“横浜が生んだテクニシャン”の芸術的フリーキックが、再び蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)を危機から救った。元日本代表MF天野純(30)のことだ。
【動画】相手GK動けず…天野純が決めた“芸術的”フリーキックがコレ
天野は4月9日、ホームの蔚山文殊サッカー競技場で行われたKリーグ1(1部)第9節の大邱(テグ)FC戦で、1点ビハインドで迎えた後半9分に絶妙な左足フリーキックで同点弾を決め、3-1の逆転勝利に大きく貢献した。
去る5日にアウェーで行われた前節の済州(チェジュ)ユナイテッド戦でも、試合開始4分で直接フリーキックを叩き込んでいた天野。
2試合連続でフリーキックでの得点を挙げるとともに、自身4ゴール目でチーム得点王タイに浮上した。
天野の左足が試合の流れを変えたといっても過言ではない。
蔚山現代は前半7分、ブラジル人FWゼカ(25)のPKで大邱FCに先制を許すと、以降は相手の5バックの守備をこじ開けられず、1点リードを許したまま前半を終えていた。
すると後半、天野がペナルティエリア手前で相手に足をかけられ、絶好の位置でフリーキックを獲得。これを天野自らキッカーを務めると、相手GKの逆を突くファーサイドにボールを蹴り込み、見事にゴールネットを揺らした。
天野は前半2分のフリーキックでも直接ゴールを狙い、惜しくも枠を外れていた。それでも、重要な局面でのセットプレーで自身の真価を証明してみせた。
天野は後半31分の逆転の場面でも存在感を発揮した。
当時、ペナルティエリア手前にいた天野は、相手DFラインの背後に抜け出そうとした韓国代表FWオム・ウォンサン(23)にスルーパスを送る。その後、オム・ウォンサンがドリブルしたボールが少し流れると、これに飛びついたジョージア代表MFヴァレリ・カザイシュヴィリ(29)が右足のアウトサイドで流し込み、逆転となるゴールを決めた。
結局、蔚山現代は後半ロスタイムにオム・ウォンサンがダメ押しのゴールを決め、2点差での勝利に成功。開幕から9試合連続となる無敗(7勝2分)で勝ち点を23に積み上げ、2位の仁川(インチョン)ユナイテッド(勝ち点18)と5ポイント差で首位の座をキープした。
今季開幕直前、蔚山現代からドイツ2部シャルケへレンタル移籍で去った韓国代表MFイ・ドンギョン(24)の代替者として、横浜F・マリノスからレンタル移籍で加入した天野は、チームの新たなエンジンの役割を果たしている。
左足を駆使した個人戦術と良質なパスはもちろん、ゴール前ではフィニッシャーの役割をまっとうする。
天野の横浜FMユース時代にトップチームでフィジカルコーチを務め、今季から蔚山現代の首席コーチとしてホン・ミョンボ監督を支える池田誠剛コーチは、「セットプレーの一発」を強調し、チームに天野の獲得を推薦した。その期待通り、天野は済州や大邱FCを相手に驚くべき軌跡のフリーキックで得点を生み出した。
在日コリアンで本紙『スポーツソウル』の日本版編集長を務める慎武宏氏も、蔚山現代対大邱FCの試合を現地で見守りながら、「横浜F・マリノスユース出身の天野は、トップチームで長い間活躍した有名な左足キッカー、中村俊輔の“後継者”とも呼ばれた。過去には中村が着用した背番号10も引き継ぐほど、期待は大きかった」と語った。
天野は横浜FMで長く主力としてプレーした後、2019-2020シーズンにはベルギーのロケレンにレンタル移籍し、自身初となる欧州の舞台に挑戦した。しかし、新型コロナウイルス感染症によってリーグ戦が中断し、チームも経営悪化で破産したことで、横浜FMに早期復帰した。
その後、昨季までは主にジョーカー的な役割として活躍を続けていたが、今季に再び海外挑戦を決断した。横浜FMファンのなかには天野の韓国移籍を惜しむ人もいたほどだ。
いずれにせよ、天野はJリーグよりもさらにタイトで激しいプレッシャーで知られるKリーグの舞台で、飛び抜けた技術で相手を圧倒し、キャリア第2の全盛期を描いている。
天野は大邱FCの試合後、記者会見に登場すると、「韓国に来る前からKリーグは(日本よりも)さらにタイトで、プレッシャーも強いと思っていた。だからといって、そこで簡単に倒れているようではダメだと思っていて、強い気持ちをもって適応しようと努力している」と伝えた。
また、「海外リーグに来たとは思えないほど、(ガンバ大阪などJリーグで活躍した)キム・ヨングォンをはじめチームには日本語が上手な選手が多い。最近では(韓国代表右サイドバックの)キム・テファンに食事に招待され、“これからもしっかりサポートするから”と激励してくれた。とてもありがたく感じている」と、自身のKリーグ適応に配慮してくれるチームメイトにも言及していた。
■【動画】蔚山現代の元浦和レオナルド、絶妙トラップからの右足ボレー
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