これは未来のAIがユーザーの懸念を解消する方向で設計されるべきであることを示唆している。
未来のAIは、デザイン的に人間の姿を反映したかたちで発展するだろうというのが、シン博士の予想だ。「不気味の谷現象」が説明するように、人間の姿をしたAIは、かなり高いハードルで評価されることになる。高い基準で評価されることになるAIの使いやすさを改善するためには、人間の理解が必ず伴わなければならない。
心理学者は、人間を認知的倹約家(cognitive miser)と説明する。つまり人間は情報を処理する過程で、以前の経験と観察に基づいて形成されたヒューリスティック(heuristic、直感)に頼って、認知する努力を最小限にする傾向を持つ。
そのヒューリスティックに基づいて人間は、最小限の努力で世界を理解して行動するためにメンタルモデル(mental model)を形成するが、「不気味な谷現象」は、人間のかたちをしたAIに対するメンタルモデルが不快や負の反応を伴うことがあることを説明している。否定的な認知反応は、最終的にAIの有用性を離れて人々に否定的なヒューリスティックを連想させ、ひいては高度な技術を採用しないという判断につながりうる。
現代のAI研究は技術を中心に進められているが、上記のように人間への理解が欠ける発展方向は、潜在的にAIの商用化に否定的な影響を与える可能性がある。AIの性能とは別に、それを受け入れるか拒否するかを決定する対象は、最終的に人間だ。人間への理解が欠けたAIの未来は、肯定的ではないだろう。
シン博士は「結局のところ未来のAIは、技術の開発とともに人間の理解をもとにした人間中心の相互作用の設計(human-centered interaction design)が結合されたかたちで発展しなければならない」と強調した。