AIが韓国芸能界を震撼させている。
AI技術の急速な進歩は利便性をもたらす一方で、犯罪への“参入障壁”を著しく下げた。被害は社会全体へと拡大している。
まずは大物俳優のケース。慶尚南道・密陽(ミリャン)に住む50代の女性Aさんは、TikTokのDMで接触してきた人物とカカオトークで会話を続けるうちに、『イカゲーム』で知られる俳優イ・ジョンジェを名乗る詐欺に6カ月間も巻き込まれたという。詐欺犯はAIで生成したイ・ジョンジェの偽の写真や偽造身分証を提示し、「直接会わせてあげる」と騙して繰り返し金銭を要求したとされている。
続いて俳優イ・イギョンも、AIによる合成物の被害者となった一人だ。ドイツ人を名乗る人物が、SNSやブログ上にイ・イギョンのものとされるアカウントとの“卑猥な会話”を投稿し、波紋が広がった。翌日には捏造であることが明らかになったものの、デマによる被害はすでに拡散していた。
これら2つの事件に共通するのは、世間に広く知られた芸能人の名前と顔を悪用した犯罪だという点だ。AIが生成した偽の証拠がプラットフォーム上で“ファン心理”を惑わせ、合成写真や偽身分証によって信頼性を装っていた。その精度は日々進化している。
このようなAI犯罪が横行するなか、被害を受けた芸能人の所属事務所は口を揃えて警告する。「アーティストが金銭・口座振込・支援を求めることは絶対にありません。非公式アカウントや個人メッセンジャーでの接触はすぐに中断し、金銭の要求が含まれる場合は詐欺の可能性を最優先で疑ってください」と注意を呼びかけている。
今後、AI技術はさらに精巧化していくだろう。イ・ジョンジェやイ・イギョンの事例は、まだ序章にすぎない。利便性と危険性を孕むAIが日常生活に浸透している現代において、二次・三次被害は日常的に起こり得ることなのだ。ファン一人ひとりの警戒心が、これまで以上に求められていることは間違いない。
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