激しい買収戦が終結…証明された“SMエンタ固有の価値”、和解したHYBEとカカオが今後得るものとは

2023年03月13日 話題

イ・スマン前総括プロデューサーをめぐるオーナーリスクや、HYBE-カカオの巨大資本の浸透のなかでも、30年近くアーティストとファンが共に築いたSMエンターテインメント(以下SM)文化の遺産と価値は強固だった。

【公式】SM買収をストップ…HYBEが経営権を譲歩

SMをめぐるHYBEとカカオの経営権紛争が、カカオの勝利で幕を閉じたなかで「K-POP王国」SMのイメージが毀損されたという見解もあった。

だが、HYBEとカカオがSM買収に1兆ウォン(約1000億円)規模の莫大な資金を注ぎ込んだのは、お金の価値に換算できない“SM固有の価値”、すなわち知的財産権(IP)の無限の可能性を逆説的に証明した。

和解したカカオとHYBEが得るもの

結果的に、これまで自社アーティストのIP事業に力を入れてきたSMの真価が光を放ったと見ることができる。

1996年にデビューしたH.O.T.を皮切りに、S.E.S.、SHINHWA、BoA、東方神起、SUPER JUNIOR、少女時代、SHINee、f(x)、EXO、Red Velvet、NCT、aespaと、第1世代から第4世代まで長い間蓄積してきたSMのK-POP関連のIPは、今回の経営権紛争でさらに価値を確かなものにした。

(写真提供=SMエンターテインメント)aespa

SMの経営権を持っていったネット大手のカカオは、IT技術とSMのIPを結合してKカルチャー産業のグローバル化に拍車をかけ、HYBEはSMのIPを通じたオンライン公演中継からグッズ販売、ファン交流まで可能なプラットフォーム事業の拡張に乗り出す。

結局は有機的な世界観を構築してきたSMアーティストのSMCU(SMカルチャーユニバース)がカカオとHYBEと出会って、より広い世界に広がっていくことになったのだ。

この1カ月間、韓国エンタメ業界と株式市場を熱く盛り上げた“SM買収戦”が幕を閉じたなかで、カカオとHYBEが得ることになったものは何だろうか。

まずカカオは、SM買収でグローバル企業に跳躍するという「ビヨンド・コリア(Beyond Korea)」戦略に拍車をかける見通しだ。「ビヨンド・コリア」の核心系列会社であるカカオエンターテインメントは、ウェブトゥーン、ウェブ小説、ドラマ、映画などで競争力を備えたが、強力な音源IPとアーティストがいないというのが弱点として挙げられてきた。

カカオエンターテインメントの成功的な株式公開(IPO)のための最後のパズルとして「SM買収」が言及されたのもこのためだ。SMという千軍万馬を得たカカオは、2019年から狙っていた上場のための最後のステップだけを残すことになった。

(写真提供=SMエンターテインメント)NCT 127

カカオ側は「K-POPアイドルを中心としたSMのIPと制作システム、カカオとカカオエンターテインメントのIT技術とIPバリューチェーンなどを結合し、強力なシナジー効果を出す」と明らかにした。

現代自動車証券のキム・ヒョンヨン研究員は、「カカオエンターテインメントのK-POPマネジメント事業はSM買収成功時に年間2500万枚を超えるアルバム販売量、年間250万人の公演集客力を備え、兆単位の売上への飛躍的な成長が可能になる見通し」と述べた。

一方でHYBEは、SMアーティストを通じた事業拡大に乗り出すものと見られる。

具体的な方案を公開しなかったが、SM関連のIP使用権をHYBEが保有するファンコミュニティプラットフォームである「Weverse」に渡す方案が有力と見られる。簡単に言えば、SMアーティストの公演、ファンコミュニティ、ウェブコンサート、MD(Merchandise/広報商品)などがWeverseで流通することだ。

現在、韓国のファンプラットフォーム市場は、HYBEのWeverseとSMのBubbleに二分されている。両社の市場シェアを合わせれば90%以上という話まで出ており、有料登録者数が約1000万人規模の“巨大”ファンプラットフォームが誕生すると業界は眺めている。

とある関係者は、「HYBEが当初、SM経営権の買収を推進したのもWeverseを育てようとする目的が大きかった。持分買収を契機にHYBEがSMアーティストのIPを活用できるようになり、事業拡大の扉を開くだろう」と話した。

カカオ(左)とSMエンターテインメントのロゴ

「SM 3.0」の行方は?“K-POP王国”の再建へ

カカオと「3.0時代」を開くSMの未来に対する関心も高まっている。「チキンゲーム」を終えたSMは、本格的に「SM3.0」戦略に拍車をかける。

SMの友軍だったカカオがSMの経営権を持つことになり、現経営陣が唱えた新しいビジョンである「SM3.0」を、スピード感を持って推進していくものと観測される。

SMが去る2月3日に発表した「SM3.0」の核心は、イ・スマン前総括プロデューサーのワンマンで進行されたアルバム制作方式から脱却し、マルチ制作センター・レーベル体系を備えた会社に変貌することだ。

また、2025年までに活動アーティスト数を21グループ以上、年間アルバム発売回数を40件以上、年間アルバム販売量2700万枚以上、年間公演回数400回以上を目標にしている。今年、「NCT東京」をはじめ、新人ガールズグループ、新人ボーイズグループ、“仮想歌手”などもローンチする計画だ。

(写真提供=SMエンターテインメント)SHINee

HYBE、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメントなどに比べて遅れているという評価を受けていた北米市場の攻略も、カカオとのシナジー効果を通じて再び推進されると見られる。カカオのコンテンツ・IT技術と手を組んでウェブトゥーン、ウェブ小説など多様な拡張IP開発にも拍車をかける見通しだ。キャラクター事業で強みを持つカカオと協力し、多様なMDを披露する可能性もある。

今月末のSM株主総会で、SMとカカオは新しい取締役陣を構成する予定だ。これに先立ってSMは「2023年定期株主総会」案件公示を通じて、社内理事にチャン・チョルヒョクSM最高財務責任者(CFO)、キム・ジウォンSMマーケティングセンター長、チェ・ジョンミンSMグローバルビジネスセンター長を候補に提案した。

とある関係者は「イ・スマンとSM現経営陣の間の紛争で、ブランドイメージと自尊心に傷がついたSMは、当分“K-POP王国”の再建に全力を傾けるものと見られる」とし、「カカオが立場文を通じてSMの自律的・独立的運営を保障すると約束しただけに、カカオと共に過去の栄光を取り戻し、イメージ再建のために努力するだろう」と展望した。

HYBEを支持した一部の職員と会社側の葛藤を解消することも残された宿題だ。

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