前半14分、デンマーク代表MFイェスパー・リンドストロム(22)が敵陣でボールを奪うと、ペナルティエリア内右から放ったクロスはトッテナムのフランス代表GKウーゴ・ロリス(35)に阻まれるが、こぼれ球をドイツ人MFセバスティアン・ローデ(32)が拾い、最後はパスを受けた鎌田が先制ゴールを決めた。これが鎌田にとって自身初となるCLでの得点となった。
ただ、鎌田と日本の笑顔は長続きしなかった。そうさせたのは韓国のソン・フンミンだ。
ソン・フンミンは失点から約5分後の同19分、イングランド代表FWハリー・ケイン(29)のスルーパスを受け、爆発的なスピードで相手DFラインの背後に抜け出すと、最後はGKとの1対1を冷静に制し、右足でゴールネットを揺らした。
昨季プレミアリーグ得点王の活躍はこれにとどまらなかった。同28分にケインのPK成功で逆転した後、ソン・フンミンは同36分に再びゴールを決めた。
右サイドからデンマーク代表MFピエール・エミール・ホイビュルク(27)が上げたクロスから、正確ながらも強力な左足ボレーシュートを放ち、自身2点目に成功したのだ。相手GKも手を出せない完璧なゴールだった。
以降もソン・フンミンは次元の違うプレーを披露し続けた。
後半40分にブラジル代表FWルーカス・モウラ(30)と交替するまで、放ったシュート5本をすべて枠内に飛ばし、被ファウル数も4回を記録した。相手DFトゥタ(23)はソン・フンミンを止めきれず、2連続でイエローカードをもらい退場となった。
ソン・フンミンはUEFA選定のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。『WhoScored.com』はソン・フンミンに両チーム合わせて最高の評価点9.0を付与。鎌田は7.0、長谷部は5.6と、文字通り「越えられない壁」の差があった。
もっとも、これらは予想外の結果ではなかった。
移籍専門サイト『トランスファーマルクト』が評価するソン・フンミンの市場価値は6750万ポンド(日本円=約110億円)に達する。
これは全世界のサッカー選手のなかで27位に当たる数値であり、アジアでは圧倒的1位だ。日本ではDF冨安健洋(23)と鎌田が1980万ポンド(約32億円)で1位タイと、ソン・フンミンの3分の1にも満たない。
ソン・フンミンはこの日の活躍を通じて、なぜ自分がアジア最強のストライカーであるかをハッキリと証明してみせた。