“バルセロナ下部組織出身”ペク・スンホの復帰をめぐるドロ沼…選手・古巣・新天地が犯したミスは?

2021年03月31日 サッカー #Kリーグ

円満に解決できたはずの問題が複雑化した。ペク・スンホ(24)、水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングス、全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースのいずれも上手くいかなかった事件だった。

移籍市場の終盤を熱く盛り上げた“ペク・スンホ論争”は、全北現代がペク・スンホを獲得することで終わった。全北現代は3月30日、ドイツ2部のダルムシュタットからペク・スンホを獲得したことを発表した。

1997年3月17日生まれのペク・スンホは24歳。小学生のころにバルセロナにスカウトされたカンテラ育ちで、かつてはバルセロナBで“ネクスト・シャビ”と将来を嘱望されていた中盤の選手だ。

しかし、バルセロナでトップデビューを果たせず、2017年にジローナへ移籍。2019年からドイツ2部のダルムシュタットでプレーしていたが、今シーズンは出場機会を減らしていた。

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ペク・スンホ

最終的にペク・スンホは全北現代の選手になったわけだが、葛藤はまだ終わっていない。

水原三星が過去に支援した留学費に対し違約金14億2000万ウォン(日本円=1億4200万円)という無理な金額を要求し、ペク・スンホ側はこれを断った。

結局、双方の争いは法廷に持ち込まれることとなった。

ペク・スンホ、疑いの余地のない失策

大前提なのは、今回の事件の原罪は明らかにペク・スンホ側にあることだ。

ペク・スンホは去る2010年、水原三星から3億ウォン(約3000万円)という巨額の支援金を受け取り、代わりに国内復帰時は無条件で水原三星に加入することを約束した。11年前の物価や当時10代だったペク・スンホの年齢を考慮すれば、3億ウォンは決して少なくない金額だ。

それでも、ペク・スンホはこの約束を破って先に全北現代と交渉し、移籍直前まで迫っていた。水原三星の関係者が「裏切り」という言葉まで使って激しく反応するのも当然だ。

さらには、ペク・スンホ側が全北現代に過去の契約について正確に知らせなかったことも大きな混乱をもたらした。ペク・スンホ側が最初からしっかりと対応していれば、事はここまで大きくならなかったはずだ。

ペク・スンホ側が過ちを犯したことに対する疑いの余地は、事実上、まったくないと考えても良い。

水原三星、無理のある感情任せの対応

最初こそ水原三星も明確な被害者だった。問題はそれ以降の対応方式だ。

水原三星はペク・スンホを受け入れる余力がなかった。ならば、問題を解決することに集中すべきだった。適切な金額を受け取って解除するか、でなければどのような方法であれ資金を確保して獲得することが合理的な選択だった。

ただ、水原三星はいずれの結論も望まなかった。そこで最初に提案したのが、ダルムシュタットへの復帰だった。

しかし、ダルムシュタットに復帰したところで、すでに出場機会を失っていたペク・スンホの居場所はない。だからこそ、移籍市場が終わりかけている時点でのその提案からは「絶対に全北現代に行かせたくない」という水原三星の意志が感じられた。

水原三星ブルーウィングス

加えて、水原三星はペク・スンホ側に支援した留学費3億ウォンに対し14億2000万ウォンの違約金を要求した。事実上、受け入れることのできないような金額だ。結局は「選手の行く手を阻む」と宣言したも同然の行為である。

確かにペク・スンホ側は過ちを犯したが、14億2000万ウォンの違約金を要求されるほどの過ちだったかは考えてみる必要がある。窃盗罪を犯した人ならば、それに見合う代価を支払えばよい。窃盗被害者が腹を立てたからといって、殺人罪に相当する量刑まで要求するわけにはいかないだろう。

また、法的に見ても、水原三星が有利な立場にあるわけでもない。

サッカー界の事情に詳しいとある法曹人は、「水原三星が提示した違約金が法廷で受け入れられる可能性は0%に近い。元金と法定利子程度は回収できるだろうが、ペク・スンホの移籍金を違約金に算定したのは無理がある」と指摘した。ほかにも、複数の法曹人が同じ脈絡の話をしていた。

しかも、水原三星はペク・スンホが(水原三星)入団の意思を明確に示してからも、正式な獲得オファーをしなかった。前述の法曹人は「水原三星が入団を事実上断ったという部分は論争の余地がある。紛争が起こる場合、むしろ水原三星に不利に作用する可能性もある」と述べた。

一連の過程を見ると、水原三星が感情的になって無理に対応したという印象をぬぐい切れない。

地方のとある企業クラブの関係者は、「水原三星が腹を立てる部分も十分理解している。それでも仕事は仕事だ。獲得できないのであれば、適切な金額を受け取って送り出すことが筋だ。意地悪をするのではなく、問題を解決するために努力しなければならない。かつてリーディングクラブだったチームの対処が非常に残念だ」と指摘した。

傍観して誤解された全北現代

全北現代はペク・スンホの獲得を進め、これによって選手が国内に入っていた状況だったため、獲得を敢行した。“選手生命を脅かすことはできない”という責任感から始まった毛決定だ。一歩間違えれば路頭に迷うことになったペク・スンホにとっては救いの手だろう。

ただ、Kリーグの複数関係者は全北現代の消極的な態度が残念だと指摘している。

ペク・スンホ側と水原三星が激しく対立している間、全北現代は事件をただ見守ってばかりいた。双方の交渉が最終的に円滑に行われない場合、獲得を念頭に置いていたのであれば、幹部同士でも疎通すべきだったのではないかという見方だ。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)全北現代モータース

全北現代とペク・スンホが“出来レース”をしていたと疑われているのもこのためだ。全北現代の「待つだけ待った」という立場も理解できるが、根本的に被害者である水原三星が疑わざるを得ない余地を残したわけだ。

別の企業クラブの関係者は、「全北現代はどんな形であれ柔軟に介入し、事件が破局に至らないようにすべきだったのではないか。ペク・スンホと水原三星間の1対1で線を引いたのは、水原三星の立場としては残念だろう」と述べた。

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