日本が絶対に警戒しなければならない韓国のストライカーだ。
高身長でありながら柔軟かつスピードのある身のこなし、そこに頼もしい決定力もある。
U-23韓国代表ストライカーの“20歳兵長”ことFWイ・ヨンジュン(20、金泉尚武)が、いつの間にか頼もしいターゲットマンに生まれ変わった。
イ・ヨンジュンは4月19日(日本時間)に行われたU-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選)グループB第2節の中国戦で2ゴールを決め、韓国を2-0の完勝に導いた。
UAEとの初戦で後半終了間際に打点の高いヘディングシュートで決勝点を決めた彼は、中国戦でも“鶏群一鶴”の存在感を示した。
MFヤン・ヒョンジュン(21、セルティック)やMFペ・ジュノ(20、ストーク)など欧州組の主力攻撃陣が急遽合流不可能となった韓国は、中国相手に何度もピンチを迎えるなど苦戦を強いられた。
しかし、イ・ヨンジュンが2度の枠内シュートをいずれも得点につなげ、守護神の役割を果たした。
特に前半34分の先制点が圧巻だった。
当時、右サイドでMFカン・サンユン(19、水原FC)のスルーパスから素早くDFラインの裏に抜け出したイ・ヨンジュンは、やや角度のない難しい場所にもかかわらず、鋭い右足シュートをゴール左隅に突き刺した。
また、後半24分にはDFイ・テソク(21、FCソウル)のクロスをペナルティエリア内で受けると、相手DFに囲まれながらも上手くボールをコントロールし、最後はGKの逆を突く左足シュートを決めた。
イ・ヨンジュンは大会3ゴールで得点ランキング首位タイに躍り出ている。
身長192cmで2003年生まれのイ・ヨンジュンは、高さを活かしたヘディングはもちろん、左右両足を巧みに使いこなし、スピードや技術も兼ね備えた長身ストライカーだ。
高校時代からそのポテンシャルを認められ、2021年シーズンには水原(スウォン)FCと準プロ契約を締結。そして、同年3月に17歳9カ月22日でKリーグ1(1部)デビューし、史上最年少出場記録を更新した。
ただ、水原FCではKリーグの独自ルール「U-22選手義務出場規定」に伴いプレーするチャンスを得たが、実際の出場時間はそう多くなかった。
そして、兵役のため軍隊チームの金泉尚武(キムチョン・サンム)に2023年シーズンから入隊。兵役中の階級は「兵長」で、除隊は来る7月を予定している。
イ・ヨンジュンは世代別代表でも目立った選手ではなかった。高さのある前線の選手として、「3~4番手」のオプションとも呼ばれた。いわゆる“穴埋め”の立ち位置だ。
現役時代にベガルタ仙台でプレーし、現在は水原FCを率いるキム・ウンジュン監督がU-20韓国代表を率いて昨年のU-20W杯に出場した際も、当初は絶対的な主力でもなかった。
ただ、同ポジションのライバルであるFWソン・ジニョン(20、全北現代モータース)が負傷で大会メンバーを外れ、別のFWパク・スンホ(20、仁川ユナイテッド)も大会期間に負傷離脱。これにより最も多く出場機会を得ると、グループ初戦のフランス戦と決勝トーナメント1回戦のエクアドル戦で得点をマークした。
ファン・ソンホン監督率いるU-23韓国代表でも同じだ。
今回のU-23アジアカップ直前、3月に最終テストとして招待出場したU-23西アジア選手権でも、イ・ヨンジュンは当初のメンバーに含まれていなかった。
しかし、MFホン・ユンサン(22、浦項スティーラーズ)が負傷辞退したことで代替選手として招集。大会ではオーストラリアとの決勝で得点し、韓国の優勝に貢献するなど、自身の価値を遺憾なく見せつけた。
その勢いに乗ってU-23アジアカップのメンバーにも選ばれたイ・ヨンジュンは、今や“代替不可能”の活躍を披露している。
イ・ヨンジュンの台頭は韓国サッカーにとっても嬉しいことだ。
2010年代に韓国代表の主力ストライカーとして活躍した198cmの長身FWキム・シンウク(36、傑志)以降、連係やポストプレー、フィニッシュ能力まですべて兼ね備えた大型FWは出てきていない。
欧州組の招集失敗に悩まされたファン・ソンホン監督も、イ・ヨンジュンの活躍で攻撃陣の懸念を大きく減らしている。
イ・ヨンジュンは4月22日22時(日本時間)、カタール・ドーハのジャシム・ビン・ハマド・スタジアムでキックオフする日本とのグループステージ最終節への出場を待っている。
ともに2勝を収め決勝トーナメント進出を確定したなか、首位通過を決める重要な一戦だ。宿命のライバル対決でもイ・ヨンジュンの得点が生まれるのか、ストライカーの活躍に期待が集まっている。
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