彼は、困難な境遇の中で育った主人公が、様々な努力の末に自分の道を切り開いていくというサクセスストーリーが大好きだ。『宮廷女官 チャングムの誓い』もそうだし、『トンイ』や『イ・サン』もそうである。
また、クライマックスではハッピーな展開を好む傾向があり、長いドラマでも最後まで安心して見ることができる。つまり、常に希望が持てる形でドラマを終わらせるのが、イ・ビョンフン監督のスタイルなのだ。
さらに、キャスティングに関していうと、若くて経験の浅い女優でも大胆に抜擢する傾向がある。『トンイ』のハン・ヒョジュ、『オクニョ 運命の女(ひと)』のチン・セヨンもそうである。
イ・ビョンフン監督ほどの巨匠になると、視聴者の期待も大きく、それだけ主人公となる女優の比重も高くなる。となると、演技に不安が残る新人を使いたがらないと思われるのだが、イ・ビョンフン監督はそういう安全策を取らず、大胆に新人女優を起用して成功に導いている。
もちろん、新人ならば演技の面で不足している部分が多いのだが、イ・ビョンフン監督の優れた演出によってチン・セヨンも見事な成長力を見せた。結果的に、生き生きとしたドラマに仕上がっていく。このように、キャスティングが大胆なのもイ・ビョンフン監督の信条である。
さらにイ・ビョンフン監督が巧みなのは、道化となる脇役をたくさん配して、ドラマを面白くすることだ。
歴史上の人物を取り上げていくと、どうしても様々な事件が起こって重苦しい雰囲気になるものだが、それを和らげるのが、庶民的な脇役たちのコミカルな演技である。『オクニョ 運命の女(ひと)』もそうだったが、配役の味付けがイ・ビョンフン監督はうまい。
彼は、視聴者が何を求めているかを知り抜いている。巨匠でありながら独りよがりにならずに、大衆の求めるストーリーを面白く作っていく。そこが傑出しているのがイ・ビョンフン監督なのである。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)