現在、韓国プロ野球は今シーズンのクライマックスを迎えている。今年の韓国シリーズではスーパープレイなどが多数見られ、プロ野球が大衆コンテンツへと発展する可能性を見せている。
華麗なキャッチシーンをどのように編集するかによって、野球をよく知らない新規ファンを流入できるツールとして活用できる。SNSを通じて、10~15秒の短い動画がMZ世代に及ぼす波及力は想像以上だ。
しかし残念ながら、韓国プロ野球ではレギュラーシーズンだけでなく、ポストシーズンでもこのような新たな試みは見られていない。
日本プロ野球などでは、チャットルームを通じて数多くの名場面を作り出した。中継放送会社、マスコミなどが生み出したSNS用のチャットルームはあっという間に世界中に広がり、野球ファンを含む大衆の手によって多様な形態で再生されている。
一部ではスポーツを過度にコンテンツ化すべきではないという指摘もあるが、ファン層の拡大という側面から見ると施行すべき文化だと言える。ビジネスの観点でも、“サービス産業”であるプロスポーツはファンの目と耳を刺激し、楽しさを与えなければならない義務があるのではないだろうか。
韓国野球委員会(KBO)は2019年、ニューメディア中継権をNAVER、カカオの韓国2大ポータルとコンソーシアムを結んだ移動通信3社(KT、LGU+、SKブロードバンド)に与えた。この契約は、5年総額1100億ウォン(約110億円)で史上最大規模だった。
この中継権料で、年平均100億ウォン(約10億円)超の金額を受け取ることとなった韓国プロ野球10球団の立場としては、毎年巨額の追加収益が生まれるので契約しない理由がない。
KBOとマーケティング会社KBOPは、YouTubeを含むSNSプラットフォームを活用してこそ、新規ファン流入が可能だという意見を継続的に提起していたが、実行委員会(GM会議)、理事会(社長会議)の決定を防ぐ力は無かった。
年22億ウォン(約2億2000万円)のニューメディア中継権収益を得るために、話題性などで得られるファンの関心を、みすみす逃した格好だ。
また球界経営陣については、今年起こったシーズン中断に関する疑惑も出ている。去る7月に行われた緊急理事会議事録を見ると、チョン・ジテクKBO総裁を含む社長たちの大多数は、野球発展に大きな関心がないことを読み取ることができる。
とある首都圏の球団Aの代表は、「パートナー社との契約内容が144試合を担保にしているため、試合数だけ担保されればリーグ中断でもかまわない」としている。
取締役会の流れが144試合体制の維持に向かうと、チョン・ジテク総裁は「では、144試合の進行に焦点を当て、NCダイノスと斗山ベアーズが2軍を動員しても競技をしなければならないという案件は、4(賛成)対6(反対)の多数決で否決されたことで結論を下す」とまとめ、中断という判断を下した。
ここで言及されているNCダイノスと斗山ベアーズの2球団は、今夏に新型コロナの防疫違反で出場停止選手が多発したチームだ。また斗山は、チョン・ジテク総裁が顧問契約を結んでいる斗山グループを親会社に持つ球団のため、“ひいき”したのではないかという疑惑もある。
なお、防疫規則違反に対する試태の深刻性や、信頼を失ったファンに対する謝罪などは見当たらなかった。
野球人気がどうであれ、球団収益の担保と、チーム成績にも損失を与えてはならないという一念で野球団を運営されているのが韓国プロ野球の現実だ。
一部のプロ野球ファンは総裁の辞任を促すため、トラックを用いてファンの権利を取り戻すためのデモ中だという。
KBOと10人の理事は、プロ野球の根幹であるファンの叫びに耳を傾けなければならない。ファンは公正性と透明性を望んでいる。
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