Netflixで好評配信中の韓国ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』の人気が衰えることを知らない。
3月28日から配信がスタートした以来、「今日の総合TOP10」でこのタイトルを見ない日はない(4月30日付で5位)。
『梨泰院クラス』は以前にも紹介した通り、韓国でも初回から高い視聴率と話題性をキープし続け、社会現象を巻き起こした。
原作漫画の力強いストーリーと魅力的なキャラクターたちを忠実かつ上質に映像化し、原作ファンのみならず数多くの視聴者を虜にしていたが、個人的に目を引いたのが『梨泰院クラス』で多くのスターが誕生したことだ。
主人公パク・セロイを演じたパク・ソジュンは『キム秘書はいったい、なぜ?』などドラマのヒット作が多い人気俳優だが、『梨泰院クラス』では韓国映画界で活躍してきた新進女優たちがキラリと光った。
例えばパク・セロイに想いを寄せるチョ・イソ役を演じた女優キム・ダミだ。韓国では最終回直後に彼女が公開した写真が記事になるほど、『梨泰院クラス』で人気者になった。
【写真】『梨泰院クラス』キム・ダミ、パク・ソジュン超接近ショットで“イソと惜別”
2018年に1500人を超えるオーディションで映画『The Witch/魔女』の主演を勝ち取り、強烈な存在感を放ちながら各種映画賞で新人賞を総なめにした彼女が、連続ドラマ初出演として『梨泰院クラス』にキャスティングされたとき、原作の熱烈ファンからは不満の声もあった。
だが、キム・ダミはそんな不満の声を演技と存在感でシャットアウト。韓国放送時は主人公パク・セロイを演じたパク・ソジュン(3位)や恋敵のオ・スア役を演じた女優クォン・ナラ(8位)を差し置いて、出演者の話題性部門で堂々の1位になった。
キム・ダミ演じるイソが“オンニ(姉さん)”と慕うマ・ヒョニ演じたイ・ジュヨンも、一躍、注目の存在となった。
韓国ドラマファンにはあまり馴染みのない顔だが、映画『Jane/夢のジェーン』(チョ・ヒョンフン監督)や、『春の夢』(チャン・リュル監督)など、韓国のインディーズ映画に多数出演、第23回釜山国際映画祭ではイ・オクソプ監督の『マギー/Maggie』で「今年の俳優賞」を受賞している。
そんなイ・ジュヨンが演じたのがトランスジェンダーであるマ・ヒョニなのだが、そのキャラクターに対する韓国の反応も興味深かった。
ここからは少々ネタバレになってしまうが、ドラマ序盤のことなどでご理解いただきたい。
ドラマの序盤で主人公パク・セロイ(パク・ソジュン)が経営する居酒屋『タンバム』(甘い夜という意味)の料理長マ・ヒョニ(演者イ・ジュヨン)が、実はトランスジェンダーであることが発覚する。
梨泰院といえば、ソウルきってのLGBTにフレンドリーな街としても有名だ。
ドラマはその梨泰院を舞台にしているのだからトランスジェンダーがいても不自然ではなく、劇中では韓国芸能界で初めてゲイであることを公表したホン・ソクチョンも“梨泰院の顔”として何度か登場するのだが、同じく『タンバム』で働く仲間たちが梨泰院のナイトクラブに出掛けたときに、ふとしたきっかけでヒョニがトランスジェンダーであることが判明する。
ただ、劇中で居酒屋の店員たちが気まずい空気になったり、「知られたらイヤがるお客もいるはず。クビにしたほうがいい」という意見が出たりすることからもうかがえるように、韓国社会ではまだまだLGBTに対する目が厳しい。
テレビに出演するLGBTの芸能人もホン・ソクチョンなどごくわずかしかおらず、世間的に馴染みの薄いと言ってもいいだろう。
『梨泰院クラス』ではそんなトランスジェンダーのキャラクターが登場するのだから、さまざまな声も寄せられるかと思ったが、取り越し苦労に過ぎなかった。
特に第12話のエンディングで、料理対決番組に出演したマ・ヒョニが自らカミングアウトするシーンが放送されたあとは、「カッコ良すぎる」「感動した」という声が多かった。
筆者自身も心が震え特に印象的なシーンだったが、『梨泰院クラス』でマ・ヒョニ役を熱演したイ・ジュヨンもキム・ダミ同様、今や注目の的となった。
また、『タンバム』のイケメン担当でイソに片思いしているチャン・グンスを演じた若手俳優キム・ドンヒも、『梨泰院クラス』でさらにその可能性を示した新鋭だ。
2019年の韓国に旋風を巻き起こしたドラマ『SKYキャッスル』で若手スターの仲間入りを果たし、『梨泰院クラス』でも確かな演技力を披露したキム・ドンヒは、4月27日から配信開始となったNetflixオリジナルドラマ『人間レッスン』ではついに主演を務めている。
『人間レッスン』は、金のために罪悪感なく犯罪の道を選んだ高校生たちが、取り返しのつかない過酷な代価を払う過程を描いた学園サスペンスで、キム・ドンヒのほかにも、チョン・ダビン、パク・ジュヒョンなど若手スターたちが多数顔を揃える。『梨泰院クラス』に続いて、新しいスター誕生の予感もさせるほどだ。
いずれにしても韓国はもちろん、今や日本でも大ヒットしている『梨泰院クラス』。これまで韓流スターと言えばテレビやレンタルDVDから人気に火がつくケースが多かったが、今後はNetflixのような動画配信サービスが新たなスター誕生の舞台になるかもしれない。
(文=慎 武宏)
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