韓国の元欧州組イ・チョンヨン「もう大会直前の監督交代は見たくない」…W杯経験者が抱く“憂慮”

「ワールドカップ前の監督交代はもう見たくない」

【関連】ベント監督、“日韓戦”完敗以降の世論は「尊重」

韓国代表として2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会と2度のワールドカップ出場経験があるMFイ・チョンヨン(32、蔚山現代)は、現在の代表をめぐる世論と関連し、力強くこう語った。

国際Aマッチが行われている間、蔚山現代のキャンプが行われている巨済島で取材陣と会った彼は、パウロ・ベント監督が率いる現在の韓国代表について「サッカーファンの信頼が最も重要な時期」と、自身の考えを加減なく伝えた。

「ベント監督に信頼を持ってほしい」

これまでイングランド、ドイツと欧州で10年以上プレーした経験のあるイ・チョンヨンは、韓国代表でも数多くの試合に出場してきた。

ボルトン・ワンダラーズ在籍時の2010年には22歳で南アフリカW杯に出場すると、大会通算2ゴールの活躍で決勝トーナメント進出に貢献。一方、4年後のブラジルW杯ではグループステージ敗退の痛みも味わい、2018年ロシアW杯では出場メンバー23人からも外れた。

大きな成功と失敗のどちらも経験しただけに、ワールドカップを準備する過程の重要性は誰よりも認知している。

(写真提供=韓国サッカー協会)イ・チョンヨン(中央)

イ・チョンヨンは「ワールドカップ最終予選では今よりも厳しい試合が増える。そういうときであればあるほど、(パウロ・ベント)監督や選手への信頼を持ってほしい」とし、「毎回ワールドカップ本大会まで1年余りを控え、指揮官を交代するケースが多かったが、そんな状況は二度と見たくない」と強調した。

イ・チョンヨンの言葉通り、韓国代表は4年周期で開催されるワールドカップをめぐり、指揮官が契約期間を満たせず退いてしまうことが多かった。2002年日韓W杯でフース・ヒディンク監督が韓国をベスト4に導いて以降、特に世論の目が厳しくなり、監督交代も頻繁になった。

高い年俸を払って外国人監督を招聘しても、ワールドカップ最終予選で少しでも危機に追い込まれるとたちまち否定的な世論が形成された。そして、韓国サッカー協会(KFA)も監督交代で何度も火消しを図ってきた。ワールドカップを通じた利益構造が目立つ韓国サッカーの現状では、監督交代も致し方ないという声もあるほどだ。

ただ、今では国ごとに独自のアイデンティティを持った戦術の色合いが重要視されていることから、優秀な欧州組の選手を多数抱える韓国も、短期間の結果にこだわらず、指揮官と締結したワールドカップまでの4年の契約期間は最低限保障しようという声が出てきている。

例え失敗したとしても、ワールドカップまでの4年間を完走したことで得られる学びもあり、次期監督を選ぶ際にも大きな助けになるという意味だ。

(写真提供=韓国サッカー協会)パウロ・ベント監督

こうした意味で、イ・チョンヨンは現在の韓国を率いるベント監督に対するファンの不信感を憂いだ。ベント監督は2018年の就任以降、“後方からのビルドアップ”を掲げているが、多くの国内サッカーファンは「韓国サッカーの現実と合わない」とし、批判を寄せている。

特に、3月25日の“日韓戦”で0-3の完敗を喫した直後は、批判の水位が絶頂に達した。最近行われた2022年カタールW杯アジア2次予選での大量得点で、多少雰囲気を変えたとはいえ、そもそも対戦相手が韓国よりも劣っていただけに、ベント監督への疑問符はまだ払しょくされていない。

「“放り込みサッカー”をしていれば良いのか?」

イ・チョンヨンは“ベント・コリア”発足初期に招集され、ベント監督の下でプレーしたことがある。2019年3月のボリビアとの国際親善試合では、ヘディングシュートから決勝点も生み出した。

「ベント監督は自身のカラーが明確だ。そのため、選手に自分の考えを簡単に理解させることができる。これは素晴らしい長所であり、韓国サッカーに必要だった部分だ」と話すイ・チョンヨンは、「多くの方がベント監督のサッカーを“ビルドアップ”と考えている。ただ、実際は世界的に同様のサッカーが行われている。我々がビルドアップを放棄し、ずっと“放り込みサッカー”だけしていれば良いのか」と強調した。

イ・チョンヨンは「監督に対する信頼は少なくともワールドカップまで持っていてほしい。これまで2度、ワールドカップを準備する過程で監督が交代された。そうなると、本大会まで準備する時間が本当に足りなくなる」とし、「ワールドカップに対する国民の期待はどんどん大きくなっているが、毎回1試合間違えたからといって監督を交代しているようであれば、韓国サッカーはいつまで経っても足踏み状態だ」と声を高めた。

また、韓国代表でプレーする後輩にも思いを伝えた。「所属チームでは主力として活躍する一方、代表では苦しむ選手がいる。それは心理的な問題とも言えるが、賢く乗り越えらえる選手もいれば、そうでない選手もいた」とし、「代表では出場への欲望より、韓国サッカーのためにたった1分だけでも準備するという気持ちを持っていれば、より大きなチャンスが訪れるはずだ」と伝えた。

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