今季のKリーグは名門が復活の兆しを見せており、“独走”や、“絶対的1強”といった表現が使いにくい。
ここ数年間、Kリーグを代表する名門のFCソウルと水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスは、長い歴史の中で培われてきた“誇り”を傷つけられていた。
FCソウルは2016年のリーグ優勝以降、2017年は5位、2018年は11位へと転落し、2部への降格危機まで経験してきた。2019年は3位でフィニッシュしたが、昨シーズン再びファイナルB(12チーム中下位6チーム)の9位にとどまった。
一方、水原三星は2015年に準優勝したあと、2016年には7位、2017年には3位、2018年には6位と不安定な時期を過ごしてきた。そして直近2シーズン(2019年、2020年)は8位でシーズンを終えており、強豪と呼ぶに値しない成績だった。
しかし今年は状況が一変。FCソウルは序盤6試合を4勝2敗で勝ち点12を記録し、現在リーグ2位に位置付けている。首位の全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースの勝ち点14を僅差で追っている格好だ。
水原三星も悪くないペースでリーグ序盤を過ごしている。3月21日に行われたスーパーマッチ(FCソウルとのダービー戦)では逆転負けしたものの、現在3勝1敗2分けの勝ち点11。昨シーズンのアジアチャンピオンズリーグ(ACL)王者である蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)FCや、城南(ソンナム)FCと同数だ。得失点差で水原三星は蔚山現代に抜かれているため4位となっている。
昨シーズン昇格組だった光州FCをファイナルA(12チーム中上位6チーム)の6位に導き、今季からFCソウルを率いることとなったパク・ジンソプ監督のサッカーが早くも浸透している。
経験豊富なキ・ソンヨン(32)が騒動の渦中にいながらもチームの大黒柱として八面六臂の活躍を繰り広げ、元FC東京のナ・サンホ(24)、チョ・ヨンウク(22)、アレキサンダー・パロチェビッチ(27)といったアタッカーも好調だ。
守備に若干の不安が残るが、オスマル・イバニェス(32)の守備力をベースに6試合5失点を記録しており、全体的に安定感を取り戻したと言える。
【関連】性的暴行疑惑のキ・ソンヨンのメンタルが「極めて異例」言われているワケ
水原三星は昨年見せたACLでの躍進をベースに、シーズン序盤から確実な組織力を誇示している。
特に、6試合3失点で1試合平均0.5失点の強固な守備が目立つ。元Jリーガーで今季からキャプテンを務めるキム・ミヌ(31)を筆頭に、コ・スンボム(27)、ハン・ソクジョン(29)らが構える中盤がストロングポイントだ。
中堅だけではなく、22歳以下の若手も続々と台頭。既に主力選手となり、東京五輪を見据えるU-23韓国代表にも召集されたキム・テファン(21)に続き、チョン・サンビン(19)というライジングスターの登場も上昇ムードの原動力となっている。
FCソウル、水原三星が復活の兆しを見せるなか、最も有力な優勝候補とされた全北現代と蔚山現代は、厳しい序盤を過ごしている。
昨シーズン王者の全北現代は、まだかろうじて無敗を続けているが、パッとしないゲームが続いている。これまで消化した6試合で前半にゴールを決めた試合が1試合のみで、これまでの圧倒的だった強さは鳴りを潜めている。
機先を制せずとも地力の強さで結局は勝利を収めるのだが、キム・サンシク監督が着任して日が浅いだけに、戦力補強はマストだ。
蔚山現代の状況もあまり変わらない。開幕戦で大勝を挙げる3連勝で好調な滑り出しを見せたものの、それ以降は浦項(ポハン)スティーラーズ、済州(チェジュ)ユナイテッドと引き分け、3月21日には大邱(テグ)FCのシーズン初勝利の生贄となってしまった。
蔚山現代はA代表に多くの選手を送っており、中断期間明けの懸念が上がっていた時点での敗北だったため、単なる1敗よりも衝撃ははるかに大きかった。
このように、FCソウル、水原三星といった名門が復活の兆しを見せる反面、全北現代、蔚山現代という親会社が同じ強豪チームが不安定な姿を見せている。
今季のKリーグは例年と比較しても興味深い競争が予想されているが、リーグ全体のレベルアップという意味では歓迎に値するだろう。
前へ
次へ