シンプルな飛ばし屋というわけではなく、状況に合わせたクレバーなバッティングが光っている。
韓国プロ野球新人ドラフトの全体75位で指名を受けたキム・ゴンヒョン(25、KTウィズ)は、シーズン開幕前のキャンプからその実力を遺憾なく発揮し、実戦的なパフォーマンスで注目を集めている。
彼は、前KIAタイガース監督、現読売ジャイアンツ2軍ヘッドコーチ、キム・ギテ氏の息子として知られているが、親の七光りという言葉を意に介さないほどの活躍を見せている。
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所属球団のKTウィズ関係者はすでに度肝を抜かれているようだ。キム・ゴンヒョンはスプリングキャンプ期間中、チーム内最速の打球速度を記録したという。
KTウィズの戦力分析班は、打撃練習ごとに打者の打球速度を測定しているが、キム・ゴンヒョンは平均速度が157.6キロで1位とこのことだ。2位は韓国プロ野球で最高打球速度を誇るカン・ベクホ(22、KTウィズ)の156.7キロだ。
アメリカの大学を卒業して韓国プロ野球界に参戦したため年齢的には“オールドルーキー”と言われているが、長距離砲としての潜在能力を明確な数字として叩きつけた。
打球がただ単純に強烈なわけではないのが、ほかのルーキーとは一線を画している。キム・ゴンヒョンは3月9日、蔚山文殊(ウルサン・ムンス)球場で行われたLGツインズとのオープン戦に5番ライトとして先発出場し、3打数1安打2打点を挙げている。
記録上では1本のヒットに目が行きがちだが、彼の真価は2打点を挙げたほか2打席にあった。キム・ゴンヒョンは1回裏1死2、3塁の状況で迎えたこの試合初打席で、落ち着いてセンターへの犠牲フライを放っている。得点のチャンスで力みやすい状況にもかかわらず、狙い通りの外野フライで追加点を奪っている。
3回裏の2打席目も印象的だった。1死1、3塁で2ストライクと追い込まれたが、一塁走者がスタートを切ることを念頭に置いてセカンドゴロを打ち、2打点目を挙げた。
そして5回裏、ランナーなしで迎えた3打席目には、走塁でベンチを沸かせた。キム・ゴンヒョンはこの打席でセンター前ヒットを打ったあと、相手外野手がボール処理に手間取っていることを見逃さず、二塁を陥れた。豪快なスイングと状況に合わせたクレバーさが光ったプレーだ。
アメリカのプロスポーツ界では、新人ドラフトで下位指名された選手が成功を収めることを“スティールピック”と呼ぶ。
そして韓国プロ野球界でもそのような事例が存在する。リーグ最高の捕手と呼ばれているヤン・ウィジ(34、NCダイノス)は8巡目指名でプロ入り、優秀な先発左腕として活躍してきたチャン・ウォンサム(38、前ロッテ・ジャイアンツ)は11巡目で指名を受けた。
次代の“スティールピック”はキム・ゴンヒョンが引き継ぐかもしれない。新人としては年齢が高く将来性が未知数だった点、そして兵役が未完了だったためドラフトでは下位指名となったが、これから評価をひっくり返す可能性は十分にありそうだ。
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