かつての“石仏”が見せたほほ笑み。元阪神タイガースのオ・スンファンは何が変わったのか

“喜怒哀楽”を常に同じ表情で表し、“石仏”と呼ばれた元阪神タイガースのオ・スンファン(37)がマウンドに帰ってきた。

【注目】オ・スンファン、通算400セーブの大記録に向けたシナリオとは

2013年9月27日のロッテ・ジャイアンツ戦を最後にしばらく別れを告げたあと、2447日ぶりにサムスン・ライオンズのユニホームを着てホーム復帰登板を行った。

先頭打者に二塁打を打たれるなど失点のピンチもあったが、彼らしい危機管理能力を発揮し、対戦相手のキウム・ヒーローズに得点を与えることなく成功的な復帰戦を終えた。

キウム戦でのオ・スンファン

サムスンの新球場である大邱(テグ)のサムスン・ライオンズ・パークは初めてだ。彼は「(以前の本拠地である)市民球場よりも良いのではないか。投球環境がとても良いと思う。今は新型コロナウイルス感染症によって無観客で試合を行っているが、素晴らしい球場で観客と呼吸を合わせたい」と話した。そして、軽く笑顔を見せた。

“石仏”と呼ばれた男は後輩思いのベテランに

流水は硬い岩をも変形させる。7年ぶりに青いユニホームを身にまとったオ・スンファンは、多彩な表情を見せた。

仲間たちとトレーニングするときは満面の笑みを浮かべ、親切にグリップの説明をしていた。「一緒にキャッチボールをする後輩たちが、私の投げる球種をよく聞く。練習のたびにキャッチボールの相手を変えているが、気になる点を色んな投手に先に聞くこともある」と話す。

どうしても知名度や経歴に気圧され近寄れない後輩のために、明るい笑顔で自ら歩み寄る姿勢を見せている。

チームメイトとハイタッチを交わすオ・スンファン(21番)

ソフトなイメージに変身した彼は、「明らかなのは、海外進出前よりもブレーキングボールを駆使する比率が増えるということだ」と意味深長な宣戦布告をした。

回転が最後までかかり続けることから通称“石直球”というトレードマークもあったが、フォーシームやファストボールと正反対にあるカーブも駆使するようになったという意味だ。

ほかにもスプリットなど、海外でも生き残るため球種を多角化したことが、レパートリーの拡張につながった。

サムスン率いるホ・サムヨン監督さえ、「球種が多様になって驚いた」と目を丸くした。ホ監督はオ・スンファンの新人時代に戦力分析チーム員として携わっていたため、だれよりも彼の強力な球威を知っているのだ。

ホ監督は「(オ・スンファンの復帰は)監督の私でさえもわくわくさせる。早く素晴らしい姿を見せてほしい。選手全体にもシナジー効果をもたらすと期待している」とし、「ランニングやキャッチボールだけを見ても、コンディションがとても良い状態にあることがわかる。フューチャーズリーグでは検証できなかったが、信じて試合に出させるつもりだ」と変わらぬ信頼を示した。

オ・スンファンの合流で、サムスンは2020シーズン版“守る野球”をできるようになった。

先発陣が5~6回まで持ちこたえ、打線が1~2点リードさえすれば守れるという確信が生まれるからだ。

チームにとっての“王様”の存在感は想像以上のものだ。ホ監督も「オ・スンファンは海千山千の経験豊富な選手だ。自分だけの経験とノウハウがあるので、自らコンディション管理を上手くやる」と短い言葉で表した。

「後輩たちを信じてついていく」

周囲からの期待を知っているからこそ、本人もさらに徹底的に準備した。

試合前、多くの取材陣の前に立ったオ・スンファンの表情は少し上気して見えた。緊張とときめきが共存した表情。「シーズン途中に復帰することになった。しっかりと準備してきただけに、良い姿を見せられるよう努力する」と復帰の所感を表した。

海外進出までの間に韓国プロ野球打者のレベルを実感したオ・スンファンは、「打者のパワーはメジャーリーガーにも劣らない。パワーが落ちる能力はミートに優れており、相手にするのが難しい」とコメント。

そして、「(捕手の)カン・ミンホや戦力分析チームとコミュニケーションを取っている。私の考えも重要だが、捕手はこれまで多くの打者を相手にしてきたのだから、カン・ミンホのリードについていこうと思う。信じて任せる」と韓国プロ野球“再征服”の道筋を明かした。

オ・スンファンは日米間を経て通算399セーブを記録している。400セーブの偉業は、慣れ親しんだサムスンで達成することになった。

当の本人は「(400セーブは)あまり考えていない。今はチームが前に進まなければならない時期だ。私も記録よりも勝利に集中する方。チームの勝利が第一だ。むしろ400セーブと関連した質問を多く受けるので、早く達成したい」と“チームファースト”を強調した。

マウンド上だけでなく、選手団全体のリーダーが帰って来た。

“王の帰還”と呼ぶこともできるが、オ・スンファンは“後輩たちを信じてついていく”と強調している。

“石仏”のほほえみが、眠っていた獅子軍団を覚ますことができるだろうか。

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