『梨泰院クラス』の悪役アン・ボヒョンが語るパク・ソジュンとの友情「彼の一言が響いた」【インタビュー後編】

Netflixで公開されて以降、日本でも熱い旋風を巻き起こしている『梨泰院クラス』(JTBC)。アン・ボヒョンが劇中で見せた姿は、悪役チャン・グンウォンそのものだった。

【前回】アン・ボヒョン、初の悪役にかけた並みならぬ情熱

原作のWEBマンガから飛び出してきたような驚異のシンクロ率を誇り、悪役でありながら憎めない独特のキャラクターを作り出したアン・ボヒョン。前作『彼女の私生活』(tvN)ではパク・ミニョン演じるヒロインに片思いする幼なじみ、ナム・ウンギを演じたが、『梨泰院クラス』では当時と180度違うキャラクターを仕立て上げ、「本当に同じ人なのか」という反響も多く上がった。

高い表現力で役を演じ分け、韓国の視聴者を驚かせたせた件について、本人は「 “本当に同一人物?”っと言われることがうれしい。それだけ、別のキャラクターを演じられている証拠だから。俳優冥利に尽きる」と喜びのコメントを残した。

アン・ボヒョンは、脚本を受け取る前から切実にチャン・グンウォン役を演じたかったそうという。そのためだろうか。『梨泰院クラス』での演技は輝いていた。

『梨泰院クラス』より(写真提供=JTBC)

弱者の前でだけ見せる卑劣な目つきから、父親の前では身動きが取れない怯えた表情。狂気と弱さを行き来するアン・ボヒョンの演技は、視聴者に怒りを超えて憐れみを感じさせた。

これほど見る者を惹きつけるシーンの数々が生まれたのは、アン・ボヒョンの隠れた努力があったからだ。彼は撮影秘話をこう語っている。

「まず、格好つけることをやめた。原作と最大限シンクロしたくて、髪を脱色してオールバックにした。監督はあえてそこまでしなくてもいいと言ったが、僕が不格好になったとしても、チャン・グンウォンがもっと悪く見えるようにこだわった。

ワックスをたくさん塗らなければならないのでヘアセットだけで50分もかかり、洗うときも30分かかった」

魅力的な悪役を作り上げるにこだわったのは、顔や髪型だけでない。

「体格で勝っているうえで、パク・セロイに喧嘩で負けたらもっとダサく見えるだろうと思った。食事制限と運動を続けた」と、全体的なルックスへの工夫も明かし、「長いことスポーツをしてきたので、自分の体をよく知っている。太りやすい体質で、92kgまで太ったこともある」と付け加えた。

アン・ボヒョンは、役作りにあたって世界的な稀代の悪党、ジョーカーを参考にしたという。

「ジョーカーの笑い声から、インスピレーションをたくさん受けた。気が狂ったように吐き出す笑いと目つきで悪い感じを与えたかった。ちょうど衣装も紫色で、実際に『ジョーカーみたい』という感想ももらえた。この役作りは、演技力を大きく伸ばす一助となった」

父親役のユ・ジェミョンと、ライバル役のパク・ソジュンへの謝意も示している。

ユ・ジェミョンの息子を演じられて光栄だったというアン・ボヒョンは、「現場ではたくさん質問をし、いろいろなことを学んだ。チャン・グンウォンが大声でわめき立てる場面が多いが、オーバーではないかと慎重になる部分もあった。そんなとき、ジェミョンさんがもっと気を失うくらい思いきりやってもいいと言ってくれて勇気をもらった」と話した。

パク・ソジュンについては「主要キャストの中で唯一の同い年。友達だが、俳優として学ぶことの多い人だ。共演シーンでは、“お前の演技は正しい。遠慮しないでやりたいようにやれ”と言ってくれて、その一言が心に響いた」と回想した。

演技力だけでなく、187cmの高い身長とスポーツで鍛えられた体格は、過去の出演作に再び火が点くほど話題を呼んでいる。その影響はドラマや映画などのメディア作品にとどまらず、過去に出場したボクシング大会にまで及んだ。

ン・ボヒョンは「入場料と賞金を寄付する、難病の子どもたちを助ける慈善格闘技大会だった。当時はすでにボクシングをやめて随分経っていた。でも、次はいつこんなチャンスがあるかわからないと思い、出場した」と語り、「最初は軽い気持ちだったが、男としての意地が出てきた。いざリングに上がったら負けたくないし、燃えていたよ。結局勝った」と笑顔を見せた。

アン・ボヒョンは実際に、中高校生時代をアマチュアボクシング選手として活躍した。

釜山(プサン)出身の彼は地域の代表選手として金メダルを取るほど実力が優れていたが、度重なる負傷を両親が心配し、勇退。2007年からモデルの道を歩んだ。その経緯については、こう語っている。

「体育高校を出て、成人した後に両親が全く別の道を歩んでみたらどうかと提案してくれた。それでモデルを始め、大学に行ってキム・ウビンに会った。

モデル業は自分に向いていると、こんなに面白くて不思議な世界があるのだと思った。学校にもチャ・スンウォンさん、チョ・インソンさん、イ・ミンギさんのようにモデルから俳優に転向して成功した先輩が多く、後に続きたくて演技を始めた」

その後、アン・ボヒョンは2014年の『Golden Cross』(KBS2)を皮切りに本格的な俳優活動をスタートさせ、『最高の恋人』(MBC)、『太陽の末裔』(KBS2)、『私がヒロイン!~宿敵のビョル姉妹~』『かくれんぼ』(MBC)などに出演して演技力を高めていった。 

前途洋々に進み続けるアン・ボヒョン。

同じ大学の友人であるキム・ウビンを始め、後輩のチャン・ギヨン、ナム・ジュヒョクといった若手俳優の存在は良い刺激にもなっただろう。しかし、一方で焦りや不安もあったはずだ。当時の苦悩について聞くと、包み隠さず答えてくれた。

「金銭的な困難にぶつかったときは、“他の仕事を選んだほうが家族の役に立てるかもしれないし、より平凡な人生を生きられたのではないか”、“僕がやりたいことをやると、みんなを苦しめるのではないか”と思うこともあった。それでも頑張っていればいつかはチャンスが訪れると思い、辛抱した。そのおかげか、ありがたいことにデビューしてから空白期がほとんどなかった。 3カ月以上休んだことがないし、小さな役から少しずつ積み上げることができた」

「初心を失わない俳優になりたい」という、謙虚な姿勢も示している。

過去のインタビューでは、悪役を演じてみたいと話していたアン・ボヒョン。今回のチャン・グンウォン役は、まさに自ら勝ち取ったものだった。今度はどのような役柄を望むのか。自ら願いを実現してゆく彼の活躍を期待しながら、次回作に関心を寄せる者も多い。

「ジャンル物はまだやったことがないので、挑戦したい。体を使うのも好きなのでアクションシーンもやってみたい。また、いつも片思いばかりだから、恋が実るキャラクターのオファーも待っている」

実力派俳優としての地位を確固たるものとしたアン・ボヒョンは最後に、『梨泰院クラス』とチャン・グンウォンとの日々を振り返り、笑みを浮かべながらこう語った。

「これからも最愛の作品、最愛のキャラクターだと思います」(了)

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