異例のことだ。日本人選手によく見られた光景が、韓国人選手であるイ・ジョンフにも起きている。
かつての大谷翔平（28、ロサンゼルス・エンゼルス）やダルビッシュ有（36、サンディエゴ・パドレス）、松坂大輔（42、引退）のように、MLBスカウトがイ・ジョンフの行くところに集まる。
2月17日（日本時間）、米アリゾナ州ツーソンのキノスポーツコンプレックスで行われた韓国代表とNCダイノスの練習試合には、ニューヨーク・ヤンキース、ニューヨーク・メッツ、ロサンゼルス・ドジャース、ボストン・レッドソックス、シカゴ・カブス、テキサス・レンジャーズ、デトロイト・タイガース、カンザスシティ・ロイヤルズのスカウトが訪れた。今月初めのキウム春季キャンプ当時は2～3人程度だったスカウト規模が2倍以上に増えた。
ただ、イ・ジョンフ本人はスカウトたちの自分への関心に意味を置かなかった。
イ・ジョンフは「スカウトの方々が訪ねてくださっていますが、あまり意識していません。自分の評価はもう終わったという話もあるそうです。ただ単に、どうしているのか確認程度のことをされているのではないかと思います」とし、「むしろ自分より（コ・）ウソクや（チョン・）ウヨン、（キム・）ヘソンに興味を持っているのではないでしょうか。キウムキャンプのときも話しましたが、WBCは僕のショーケースではない」と言い切った。
続けて、「WBCは自分を知らせる大会ではない。国家代表の選手として、チームが勝利しなければならない大会です。もちろん、スカウトの方々は仕事をしなければならないので、僕や同期、後輩たちを見に来るのは普通のことですが、僕はただ早くWBCの試合に出て勝ちたいという考えしかありません」と伝えた。
すでに多くの準備過程を経たイ・ジョンフだ。オフシーズンの間にはMLBのスーパーエージェントであるスコット・ボラス氏とエージェンシー契約を結んだ。今後、海外進出と関連した業務はボラス・コーポレーションが担当する。
そして、今年1月初めに米ロサンゼルスに渡り、メジャーリーガーが実際に行うトレーニングを事前に経験した。その過程で打撃フォームも修正した。速い球に対処しやすいよう、以前よりも簡潔にスイングが行われている。
「変わった打撃メカニックにどれだけ適応しているのか？」という質問に、イ・ジョンフは「すでに実戦を1度経験しました。投手が投げる球をこの打撃フォームで打ったことがほとんどありません。まだライブという感覚で打撃をしています」とし、「初実戦で良い打球が出ましたし、投手の球もよく見えました。今後の試合では、今回変えたフォームのなかで楽な部分を見つけられるよう、色々なことを試みたいです」と答えた。
イ・ジョンフはWBC特別規定である延長戦にも備えていることを明かした。
彼は「延長無死二塁の状況で打席に入るイメージトレーニングをたくさんしています。状況にもよりますが、無死二塁で上手く打つカッコいい場面を作りたいと考えています。打球をライト方向に放つのは自信があるので、必要ならば進塁打も打ちますが、自らの手で解決したい気持ちもあります」と話した。
目標は明確だ。日本の東京ドーム開催の1次ラウンド、準々決勝を突破し、準決勝以降が行われるアメリカに戻ってくることだ。ベスト4に進出し、フロリダ州マイアミでWBC準決勝に臨む姿を描いている。
だからこそ、1次ラウンド初戦のオーストラリア戦で必ず勝利することを誓った。イ・ジョンフは「最大の目標はアメリカ行きです。ただ、まずは目先のオーストラリア戦から勝利しなければならない。今はオーストラリア戦だけを考えている」と覚悟を固めた。
（構成＝ピッチコミュニケーションズ）
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◇イ・ジョンフ プロフィール
1998年8月20日生まれ。日本・愛知県名古屋市出身。身長185cm。韓国のプロ野球選手。キウム・ヒーローズ所属。父親は1998～2001年に中日ドラゴンズに在籍したイ・ジョンボム（李鍾範）。高校卒業後の2017年にプロデビューし、同年の新人王を受賞。ゴールデングラブ賞（NPBのベストナインに相当）に2018～2022年の5年連続で選ばれており、2022年はシーズンMVPと打撃5冠（首位打者、最多安打、最多打点、最高長打率、最高出塁率）に輝いた。2023年WBC（ワールド・ベースボール・クラシック）に出場予定で、2023シーズン終了後のメジャーリーグ進出を表明している。
