しかしイ・ガンインがベストメンバーに入らないのは当然だ。ワールドカップ本大会開幕を2カ月後に控えた現時点で、すでに組まれた先発ラインナップに変化を与えるのは容易ではないため、ベント監督の選択に問題があるとは言えない。
それらを踏まえ、議論はイ・ガンインを“途中からでも投入しなかった”という点から始まる。現韓国代表の交代カードが豊富であるならば、あるいは確実なカードがあるのならば、周囲から雑音が出る理由はない。
カメルーン戦を見ると、イ・ガンインの欠場が、なぜ問題なのか見て取れる。ベント監督は後半、クォン・チャンフン(28、金泉尚武)、ナ・サンホ(26、FCソウル)、ファン・ウィジョ(30、オリンピアコス)らを投入したのだが、まともな攻撃を一度も仕掛けることができないまま試合を終えており、ベストメンバーが出た前半戦とは180度異なる試合展開を見せていた。
ソン・フンミンのゴールで無失点勝利したものの、ベント監督が植え付けてきた流麗なビルドアップと攻撃展開も後半には皆無に。それほど効果的な交代選手がいなかったという意味だ。
これはカメルーン戦だけの問題ではない。韓国代表はベストメンバーとベンチメンバー間の差が大きい。本大会でも、負傷者が発生したり、試合中に変化をもたらしたい時などに活用可能な、明確な“ジョーカー”が思い当たらないというのが現状だ。
それならば今回の2連戦では、イ・ガンインのジョーカーとしての可能性を確認する必要があったのではないだろうか。
イ・ガンインは世界トップクラスの選手が集結しているスペイン・ラ・リーガで、悪くない活躍を見せている。今シーズン序盤だけにフォーカスすれば、リーグでトップの活躍と言っても過言ではない。代表にない技術とクリエイティビティ、非凡なパススキルを持つ選手を、あえて切り捨てる理由があるだろうか。
キャプテンのソン・フンミン(30、トッテナム)はカメルーン戦後、「代表はガンインのためのチームではない。私でもファンでもなく、監督だけが決められる問題だ。何らかの理由があったと思う。試合後、私はガンインに(関心が)集中しすぎるのではないかと思った。ガンインがそのような状況に置かれているのを見ると、当然、頑張らなければならないと思うかもしれない」とし、代表でイ・ガンインへの視線が集中しすぎてはいけないと慎重に話した。
だがソン・フンミンの言葉は今回の議論の本質ではない。真の核心は、ベント監督が本大会で通じうるカードを、まともに確認もせずに諦めたということだ。
今回の2連戦を通じて、イ・ガンインが交代で入ってチームに役立つか、あるいはマイナスなのかを確かめることができたが、ベント監督は試みさえもしなかった。
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