大統領選を2022年3月に控えた韓国では、支持率の高い候補2人の周辺が騒がしい。
12月8日、ユン・ソギョル(尹錫悦)候補が属する「国民の力」の中央選挙対策委員会側は、「(ユーチューブチャンネルの)『開かれた共感TV』の放送はフェイクニュースだ。偽ニュースに便乗して報道したマスコミの記者と、書き込みを公開した民主党のチュ・ミエ前法務長官に対しても強力な法的措置を取る」と公式発表した。
ユン候補側が声明を発表にするに至った原因は、12月6日にユーチューブチャンネル『開かれた共感TV』が公開した動画にある。
この動画はアン・ヘウク元韓国小学校テコンドー協会長のインタビューなのだが、1997年にラマダルネッサンスホテルでチョ・ナムウク三扶(サムブ)土建会長の招待で接待を受けた際、“ジュリー”と呼ばれる女性に接待されたという内容が含まれていた。ジュリーという名は、最初はジュエリーだったが、略してジュリーになったと聞いたというエピソードも披露している。
そして翌日、韓国メディア『オーマイニュース』がこの動画の内容を大々的に報道しただけでなく、チュ・ミエ前法務長官が自身のSNSに揶揄するようなコメントを投稿し、「疑惑に誠実に答えろ」と主張したたため、大々的に拡散されることとなった。
そんな経緯があったため、ユン候補が前述の声明を発表するに至ったわけだ。
では、この動画は何が問題だったのだろうか。それは動画内で言及された“ジュリー”という女性が、ユン候補の夫人で、いわば次期ファーストレディー候補であるキム・ゴンヒ氏の可能性があるからだ。
遡ること今年6月、韓国ではユン候補に関する疑惑がまとめられた、いわゆる「ユン・ソギョルXファイル」の存在が明らかとなった。ここに、キム・ゴンヒ氏がかつて“ジュリー”というあだ名を用い、風俗街で働いていたという情報も掲載されていたという。
この疑惑は波紋を呼び、7月にはキム・ゴンヒ氏を誹謗する内容の「ジュリーの男たち」というフレーズと、キム・ゴンヒ氏を模したかのような女性の顔の壁画がソウル鍾路(チョンノ)区の建物の壁に登場したほどだ。
ここには「2000某医師、2005チョ会長、2006某平検事、2006ヤン検事、2007 BM代表、2008年キムアナウンサー、2009ユン検事」という文字も書かれており、キム・ゴンヒ氏が関係を持った人たちの情報ではないかと推測されている。
夫人が元風俗嬢となれば、大統領選への影響は必至だ。そのためユン候補側は、いち早く疑惑を「フェイクニュース」と一蹴したわけだ。
世間を騒がせているユン候補だが、対立する「共に民主党」イ・ジェミョン(李在明)候補も決して安心できる状況ではない。
イ候補は現在、映画『私の頭の中の消しゴム』などで知られる女優キム・ブソンに損害賠償請求訴訟を起こされている状況だ。
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発端は2010年11月、キム・ブソンが韓国メディア『タンジ日報』とのインタビューで、とある政治家と付き合ったことがあると発したことから始まる。実名は明言しなかったものの、周辺情報などからイ候補と推定され、キム・ブソン本人もあえて否定しなかった。
そして2016年にキム・ブソンがイ・ジェミョンという名前を具体的に取り上げると、イ候補はSNSを通じてキム・ブソンに、「こうやって続けるのであれば法廷に引き渡すぞ」としたため、キム・ブソンは自身の発言を撤回。事態は収束したかに見えた。
しかし、鎮火したと思われたこの話題は2018年に再燃することに。当時、地方選挙京畿道知事討論会で「正しい未来党」から出馬したキム・ヨンファン候補が、テレビの討論会でこれらのスキャンダルを露骨に言及したため、地方選挙最大の話題として再び浮上した。
同じく京畿道知事候補として「民主党」から出馬したイ候補は、討論会でキム・ブソンとのスキャンダルを否定したが、キム・ヨンファンはイ候補を選挙法上の虚偽事実公表罪と告発した。
これに便乗するかのようにキム・ブソンも態度を一変させ、イ候補と関係を持っていたが、脅迫され口を封じられていたため明らかにできなかったと主張し、議論がさらに大きくなった。
ただし、2人のスキャンダルを裏付ける証拠は皆無に等しかったため、検察は2018年12月に嫌疑なしとして不起訴処分を下したのだった。
その後もイ候補側はこれを否定し、キム・ブソンを“虚言癖”と“麻薬常習服用者”という趣旨で非難すると、キム・ブソンは精神的・経済的な損害を被ったとし、イ候補を相手に3億ウォン(約3000万円)の損害賠償請求訴訟を提起した。訴訟は現在も継続中だ。
いずれにしても女性関係の問題を抱えている2人の候補が目玉となっている韓国大統領選。12月8日に韓国ギャラップが発表した支持率は、ユン候補36.4%、イ候補36.3%と拮抗している。来る2022年3月、果たして韓国国民はどのような判断を下すのだろうか。
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