韓国のeスポーツを語る上で決して外せない男がいる、らしい。
その名は“Faker”。なんでも本名はイ・サンヒョクらしいが、世界的な人気を誇る『League of Legends』(以下、LoL)では、韓国最強、LoL最強プレイヤーの名をほしいままにしてきたという。
韓国での別名は“魔王”。LoLは日本でもプレイヤー人口が多く、日本のファンたちは彼を“神”と崇めるというが、最近のゲームに疎い方々にとって“Faker”は初めて聞く名前だろう。
かくいう筆者も最近になって彼のことを知った。一人暮らしの自宅にはスーパーファミコンしかなく、興味本位でeスポーツのことを調べ始めたとはいえ、PS5に至ってはなんかすごそうというマヌケな返答しかできないズブの素人だが、eスポーツを調べれば調べるほど、目にするのがFakerの“凄さ”だったのだ。
ズブの素人なりにLoLにおけるFakerのストロングポイントを漁りまくって判明したことは、彼がとても多様な能力を求められるポジションで、まるで千手観音のようなプレイを見せるということである。
どうやら“Faker”がLoLで主戦場として活躍しているのは、Midレーンという場所らしい。ここは5 vs 5のチーム戦で行われるLoLにおいて複数の敵を袋叩きにすることが多く、他レーン(Top、Bot)への干渉も求められる忙しいレーンとされている。
わかりやすく図解するならば、このゲームは四角形の対角にある本拠地(Nexus)を破壊することが勝利条件なのだが、自陣から最短ルートであるまさに“対角線”がMidレーンと呼ばれている。
ここでの主導権争いで遅れをとることは、すなわち試合全体の主導権を失ってしまうことと直結する。
そのような重要なポジション争いにおいてFakerは、サモナースペル(操作するキャラがゲーム中に使える特殊能力。敵にダメージを与えたり、回復や移動速度を上げるなど様々な効果がある)を3つ(ゲーム上では開始前に設定する2つしか使えない)持っているのではないかという声が上がるほど、卓越したプレイを見せるとのことだ。
上記した通りとてつもないプレイングスキルを誇るFakerだが、とある韓国メディアのインタビューでは「LoLにおいては努力したことはない」と答えている。自分の好きなものに打ち込むことは苦ではなく、むしろ幸福だということなのだろう。
大会での賞金やスポンサー料を含めると、彼の年俸はおよそ3億円とも言われているが、月に2~3万円しか使わず、使うとしても友人との食事での支払いぐらいだとか。
唯一の贅沢と言えば、広さ50㎡の家に暮らす家族ために、160㎡の家を買ったことが最も高い買い物だったそうだ。なんて出来た孝行息子なのだろうか。今年(2021年)で25歳を迎える若者とは思えない。
自分が好きなものをトコトン突き詰めるストイックさと無欲さ、そして家族思いのやさしさ。魔王であり神と崇められる若者の素顔が、そこにあるのかもしれない。
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