「自分の体に集中することが秘訣ではないでしょうか」
年齢も30代後半に差し掛かったが、パフォーマンスは依然として不変だ。プロ18年間で通算64勝を記録している韓国女子ゴルフ界の“生きるレジェンド”申ジエ(35)のことだ。
そのひたむきな地道さのおかげで、彼女をロールモデルとする選手は多い。
中学3年生にしてドライバーで285ヤードを飛ばすパク・ソジン(15)も、「選手生活を長く続けたい。申ジエ先輩がロールモデル」と話していた。
申ジエは10月22日、京畿道(キョンギド)坡州(パジュ)市のソウォンバレーCC・ソウォンヒルズで行われた米国女子ツアー「BMW女子選手権」(賞金総額220万ドル=約33億円)の最終ラウンドで6バーディ・3ボギーを記録した。
最終結果は通算12アンダーの「276」で5位タイ。同順位のイ・ジョンウン6(27)らとともに、同大会に出場した韓国人選手の最高成績を記録した。
なお、日本勢は10位タイの古江彩佳(23)が最高位。そのほかは笹生優花(22)が34位タイ、畑岡奈紗(24)が41位タイ、渋野日向井子(24)が56位タイと続いた。
「序盤に流れを作ることに失敗した」と悔やむ申ジエだが、「優勝こそ逃したが、久しぶりに韓国国内の舞台で大会を戦ってみて、また来たいと思った」とし、「今大会で65勝目には失敗したが、70勝以上を達成するまで一生懸命ゴルフを続けたい」と明るく笑った。
多くの女子ゴルファーは30代半ばに引退を準備するのが一般的だが、申ジエは「長く選手生活を続けたい」と語った。
競争力を失えばロングランはできない。ただ、申ジエは依然としてトップクラスの技量を維持している。
今年は日本を拠点としつつ、米国女子ツアーで4大会に出場しているが、うち3大会で準優勝含むトップ10入りを果たしている。さらにその中で2大会はメジャー大会で達成したものだ。申ジエのパフォーマンスがどれだけ優れているかがわかる。
女子ゴルフ世界ランキング20位以内の選手で最高齢という言葉に「どういうわけかそうなった」としつつも、「もっとゴルフが上手くなりたい」と若手時代から変わらぬ情熱を示した。
地道さを維持する秘訣には「休息」を挙げた。
プロ選手だからこそ、日常の80~90%の割合をゴルフが占める。申ジエは「ゴルフをするときと休むときで明確に区分することが重要だ」という。
もっとも、むやみに休むわけではない。「仕方のない部分もある。プロ選手だから、ゴルフの考えを完全に払拭することは難しい。ゴルフと関係のないことに大きく気を遣う余力は正直ない」としながらも、「だからこそ体に集中する」と話した。
休息が必要となれば体を最大限休め、疲労が溜まったらマッサージなどで次のステップを続ける準備をする。
トレーニングを多く積み重ねることはもちろん重要だが、その分だけ「しっかり休むこと」も並行できれば疲労はたまらないというのが申ジエの哲学だ。
「絵画展示会やミュージカル、コンサートなどを観覧してリフレッシュする」と申ジエは言う。絵や音楽からインスピレーションを受けるときもあれば、ねじれた考えや詰まった機運を破るときもあるという。
「ステージ上に立つ俳優やアーティストの公演を見ると、“どれだけ多くの努力をしてきたんだろう”と思う。多くの人の前で公演をするためには、華やかな舞台の裏で多大な努力をしなければならない」とし、「そのような方々を見ながら、“自分ももっと頑張らなければならない。自分の舞台(フィールド)で最高の姿を見せることが自分の姿だから、最善を尽くさなければならない”と感じる」と強調した。
ストレスを解消し、新しいモチベーションを得る方法を知っていることもまた、地道さを維持する秘訣だ。満たすものがあれば空ける過程も必要だが、申ジエはこのバランスを良く合わせている。
申ジエは「多くの大会に出ているわけではないが、時々米国女子ツアーに来れば後輩たちを通じてまたインスピレーションを得る」とし、「シーズンが終わる前にもう一度米国女子ツアーの大会に出場する」と話した。
申ジエは次戦、来る11月2日から5日にかけて茨城県の太平洋クラブ美野里コースで行われる米国女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」に出場する。
「トレーニングコースであり、日本ツアーで準優勝した場所でもある。準優勝の悔しさを今年の米国女子ツアーで癒したい」と抱負を語った申ジエ。プロ通算65勝目に向けた“生きるレジェンド”の挑戦はとどまるところを知らない。
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