韓国テレビ局SBSの無理な編成の変更で、ドラマ主演女優の“重複編成論議”が浮上した。期待作の主演を務める女優を奪われたMBCと、2つの放送局の間に挟まれた女優イム・スヒャンが混乱している状況だ。
4月5日、MBCとSBS間の編成に関する葛藤が浮上した。
MBCの新しい金土ドラマ『ドクター・ロイヤー』(原題)が5月末に初放送を事前編成していたなか、SBSが5月中の初放送として新しい月火ドラマ『私たちは今日から』(原題)を編成することにしたのだ。
問題は、両作品とも女優イム・スヒャンが主演で出演するという点だ。
先に編成されたのは、MBCの『ドクター・ロイヤー』だ。同作は、操作された手術ですべてを奪われて弁護士になった天才外科医と、医療犯罪専門検事によるメディカルサスペンス法廷ドラマ。俳優ソ・ジソブ、シン・ソンロク、イム・スヒャンが主演キャストで、5月の金土ドラマに事前編成された。
一方の『私たちは今日から』は、当初『今日から私たちは』というタイトルのOTT(動画配信サービス)専用ドラマとして業界に知られた。結婚前の純潔を命のように守っていたオ・ウリが検診を受けている間の医療事故により、とある男の子供を身ごもることで繰り広げられるラブコメ騒動劇で、イム・スヒャンとソンフンが久しぶりに共演するドラマとして期待を集めている。
ポータルサイトの公式情報にも4月6日午前現在、変更前のタイトルと「放送社未確定」と掲載された状態だった。そのため編成は未定状態で、撮影だけ先に仕上げられると見られていた。そんななか『社内お見合い』の後続作として、5月中の放送が突然決定されたのだ。
議論の始まりは、SBSの金土ドラマに空白が生じたことだ。もともとSBSの金土ドラマは『悪の心を読む者たち』(原題)の後続で、『消防署の隣の警察署』(原題)が編成される予定だった。しかし『消防署の横の警察署』がプロデューサーの死亡という悲報によって、撮影が中断された。故人の死亡原因に対する調査まで行われるなかで、後続作の編成が困難になったのだ。SBSは『アゲイン・マイ・ライフ』(原題)を新しい金土ドラマに編成した。
先立って『アゲイン・マイ・ライフ』は月火ドラマとして議論されていた。そのため再びドラマの編成に空白が生じると、SBSはOTT専用とされていた『私たちは今日から』を『社内お見合い』の後続に決定。しかし初放送を4月(『社内お見合い』は4月5日に最終回を放送)ではなく5月中に編成し、ドラマ主演女優が“かぶる”事態が生じたのだ。
それと関連してMBCは、「遺憾」と不快感を隠していない。
MBCの関係者は『OSEN』に「焦っていたからそうなったのだろう」としながらも、「SBSの気の毒な編成状況を勘案しても、商道義に外れる意思決定」と指摘した。MBC側は「すでに『私たちは今日から』の編成が遅れ、『ドクター・ロイヤー』の撮影に無理を与えていたが、撮影で先行した番組という理由で配慮していた。しかしSBSは編成過程で最小限の了解もなく、一方的な通知で仕事を進めた」と話した。
何よりもドラマの主演女優の重複を回避することは、長らく放送業界で守られてきた慣行だ。俳優たちの様々な作品への出演と、多様なコンテンツの撮影に対する自由を制限することはできないため、撮影スケジュールは重なっても、編成の重なりは避けるよう放送社とコンテンツ提供者の水面下での調整があった。
映画とドラマ、あるいは演劇、ミュージカルのように、観客と視聴者で分かれるのではなく、ドラマを見る主な視聴者層が重なる確率が高いためだ。
さらに『ドクター・ロイヤー』と『私たちは今日から』は、それぞれ法廷ものとラブコメというジャンルの違いがあり、劇中に登場するイム・スヒャンのキャラクターの設定や演技も大きく異なる見通しだ。そんななか、似たような時期に両ドラマを見なければならない視聴者にとっては、没入感が妨げられるとも予想される。
これについてMBC側は、「主演俳優の広報やマーケティングが重なる問題はどうするのか。広告主やスポンサー、視聴者の全員が混乱するはず」とし、「結局はこの過程で生じる被害者は、視聴者ではないか」と憂慮を隠せなかった。
しかし議論と懸念にもかかわらず、SBSは4月5日、『社内お見合い』の最終回が放送されると、『私たちは今日から』の予告映像を公開し、イム・スヒャンの姿を登場させた。
さらに「『私たちは今日から』は『社内お見合い』の後続として4月11日に初放送される予定だったが、制作会社グループエイトの事情で編成が5月に仕方なく移された。4月放送予定であったため、(他局の)ドラマ編成および重複出演についてはまったく知らなかった。他ドラマと初放送日や放送曜日、時間、作品テーマもまったく違うので問題ないと思う」と責任を回避した。
韓国を代表するテレビ局の間に立たされた女優イム・スヒャンにも、同情の声が上がっている。
所属事務所によると、『私たちは今日から』は撮影の最終段階であり、『ドクター・ロイヤー』は撮影の真っ最中だ。編成について決めることができない俳優の立場では、極端な演技で差をつけるしかないため、プレッシャーが大きく加わるという見方だ。
薫風が吹く季節とは異なり、来る5月の韓国テレビ局の雰囲気には危機感が加わりそうだ。
(記事提供=OSEN)
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