韓国プロ野球で導入された“ロボット審判”こと自動ボールストライク判定システム(ABS)に、現場から疑いの声が挙がっている。
まだ現地でも見慣れない。打者は虚しいため息をつき、捕球した捕手はぎこちない笑みを浮かべる。
ボールカウント3ボール0ストライクで特に高かったストライクの割合が減った。同様に、ボールカウント0ボール2ストライクで高かったボールの割合も減少した。
全員が同じように、四角いストライクゾーンの中で投打を争う。ついに公正かつ同一のストライクゾーンが形成されたわけだ。
問題は「一貫性」だ。
“試合中の一貫性”については問題ない。ただ、“球場ごとの一貫性”については疑問符がつく。
特に現場では、「蚕室(チャムシル)球場のABSは他球場より(ストライクゾーンの)左右が広い」という話が出回っている。
そのため、蚕室球場のマウンドに上がる投手は外角への配球を増やす。打者が抜けたと思ったボールがストライク判定を受けると、試合の流れは大きく揺れ動く。
去る4月7日、同球場で行われたLGツインズ対KTウィズの試合がまさにそうだった。
KTが7-12の5点ビハインドで迎えた8回表、得点すれば追撃の流れが生まれる局面で勝敗を左右するストライクが出た。
8回表無死一、二塁のピンチで登板したLGのキム・ユヨン(29)がKTの打者チョン·ソンホ(26)相手に3球目に投じた外角低めのストレートが、ストライクと判定されたのだ。
注目すべき部分は、同場面で中継画面に映し出されたABSのストライクゾーンだ。
画面上のストライクゾーンを見ると、キム・ユヨンの投球は四隅の右下の角にギリギリかかっているか、いないかという位置だった。
ただ、画面に表示されたストライクゾーンはホームプレートと左右の幅が同じだった。これにはファンも混乱の声を挙げた。
韓国野球委員会(KBO)は、ABSのストライクゾーンはホームプレート左右両側から2cm伸ばして適用すると発表した。しかし、同試合の中継画面ではそれが省略されたものと見られる。
実際、ダグアウトに設置されたタブレットでは違っていた。タブレットに表示されたストライクゾーンは、ホームプレートの両側から2㎝増やした範囲が適用された。
つまり、選手やコーチ陣が見るストライクゾーンと、放送を通じてファンが見るストライクゾーンとで、表示された範囲が違っていたというわけだ。これにはABSの判定に対する疑問が大きくなるざるを得ない。
KBO関係者は「中継画面に表示されるABSのストライクゾーンは、実際に認識されるゾーンと同じなのか」という質問に、「中継画面に表示されるABSのストライクゾーンは、ABSのデータをそのまま表示しているわけではない。視覚的な便宜のためのシミュレーション画面だ」と回答。
「左右、上下ともに実際のゾーンとは異なる。実際のストライクゾーンは打者の身長差に応じて適用されるが、中継画面のゾーンでは身長差が具現できない」と明らかにした。
であれば、疑問を解決させる方法は簡単だ。仮に判定が疑わしいボール、あるいはストライクが出た場合、ABSによるシミュレーション画面を見せれば良い。
MLBではABSを実際の判定に利用してはいないが、シミュレーション用途で使用している。加えて、『ESPN』の中継ではストライクゾーンを3次元の柱として具現し、特定のボール・ストライクの判定をシミュレーションする。
3次元によるシミュレーション画面を表示することで、2次元よりも説得力を強くする。
球団がABSをめぐって疑問を抱く部分もここにある。
各球団が自主的に収集するトラッキングデータには、ボールの判定領域もあるが、球団のトラッキングデータとABSが異なる結果で測定されるケースが多い。
特定の球場ではボールの判定が一致していても、他球場では差が大きい。例え左右2cmを拡大して見てもそうだという。
とある首都圏球団の監督は、「ABSが球場ごとに違うのは確かだ。感覚としては、オープン戦とからもまた変わったような気もする」と疑問符を投げかけた。
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