8月25日、埼玉スタジアム2002でアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント準決勝が行われ、全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースが浦和レッズにPK戦の末に敗れた。
前後半を1-1で終えて延長戦に突入した試合は、同後半11分にハン・ギョウォンのゴールで全北現代が一時勝ち越しに成功。しかし同20分、キャスパー・ユンカーの再同点弾で浦和に2-2と追いつかれ、勝敗はPK戦で決することになった。
PK戦で先攻を取った全北現代だが、1人目のキム・ボギョン、2人目のイ・スンギが立て続けに失敗。それでも3人目のパク・ジンソプが初めて成功させ、続く浦和3人目ダヴィド・モーベルグのシュートをイ・ボムスがストップする。
しかし、4人目キム・ジンスのキックは西川周作の逆を突くも右ポストに当たって外れてしまう。そして最後、江坂任に冷静にシュートを沈められ浦和にPKスコア1-3で敗戦。全北現代は今季ACLをベスト4で去ることになった。
「ピッチでプレーしたすべての選手が全力を出し尽くした試合だったと思います。サッカーファンの方々に良い試合をお見せすることができて本当に良かったです」
試合後、穏やかな表情で激闘を振り返ったのは全北現代の“ワンクラブマン”ことチェ・チョルスンだ。
チーム最年長35歳のチェ・チョルスンは、2006年のプロデビューから現在まで、兵役のため軍隊チーム尚州尚武(サンジュ・サンム/現・金泉尚武)でプレーした1年半を除き、全北現代一筋を貫いているクラブレジェンド。
全北現代の2度のACL優勝(2006年、2016年)を、現在のチームで唯一経験している選手でもある。過去のACLでは尚州尚武在籍時の2013年大会を除き、2007年大会準々決勝と2019年大会グループステージの対浦和戦で全4試合に出場した。
「浦和レッズが昔から強いチームであることは知っていました。埼玉にたくさんのファンの方が来ていただいたなか、お互いに良い試合ができたのではないかと思います」
この日の試合では、延長前半7分に足を痛めたメン・ソンウンに代わって投入されたチェ・チョルスン。交代時にキム・サンシク監督とどのような話を交わしたのか聞くと、「“3番の選手(伊藤敦樹)を警戒して中盤のバランスを取ってくれ”と伝えられたので、守備に重きを置いてプレーしました。それと、“試合がPK戦まで進む可能性があるから、最後までチームを集中させるように”とも伝えられました」と明かした。
今季のチェ・チョルスンは国内でKリーグ1(1部)11試合の出場にとどまっており、直近ではBチームでK4リーグ(セミプロ、4部相当)の試合に出場したこともあった。今回の決勝トーナメントも1回戦、準々決勝でそれぞれベンチ入りするも出場なしに終わっていたが、準決勝の大一番でピッチに送り出された。
しかし、チームはPK戦であと一歩及ばなかった。最初にPKを外したキム・ボギョンは試合終了後も動くことができず、顔を覆い涙を流していた。
「試合が終わった後、まずは全員にお疲れ様と伝えました。そして、“ACLは今日が最後の試合になったが、まだ自分たちにはKリーグもFAカップも残っている。韓国に戻って良い戦いができるようにもう一度頑張ろう”ということは伝えました」
「ボギョンとはまだしっかり話ができていないですが、すごく悔しがっている様子でした。でも、選手として(PK失敗は)経験し得ることですし、ボギョンは経験豊富な選手です。早く後悔の念を断ち切って、これからの試合でもっと活躍してくれると願っています」
全北現代は18日の1回戦にはじまり、22日の準々決勝、そして今回の準決勝すべてで延長120分を戦った。中2~3日の間に計360分プレーした形だ。
準決勝では後半終盤以降に足を痛める選手が続出するなど、まさに限界とも言える状態で試合を戦っていた。
「選手たちは本当に苦しかったと思いますが、それでもピッチ上で闘志と積極性を発揮して勝ち上がってきました。チームの雰囲気も良く、最後も勝利で終えられれば良かったのですが、そうすることができず残念さが残ります。まずは夜遅くまで応援してくださったファンの方々に感謝の気持ちを伝えたいです」
入場者数2万3277人を記録した埼スタは、全北現代サポーターのエリアを除き観客席が真っ赤に染め上がった。全北現代にとっては“完全アウェー”で戦った120分間だったが、チェ・チョルスンに最後、浦和ファン・サポーターの大声援のなかプレーした感想を聞くと、次のように語っていた。
「楽しく試合ができたと思います。あれだけ多くのファンが来てくださった試合も久しぶりなので、いつも以上に楽しくプレーをすることができました。自分はあのような雰囲気のなかでサッカーができることに面白さを感じています。とても幸せで、本当に素晴らしい経験でした」
(取材・文=姜 亨起)
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