BTS・SUGAの音楽プロデューサーとしての存在感が日に日に増している。
去る、10月15日、BTS(防弾少年団)のSUGAが手がけた三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカル登坂広臣のソロプロジェクト「ØMI」の新曲『You(Prod. SUGA of BTS)』がリリースされた。
そのコラボは、登坂自らSUGAにオファーして実現したとのことで、「意見交換しながら完成した、思い入れ深い楽曲に仕上がりました」とコメントしている。
そもそもSUGAは、Big Hitエンターテインメント(現HYBE)が実施した作曲家のオーディションを受け、当初は裏方を志望していた。しかし、現在はBTSの一員としてパフォーマンスするだけでなく、グループのクリエイティブな部分を担う重要な存在“ミンPD”としても活躍し、BTS飛躍の土台と言っても過言ではないだろう。
SUGAは登坂以前にも数々の楽曲を手がけているが、トップアーティストたちは何故SUGAにプロデュースされたがるのか。
今回、SUGAのプロデュース能力が垣間見える、代表的な事例をいくつか挙げてみた。
まず2018年の「EPIK HIGH」の『Eternal Sunshine』という楽曲だ。
韓国を代表するヒップホップグループのEPIK HIGHは、SUGAが憧れの先輩と公言しており、彼がヒップホップに興味を持つきっかけとなったアーティストだ。
SUGAにとって、幼い頃から憧れていた先輩との楽曲制作だったが、トラブルもあったようだ。しかし、その“トラブル”から見える魅力があった。
EPIK HIGHは『Eternal Sunshine』が収録されたアルバムリリース後、ファンと交流を図る生配信を実施したのだが、そこでの発言によると、なんと制作のマスタリング(最終調整作業)後にSUGAから重要な部分が抜けていたと伝えられたそうだ。
その時点で曲はすでにマスタリングが終了し、素材はニューヨークに送られていたが、SUGAが再びミックスし、再マスタリングすることになったという。
なお、この入れ忘れは非常に些細な部分だったと言われている。ミスは誰にでも起こり得ることだが、一切の妥協を許さない、SUGAの“職人魂”が感じられるエピソードだ。
ちなみに、『Eternal Sunshine』の韓題は『夜明けに』で、アルバム名の『Sleepless in __________』(眠れない・眠らない)な夜を過ごしたあとに迎える夜明けの“うすぼんやり”とした気分を表現しており、寒くなってきてセンチメンタルな気分になりやすい今の時期にピッタリの曲だ。
続いて2020年には、歌姫「IU」との超大型コラボ曲『eight(Prod.&Feat. SUGA of BTS)』を手がけた。
この曲は、リリース直後に韓国国内の音楽チャートを総ナメしたことは言うまでもなく、世界59地域のiTunesで1位を獲得し、1年余りが経った2021年7月16日には、世界最大級の音楽ストリーミングプラットフォーム「Spotify」で1億5000万ストリーミングを達成した。
『eight』は、IUのクリアな歌声を生かしつつ、自身のラップパートをアクセントとして添え、耳馴染みの良いポップミュージックに仕上げている。ヒップホップだけではない、SUGAの音楽的な幅を感じさせる一曲だ。
なおIUとの楽曲制作についてSUGAが「とてもスムーズな作業だった。僕がビートを作って送ると、向こうからメロディーがガーッと返ってきた」と制作秘話を明かすと、IUも「制作過程は本当に快適だった。SUGAさんがトラックを送ってくださって、 私がメロディーを作って送った。そして一気にレコーディングできた」と語っており、多忙なBTSの活動と並行しつつ、トップアーティストを満足させるSUGAの制作能力の速さが際立ったエピソードと言えるだろう。
ほかでは、SUGA自身に“惚れ込んで”オファーしたというエピソードもある。それは、BTSの『Boy With Luv』にフィーチャリングとして参加したHalseyだ。
彼女はAgust Dのミックステープに衝撃を受けたと明かしており、「歌詞の翻訳を調べていたら驚き、とても内省的だと思った。内容は精神衛生と内面の混乱に関するものだったが、実生活では本当に静かな男で、私はただただ感動した」と絶賛。
またインスタライブでは、「ユンギは本当に内省的で、私たちがどこにいるのか、私たちが何をしているのかについて、本当に知的な視点を持っている」とし、SUGAの音楽だけではなく、知性、人間性に魅了されたと打ち明けている。
“一流は一流を知る”という言葉があるように、トップアーティスト同士、常人にはわからない領域で共感させるという点もSUGAの魅力の一つと言えるのではないだろうか。
このように、今後も“プロデューサー”SUGAへのオファーは絶えないはずだ。その中でSUGAは誰と手を組むのか気になるところ。そしてビルボードの上位にBTSだけではなく、“SUGA”の名も見かける日も、そう遠くないのかもしれない。
(文=高 潤哲)
前へ
次へ