「期待していたのに残念だ」
第20代韓国大統領選挙に出馬した与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補の落選に、国内サッカー界、特にプロサッカー関係者の大部分が「残念だ」という反応を示している。
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イ・ジェミョン候補は政界では珍しい“サッカー界をよく知る人物”として通っている。というのも、かつて2010~2018年に城南(ソンナム)市長を務めた際、地方自治体によって運営される城南FCのオーナーを務めた経験があるからだ。
そして、城南FCオーナーという役職も、形式的な肩書きに使われたわけではなかった。
当時、イ・ジェミョン候補はクラブを全面的にバックアップし、チームのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)進出を大きくサポートした。ホームゲームは毎試合欠かさず現地観戦し、アウェーゲームにも訪れたこともあった。時には審判の判定に積極的に抗議するなど、熱狂的な姿が反響を呼んだこともあった。
イ・ジェミョン候補は京畿道(キョンギド)知事になった後も、京畿道傘下のチームに関心を持ち続け、財政的な支援を行った。相対的にスポーツから疎外される京畿道北部に、新たな地方クラブを創設するという話が出回るほど、プロサッカーに対する関心が高かった。それだけKリーグとは縁の深い人物だったわけだ。
今回の大統領選で当選した保守系野党「国民の力」のユン・ソギョル(尹錫悦)候補はプロサッカーとまったく縁のない人物なだけに、その差はさらに目立つ。
このため、イ・ジェミョン候補の当選を期待するサッカー人は多かった。Kリーグの環境やシステムを全般的に理解しているイ・ジェミョン候補が大統領になれば、プロサッカー界も政府の関心を受け、さらに発展できるという観測があったのだ。
サッカー界のとある関係者は、「少なくないサッカー関係者たちがイ・ジェミョン候補の当選を望んでいた」とし、「これまでイ・ジェミョン候補はKリーグに関心を示してきており、実質的な支援をしていただいたこともある。城南市長、京畿都知事を歴任した歩みを見ると、理念を離れ、サッカー関係者の支持を受けるには十分だった」と語った。
また別の関係者も、「イ・ジェミョン候補が当選すればKリーグにも良い影響が及んだはずだが、残念だ。個人的な意見かもしれないが、Kリーグにとっては残念な結果だ」と述べた。
さらに大きな問題は、今回の大統領選の結果が、来る6月の地方選挙に影響を及ぼしかねないという点だ。一般的に、有権者は新しい大統領に力を与えるために、地方選挙でも同じ党の候補を推す場合が多い。
仮にユン・ソギョル次期大統領が所属する「国民の力」が地方選挙で圧勝を収めるとなれば、地方クラブの多いKリーグにも影響が及ぶしかない。
Kリーグ1・2部では現在、1部6チーム(金泉尚武、江原FC、仁川ユナイテッド、大邱FC、城南FC、水原FC)、2部7チーム(富川FC 1995、慶南FC、FC安養、金浦FC、光州FC、忠南牙山FC、安山グリナース)の計13チームが地方自治体によって運営されている。
1部6チーム(全北現代モータース、蔚山現代、FCソウル、水原三星ブルーウィングス、済州ユナイテッド、浦項スティーラース)、2部4チーム(大田ハナシチズン、釜山アイパーク、ソウルイーランドFC、全南ドラゴンズ)の計10チームの企業クラブよりもその比重は大きい。
地方自治体の首長はプロサッカーチームのオーナーも担当するため、直接的な影響を受けやすい。
何より、伝統的に「国民の力」所属のオーナーはKリーグに友好的ではなかった。選挙でプロサッカーチームの解体を公約に掲げた候補もいたほどだ。また、政治表現が厳しく禁じられているスタジアム内において、露骨に選挙遊説をしてチームから罰金を科された候補もいた。
対して「共に民主党」所属のオーナーたちは、プロサッカーチームの運営を地域のスポーツ福祉と考えて積極的に支援を行ってきた。イ・ジェミョン候補だけでなく、「共に民主党」所属の多くの自治体首長が、Kリーグと深い関係を結んでいる。
クラブオーナーの党籍が変われば、監督、さらにはクラブ首脳部のポストが危険になる可能性もあるという点がサッカー界で憂慮されている。
新たな自治体首長はこれまで各機関を見てきて、既存の人物を排除し、自身に近い人物を配置することに慣れてきた。これはサッカーチームにも例外ではない。
実際、地方選挙以降には一部の地方クラブが人事問題で頭を悩ませる。仮に前半期の成績が良くなければ、交代の理由はさらに明確になる。
地方選挙が行われる6月以降、Kリーグにも厳しい風が吹きかねないという心配の声が挙がるのも、このような背景のためだ。イ・ジェミョン候補の落選をプロサッカー界が残念に思う理由はここにある。
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