韓国サッカー史上最悪の拙戦と言っても過言ではない。
開催国カタールを避けたことに何の意味もなかった。戦略の失敗はもちろん、「対応不足」「一部選手の安易な姿勢」「退場の悪材料」などが重なり、最後は凄惨に崩壊した。
ファン・ソンホン監督率いるU-23韓国代表は4月26日(日本時間)、カタール・ドーハのアブドゥッラー・ビン・ハリーファ・スタジアムで行われたU-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選)準々決勝で、シン・テヨン監督率いるインドネシアと対戦。
延長120分間を2-2で終え、PK戦で10-11と敗れベスト8敗退となった。
同大会はパリ五輪男子サッカーのアジア最終予選を兼ねており、上位3カ国が本大会にストレートイン。4位国はアフリカのギニアと大陸間プレーオフを行う。
韓国サッカーは1988年ソウル五輪から2021年東京五輪まで、世界初となる9大会連続五輪出場に成功してきた。
しかし今回の「ドーハの悲劇」によって、最後に予選敗退した1984年ロサンゼルス五輪以来、40年ぶりに本大会出場に失敗した。
韓国はライバルの日本含むグループBで3戦全勝で首位通過し、決勝トーナメントに進んだ。
日本との最終節(1-0勝)で敗れた場合はグループ2位となり、A組1位の開催国カタールとの対戦が避けられなかった。
ホームアドバンテージを持つカタールを回避し、A組2位のインドネシアと対戦することが比較的容易だったのも事実だ。
しかし、韓国の世代別やA代表でも指揮を執ったシン・テヨン監督のインドネシアは、圧巻のパフォーマンスで韓国を退けた。
ファン・ソンホン監督は、グループステージ3得点を挙げたFWイ・ヨンジュン(20、水原FC)をベンチスタートとし、前線は左からMFオム・チソン(21、光州FC)、MFカン・ソンジン(21、FCソウル)、MFホン・シフ(23、仁川ユナイテッド)を並べる3トップを敷いた。
また、日本戦同様に本職ボランチのMFイ・ガンヒ(22、慶南FC)を最終ライン中央に据える3バック戦術を採用した。
しかし、まったくの無意味だった。
インドネシアはオランダ生まれの帰化選手であるFWラファエル・ストライク(21、デン・ハーグ)を中心に、前線から強力なプレスで韓国の攻撃をコントロールした。また、持ち味のスピードある攻撃で韓国のゴールを襲った。
前半7分にはイ・ガンヒがミドルシュートでゴールネットを揺らしたが、VARの結果、味方選手がオフサイドと判定され得点が取り消された。
そして直後の7分後、韓国は思わぬ失点を喫する。ストライクにペナルティエリア手前から絶妙なコントロールシュートを打たれ、痛恨の先制を許してしまう。
衝撃的なのは、韓国が失点後も効率的にインドネシアを攻略できなかったことだ。逆に、MFマルセリーノ・フェルディナン(19、デインズ)などインドネシア攻撃陣の猛攻に遭い、追加失点のピンチに陥った。
しかし、この局面でファン・ソンホン監督はこれといった変化を与えなかった。
前半45分には“幸運のオウンゴール”で運よく同点に追い付いたが、3分後に2点目のゴールを奪われた。
最終ラインから放られたロングボールがバウンドして自陣ペナルティエリア内まで入ると、韓国の最終ラインと並走したストライクが上手く落下地点を読んでボールを流し込んだ。
このとき、ストライクを挟んでいたイ・ガンヒとDFチョ・ヒョンテク(22、金泉尚武)は数的優位にもかかわらず、簡単にゴールを許してしまった。
韓国は後半序盤にも緩い守備でDFプラタマ・アルハン(23、水原FC)に決定的なシュートを許すなど、安易な対応でピンチを招いた。
加えて、ファン・ソンホン監督が“勝負の一手”として後半開始から投入したイ・ヨンジュンが、後半24分の前線プレス時にDFジャスティン・ハブナー(20、セレッソ大阪)の足首を踏む危険なプレーによって、当初はイエローもVARでレッドカードに変更となり、一発退場となった。
冷静でなければならない勝負どころで、話にならない退場劇だった。
パリ五輪出場の雲行きが怪しくなると、ベンチも慌ただしくなった。MFホン・ユンサン(22、浦項スティーラーズ)、DFチャン・シヨン(22、蔚山HD)を相次いで投入して総攻勢を繰り広げたが、数的劣勢の影響で思うようなチャンスを得られなかった。
そんななか、イ・ヨンジュンとともに後半開始から出場していたMFチョン・サンビン(22、ミネソタ・ユナイテッド)が後半38分、カウンターから完璧なソロプレーで同点弾を決め、崖っぷちから生き返った。
しかし、今度はベンチが問題だった。後半アディショナルタイム、ファン・ソンホン監督が抗議によって主審からレッドカードを提示され、やはり退場となった。
韓国は最も信頼するエースと指揮官がピッチを去った状態で、延長戦を戦わなければならなかった。
コーチ陣は10人で迎えた延長戦途中にMFキム・ミヌ(22、デュッセルドルフⅡ)を投入し、5バックを敷いた。事実上、PK戦に備えた戦術だった。
ただ、インドネシアも延長戦となると疲労の色が見られた。個人戦術で見れば韓国の攻撃陣にも優れた選手がいただけに、1~2回は勝負をする価値はあったものの、消極的な対応が続いた。
結局、PK戦では両チームが一巡して12番目のキッカーまでもつれ、最後は10-11で敗れることとなった。
元々、U-23韓国代表はファン・ソンホン監督が3月にA代表の暫定監督を兼任したことで、大会直前の重要な時期に指揮官不在という事態に。さらには主力となる欧州組の招集にも失敗するなど、懸念要素が多かった。
それでも、グループステージでは3戦全勝と結果を残し、多少の希望は見出した。しかし、懸念していた問題が準々決勝で克明に表れた。
劣勢を覆すようなベンチワークが見られなかったばかりか、そもそもピッチ上に“ゲームチェンジャー”となる選手が極めて少なかった。まさに屈辱的な敗北だった。
一方、インドネシアは“シン・テヨン・マジック”によって準決勝進出に成功。1956年メルボルン五輪以来、68年ぶりの本大会出場にもう一歩近づいた。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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