「レベルは高いですよね。日本の選手は古くからアメリカに進出していますし、持続的にトップクラスを維持しています。日本の女子プロは全体的に、ショートゲームとパッティングがうまくて、それが日本選手の共通した長所だというイメージです。
ただ、アメリカには飛ばす選手が多く、それに比べると飛距離の面で苦戦している印象もあります。飛距離は日本人選手だけではなく、韓国を含めたアジア人選手の課題でもありますけどね」
―それでもアメリカで韓国人選手たちは結果を出しています。日本人選手との違いがあるとすれば?
「何でしょうか…。あえていえば、LPGAツアーに対する適応ではないでしょうか。現地に適応するという点において、日本人選手は苦戦しているように見えることが多々あります。この適応というのは技術や体力的なことではなく、精神的な要素、つまりメンタルの部分のことです。
例えば韓国人選手の場合、アメリカの生活に適応しようと必死で食らいつきます。言葉も風習も食文化もすべて、とにかく“わからないことは学んでやろう”という気持ちでぶつかります。答えは簡単。そうしなければ、生き残れないからです。生き残るために、なんでもするわけですね。そういうメンタルでツアー生活を送っている。
そういう面でいうと、アメリカにやってきた過去の日本人選手の場合は、新しい文化と接することに対して、やや遠慮気味というか臆病になっているのかなぁという印象があります。
英語ができない、食文化も合わない、移動も多い、距離も飛ばない。そういったストレスが重なるせいかもしれませんが、日本人選手も韓国人選手のように、もっとガツガツとふてぶてしくアメリカという国に食らいついても良いかもしれませんね。ただ、最近は日本人選手にもそういった強さを持つ選手が出でいるじゃないですか」
―誰のことですか。
「まだ19歳の…えーっとたしか名前はナサ。そう、ナサ・ハタオカ(畑岡奈紗)。この前、彼女のゴルフを見ましたが、私がこれまで見てきた日本人選手とは明らかに違いました。
実力もあるし、現地に適応しているようにも見えますし、何よりも彼女が持っているエネルギッシュなところがいい。体格は小さいですが、とてもパワフルでエネルギッシュ。個人的に、これからを期待していますし、注目している選手です」
―その畑岡選手を始め、近年、日本では1998年から1999年生まれの若手が頭角を現しています。“黄金世代”といわれています。韓国でも“ミレニアム世代”が台頭していますが、そういった若手の出現についてどう思いますか。
「とても良い現象ではないでしょうか。宮里藍選手の功績も大きいんでしょうね。何事もそうですが、第1世代で終わってしまえば、それはブームや一時の盛り上がりで終わってしまいます。極端な言い方ですが、第1世代で終われば歴史も終わってしまうわけです。
ただ、継続的に新しい可能性や若い選手が出てくることによって道は開かれ、さらに発展するための進むべき方向も見えてくるものじゃないですか。
韓国も私で終わらず、その後も続いた後輩たちが出てきた。彼女たちが今では子供たちが目指す夢になっています。日本も宮里藍選手に刺激を受けて出た芽が大きく育てば、その実に憧れて新しい芽がどこかで芽生えるはずです。
そういう好循環の繰り返しが、女子ゴルフ全体を盛り上げると信じています」(つづく)
(文=慎 武宏)