人工知能(AI)発展の成否は、“人間中心的なデザイン”にかかっている

2019年06月29日 社会

人工知能(AI)への関心が日増しに高まっている。

6月25日にソウルで開かれたAI関連のカンファレンスには、“Siriの父”として知られるトム・グルーバーが登壇するということで1000人余りの参加者が駆けつけた。最近になって「第4次産業革命によって10年以内になくなる職業」という内容のコンテンツをよく目にするようになった。

はたしてAIは、いつの日か私たちの仕事を脅かす存在になるのだろうか。

米シラキュース大学(Syracuse University)の訪問学者で、米ニュージャージー工科大学(New Jersey Institute of Technology)の研究員でもあるシン・ミンチョル博士に会い、その答えを探してみた。

(写真提供=SKテレコム)「ai.x 2019」で“Siriの父”トム・グルーバーが講演している

AIは私たちの仕事を奪うのか

シン博士は「学界では職業の消滅と発生において、AIが与える影響は問題にならないレベルという意見が多い」とし、「結局、受け入れる人間側の立場にかかっている」と付け加えた。

シン博士はここで「ラッダイト(Luddite)運動」(機械破壊運動)について言及した。ラッダイト運動は19世紀初頭、イギリス産業化の過程で紡績機が労働者の雇用を奪うとして、手工業労働者が機械を壊して工場オーナーの家に火をつけるなど暴動を起こした事件だ。周知のように、その運動はハプニングで終わった。

現実としては機械によってすべての人間が職を失うことはなく、むしろ機械を扱う技術者など、新しいさまざまな職種が生まれた。

もちろん新たな産業構造のもと、AIによって消える職業もあるだろうが、AIの商用化とともに新たに生まれる職業が増える可能性もある。単に職業の数の増減だけを持って、議論する問題ではないということだ。

だからこそシン博士は、「受け入れる人間の立場」が考慮されるべきだと説明した。

AIは報道、会計、法律などの分野において、経済的利益やその他の要素のバランスを踏まえ、合理的で効率的な結果を導き出すことができる。が、人によってはそれが最善の結果ではない可能性がある。

例えば、Aという企業が労組のストライキ状態に入ったと仮定しよう。もしAIがA企業のストライキを「不当である」と判断したとき、私たちはその結果をそのまま受け入れることができるだろうか。誰かにとっては不当だろうが、また別の誰にとっては評価が異なる可能性がある。

このように受け入れる人間の立場によって、AIの判断に対する評価が変化するように、職業の消滅や残存も人々が後日直面する状況に応じて変化することだろう。つまりAIに対する人間の認知や評価が、AIと私たちの未来を決定するわけだ。

AIの発展には「人との親密な関係」が重要

シン博士は「AIが正常に私たちの実生活に適用されるためには、何よりも人間との親密な関係、相互作用が重要である」と語る。例えばアップル社のAIシリーズが初期に女性の声で設計された理由は、男性の声よりも人々の反応がより効果的であったからだ。

すなわち、人間とコンピュータが簡単かつ快適に相互作用できるようにオペレーティングシステムを設計し、評価する過程が必須ということである。

それとともにシン博士は「見た目が機械であるならば許すことのできる間違いや失敗を、人間の姿に似るほど不満に感じる場合もある」と付け加えた。見た目が人間に近くなると、それだけ能力を期待するようになり、それだけの価値が返ってこなければ、悪い評価を下すことになるのだ。

ここで「不気味の谷現象(uncanny valley)」を取り上げることができる。人間はロボットが人間に似始めると好意的な反応を示すが、一定のレベルに達するとむしろ不快を感じるという現象だ。その現象によって、優れた技術であるにもかかわらず、デザイン的な要素だけで否定的な感情を引き起こす可能性がある。

つまり技術がどのような感情を人間に抱かせるかによって、技術が正確に評価されないことがあるということだ。

人間中心的なデザインの必要性

人々はすでにAIの商用化が大きなチャンスであると同時に、危険性を持っていると認識している。

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