「アン・サンを誇りに思う…韓国出身だからといって差別はない」
韓国出身で日本へと帰化したアーチェリー女子日本代表の早川漣は、こう言って笑った。
早川漣は7月30日、東京の夢の島公園アーチェリー場で行われた2020東京五輪アーチェリー女子個人3回戦で、3冠に挑む韓国代表アン・サンとベスト8を賭けて対決。接戦の末、セットポイント4-6でアン・サンに軍配が上がった。
全羅北道・全州市(チョルラブクト・チョンジュシ)生まれの早川漣は、かつて韓国では“オム・ヘリョン”という名で、実業団の現代モービスで活躍していた。
彼女の実姉・早川浪(帰化前の韓国名:オム・ヘラン)もまた、アーチェリー選手だった。日夜、厳しい生存競争が行われている韓国で活動してきた2人は、日本への帰化を選択することとなった。
先に帰化した姉の浪は、日本代表として出場した2008北京五輪の個人戦で6位を記録。その後、2009年に帰化した妹の漣も日本代表に抜擢された。
早川漣は日本代表として、2012ロンドン五輪と2014仁川(インチョン)アジア大会団体戦で銅メダル獲得。ロンドン大会での銅メダルは、日本のアーチェリー史上初のメダルとなった。
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早川漣は団体戦直後にもアン・サンについて言及していた。「数年前から(日本のアーチェリー界が)光州(クァンジュ)と交流をしている」とし、「アン・サン選手は、高校生の時から素晴らしいと思っていた。矢を放つ姿を見ると拍手が出るほど」と絶賛した。
そして2020東京大会、2人は偶然にもベスト16で相まみえることとなった。早川漣も勝負どころで見事な矢を放っていたが、第2セットで“オール10”を記録したアン・サンの底力に惜しくも屈する結果に。
試合直後、早川漣は「アン・サンと対決できて光栄だった。こんなに立派な選手と、いつ戦えるのか」とし、「日本に来ているが、韓国の選手がのびのびとプレーできていることが嬉しい」と話していた。
そして「練習場で見たアン・サンと、五輪本選で見たアン・サンを比較してほしい」という言葉に対して、「いつもシックで、ミスしても表情に変化がない」と笑いながら、「そんな彼女が弓を引いたり、ご飯を食べたり、アーチェリー場を離れると妹のような顔になる」と伝えた。
同日の悔過で、今大会惜しくも“ノーメダル”だった早川漣は、「日本でのオリンピックで結果を出したかった。ただ練習の時、我々3人(女子代表)は皆良くなかった。今回の成績が一番良かった」と悔しがった。
個人戦で韓国のチャン・ミンヒを下した中村美樹については、「率直に言えば、ミンヒが誤って撃ったのではないか」とし、「それでも運も実力のうちだ。オリンピックは予想しがたい」と語った。
早川漣は、「昨日から日韓戦の話が出て気持ちが揺れていた。それでも最近はうまく克服している。韓国選手との直接対決の負担は大きく減った」と話した。
韓国出身という先入観で難しい点を尋ねると、「姉は最初大変だったようだ。私はむしろ“(帰化してくれて)ありがとう”と言われた。ただ、序盤に韓国選手と対戦すると気が遠くなり、メンタルが揺れた」とも告白した。
それとともに「それでも周りから“あなたは日本人”と言われ、“よくやっている”とも言われた。差別を感じたことはない」と付け加えた。
最後に、「(日本アーチェリー界の)後進を育てたい。日本のアーチェリーは、ほとんど大学までだ。それきりで辞める。卒業後の選択肢が広がるよう、道を作りたい」と未来を語った。
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