スターの誕生日や記念日にプレゼントを贈りたいというファンは少なくないが、その行為が無条件に肯定される時代は、すでに過ぎ去ったのかもしれない。
意外にも韓国では、プレゼントを贈ったファンに批判的な意見がぶつけられるケースがあるのだ。
最近、誕生日(6月22日)を迎えた俳優イ・ミンホが自身のインスタグラムに、ファンから贈られた大量のプレゼントの写真を投稿した。
その投稿でイ・ミンホはファンへの感謝を綴り、写真では大量のプレゼントを背景にケーキを掲げて笑顔を見せた。
一見すると、ファンとスターの思い出となる微笑ましい場面だが、このイ・ミンホの投稿に対して、一部ではあるものの批判的な反応も寄せられている。
例えば、「最近のスターは“貢ぎ物”を控え、寄付を促しているのに、イ・ミンホはいまだに贈り物を披露するのか」「彼ほどのキャリアなら、もうプレゼントは受け取らず“気持ちだけで十分”と言っても良いのではないか」「“来年も頼む”と言っているように見える」といった意見だ。
韓国芸能界、特にK-POP界には一風変わったサポート文化、いわゆる「ジョゴン」が根付いている。ジョゴンを漢字で書くと「朝貢」で、文字通り「貢ぎ物」を意味する。
応援やお祝いのための駅広告や屋外ビジョン広告、市営バスなど公共交通機関を使ったラッピング広告、撮影現場への差し入れ(主にフードトラック)などもジョゴンの一種のやり方だ。
個人ではなく、集団で行われることが多い。オンラインコミュニティで知り合ったファンたちが、アイドルが喜びそうなプレゼントを選び、募金して購入したあと、所属事務所宛に発送するなどの対応を行う。プレゼントが高価であるほど「人気の証」と見なされる傾向があり、高級ブランドの商品が選ばれることも少なくないという。
ただ、こういった文化は、ファンの中には借金をしてまでジョゴンに参加する人もいるため、近年は、スターを応援したい気持ちの表れではなく、忠誠心を見せつけるための義務に変質したという批判も多い。
そのため、「プレゼントを受け取らない」と発表した韓国スターもいる。
例えば、ガールズグループのaespa(エスパ)は2021年5月、担当者を通じて「今後、aespaに関するすべての活動スケジュールおよびaespa関連の記念日、メンバーの誕生日などに関するサポートやプレゼントは、受け取らないことに決定した」と宣言。「今後はaespaを大切に思ってくださる皆さまのお気持ちだけ、ありがたく受け取らせていただく」と伝えた。
デビュー1年目の新人ガールズグループのこの宣言は、大きな注目を集めた。その背景には同年4月、あるメンバーの誕生日サポートを進める過程で、未成年の主催者が連絡を絶ち、「持ち逃げ」騒動が起きた影響もあったとされる。
aespaに先立って、BTSやSEVENTEENも手紙以外のすべてのジョゴンを受け取らないとしており、G-DRAGONやIUも同じ立場だ。
K-POPスターだけでなく、俳優にもいる。パク・ボゴムが代表的だろう。
彼は2016年、とあるメディアとのインタビューで「ファンがプレゼントを贈ってくれる気持ちはよくわかっているが、気持ちだけで十分だと思っている」と話したことがある。
当時22歳だったパク・ボゴムは、「僕を応援してくれているファンのほとんどは学生の方々だ。学生がどこにお金があるというのか。お小遣いで自分の欲しいものややりたいことを我慢して僕にプレゼントを贈ってくれるのは申し訳ない気持ちになる。できれば自分自身に投資してほしいと強く思う。貯金もしてほしい」とし、「ファンからのプレゼントは気持ちだけで十分」と繰り返した。
女優のパク・ボヨンも2018年、ライブ配信でファンからもらったプレゼントを開けながら、「こんなふうにプレゼントを送ってくれるなんて。これからは気持ちだけで十分。もうプレゼントは送らなくていいですよ」と述べた。
彼女は、「皆さんが一生かかっても使い切れないほどのプレゼントを送ってくれた。本当にたくさんいただいた。すべて自分で使いたいけれど、多すぎる」と話し、これ以上のプレゼントは遠慮したいという気持ちを率直に伝え、注目を集めた。
そういったスターたちの思いを受け止め、彼らの誕生日に合わせて病院や福祉施設などに寄付活動を行うファンが増えているのが近年だ。
チャン・グンソクとファンは、10年以上にわたって「チャン・グンソク誕生日記念分かち合い写真展」を開催し、チャン・グンソクの寄付金と写真展の収益金を全額寄付する活動を続けている。
ただ、だからといってスターを思うファンの気持ちを否定することはできないだろう。
実際、今回のイ・ミンホの投稿に対して、「自分たちが贈りたくて準備したプレゼントだ。なぜ問題になるのか」「第三者がとやかく言う必要はない」「無理に要求したわけでもなく、ファンとの喜びを分かち合っているだけ」といった擁護する声もある。
スターの記念日を祝いたいというファンの思いと、その思いに応えたいスターの気持ち。その両者にとって、今の時代にふさわしい“応援のかたち”とは何なのか、改めて考える時期に来ているのかもしれない。
(文=スポーツソウル日本版編集部)
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