさらに上がるだろう」と見通した。
また、兵役資源不足に対応して「女性徴兵制」を導入する案については「検討していない」と断言。「女性徴兵制の導入はまだ時期尚早であり、ややもすれば韓国社会がまた別の(男女)葛藤に陥る恐れがあるため、慎重に判断しなければならない事案だ」と明らかにした。
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