ひとつの時代を風靡した女優シム・ウナの「22年ぶりの復帰」は、結局のところ事実ではなかった。
多くの人々が喜びと期待を込めて待ち望んでいた復帰説は詐欺事件として幕を閉じ、徒労感だけが残るなか、最近では歌手IUによるシム・ウナのオマージュがその寂しさをわずかに和らげている。
6月3日、『ヘラルド経済』の報道によると、シム・ウナの復帰を掲げて制作会社BY4Mスタジオと出演契約を結んだと主張していたA氏が、特定経済犯罪加重処罰法上の詐欺などの容疑で懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を受けた。
裁判所は、A氏がシム・ウナの委任状を偽造し、虚偽の契約を締結、出演料名目で16億5000万ウォン(約1億6500万円)を受け取った点すべてを有罪と認定した。
2023年初め、BY4Mスタジオは公式資料を通じて「シム・ウナと契約を結び、復帰作を準備中」と明らかにしたが、シム・ウナ側は直ちに「事実無根」と否定。その後の捜査と裁判で、双方が被害者であり、A氏による単独犯行だったことが判明した。
最近、コメディアンのシム・ヒョンソプの結婚式に電話で祝辞を送るなど、声だけでも近況を伝えたシム・ウナだっただけに、復帰への期待はさらに高まっていた。
しかし、今回の事件がもたらした落胆もまた大きく、シム・ウナの名前が久々に注目された理由が「復帰作」ではなく「詐欺被害者」だったという事実に、多くのファンが残念な思いを抱いている。
そんななか、歌手IUが最近発表したリメイクアルバム『A flower bookmark, Pt. 3』のタイトル曲『Never Ending Story』のミュージックビデオが、心に余韻を残している。
ハン・ソッキュとシム・ウナが主演した映画『八月のクリスマス』(1998)へのオマージュとして制作されたものだ。IUが直接出演し、原作のシム・ウナの繊細な感情を丁寧に再現しており、その姿がかえってシム・ウナの不在をいっそう際立たせているという声も上がっている。
このミュージックビデオは、原作のホ・ジノ監督および制作会社から正式な許諾を得て制作され、IUと何度もタッグを組んできたイ・レギョン監督が演出を務めた。IUは「聴くたびにうっとりして、歌うたびにむせるほど没入した」と語り、楽曲と映像に込めた感情の深さを表現した。
シム・ウナの復帰は叶わなかったものの、一編の映像によるオマージュが、あの時代の感性をふたたび呼び起こした。シム・ウナの「空白」をあらためて実感させられた今回の出来事は、IUが見せた短くもまばゆい輝きとともに、ほろ苦い余韻を残している。
(記事提供=OSEN)
◇シム・ウナ プロフィール
1972年9月23日生まれ。1993年にMBCの第22期公開採用タレントとしてデビュー。ドラマ『ファイナル・ジャンプ』『M~わたしはあなたを知らない~』『スッキ』『愛しているなら』など、出演する作品ごとにシンドロームを巻き起こし、一気にトップ女優に浮上した。また映画界からも注目され、映画『八月のクリスマス』をはじめ、『美術館の隣の動物園』『カル』『Interviewインタビュー』など、数多くのヒット作を持つ。2001年に突然引退し、2005年に政治家のチ・サンウクと結婚。以降は家庭生活に専念している。
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