毎週日曜日の午後9時からTBS系列で放映されているドラマ『ノーサイド・ゲーム』。
池井戸潤の小説を原作とし、大泉洋扮するトキワ自動車の中堅サラリーマン君嶋隼人が、同社のラグビーチーム“アストロズ”のゼネラルマネージャー(GM)となって奮闘する姿が描かれており、好評を得ている。
筆者も毎週欠かさず楽しく視聴しているが、この『ノーサイド・ゲーム』が韓国でも放映されていることをご存じだろうか。
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放映しているのは、韓国の“日本コンテンツ専門”ケーブルテレビ局であるチャンネルW。日本の最新ドラマやバラエティ、ドキュメンタリー番組などの独占放映権を取得し、過去にはドラマ『孤独のグルメ』をはじめ『深夜食堂』『逃げるは恥だが役に立つ』『ドクターX~外科医・大門未知子~』『過保護のカホコ』などを放映していた。
2018年12月に同局の経営総括理事キム・ヒョンジュン氏をインタビューした際、「韓国で放送されたことのない珠玉の名作を紹介しつつ、話題の最新作も放映する」と話していたが、その作品選びの確かさには改めて敬服する。
チャンネルWでは日本の放送開始から、2週間ほど遅れた7月24日からスタート。毎週水曜日の午後11時からオンエアされている。
ネット上で上がっている『ノーサイド・ゲーム』の反応は上々だ。
「ノーサイド・ゲームが面白いということを否定できない」「スポーツ作品ならではの感動法則をそのまま因襲しているのに、僕の中にある“涙のボタン”を押しまくる作品」という意見もあるほどだ。
ただ個人的に気になったのは、韓国の視聴者たちは『ノーサイド・ゲーム』で扱っているラグビーというスポーツを理解できているだろうかということだ。
というのも、韓国でラグビーは“不人気スポーツ”(=マイナースポーツ)に分類されており、まったく人気がないのだ。
どれほど人気がないのか。例えばそのチーム数である。
日本のラグビー競技者人口は約12万人で、毎年冬に大阪・花園で行われる全国高校ラグビー選手権大会には約800校が予選に参加するとされているが、韓国のラグビー人口は、その100分の1にもならない。
財団法人・大韓ラグビー協会に登録されているチーム数も中学22チーム、高校17チーム、大学9チーム、社会人3チームと国軍体育部隊ラグビー部の計52チームという少なさなのだ。
そんな状況だから代表チームはワールドカップ出場歴もなく、ラグビーとアメリカンフットボールの区別もできないという一般人も多い。
それでも『ノーサイド・ゲーム』を楽しみにしている韓国の視聴者たち。その1人に筆者の友人もいるのだが、彼の言葉を聞いて『ノーサイド・ゲーム』が韓国でも通用する理由がわかったような気がした。
「会社員出身のGMが母体企業から予算を引き出そうと苦労したり、母体企業の経営陣から“なぜスポーツチームを運営するのか。お荷物だ”となじられたり、それでもGMが選手たちを説得して地域社会活動に参加させ、愛されるチーム作りを目指して悪戦苦闘する姿に共感する。プロスポーツチームがどうやって運営・成長していくかを描いているので、参考にも刺激にもなる」と。
彼はKリーグのクラブ運営にも携わっているだけに、余計に君嶋GMと『ノーサイド・ゲーム』の世界観に感情移入してしまうそうだ。おそらくそのほかの視聴者たちも、そういった視点でドラマを楽しんでいるのだろう。
いずれにしても、韓国でも放映されている『ノーサイド・ゲーム』。クライマックスが近づいているだけに、ますます物語を楽しみたい。
(文=慎 武宏)
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