神戸と戦う韓国の“低予算クラブ”江原、率いるは正監督1年目の45歳 成績不振で“気合いの丸刈り”も

2025年10月21日 サッカー #ACL #Kリーグ

韓国で昨年まで“有能コーチ”と評価された指導者が、正監督挑戦1年目にして早くも結果を残している。江原(カンウォン)FCを率いるチョン・ギョンホ監督のことだ。

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チョン・ギョンホ監督が率いる江原は今季Kリーグ1(1部)のレギュラーラウンドを12チーム中6位で終え、ファイナルラウンドでの上位グループ進出を決めた。

Kリーグ1はスコットランドなどと同じ「スプリット方式」が採用されており、第1~33節までを「レギュラーラウンド」として全12チーム3回総当たりで行った後、「ファイナルラウンド」として第34~38節のラスト5試合を上位と下位6チームずつ2グループに分けて実施する。

ファイナルラウンドでは上位グループと下位グループで完全に分かれるため、下位グループでは最後まで残留争いに巻き込まれる反面、上位グループでは降格の可能性が完全に消滅し、来季ACL出場権などをかけて争う。

江原は第33節を終えて11勝11分11敗の勝ち点44。7位のFC安養(アニャン/勝ち点42)、8位の光州(クァンジュ)FC(勝ち点42)を上回り、上位グループに滑り込んだ。

江原
(写真提供=韓国プロサッカー連盟)江原FCの選手たち

光州以上の“超低予算クラブ”

江原は2年連続で上位グループ進出を達成。戦力が拮抗し、生存競争が激しいKリーグ1で安定して残留を確定させたことは大きな成果だ。何より、軍隊チームの金泉尚武(キムチョン・サンム)を除いて唯一、地方自治体が運営する市民クラブとして上位グループ入りを果たした点も意義深い。

上位グループの顔ぶれは、5試合残して優勝した全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースのほか、金泉尚武、元Jリーガーのファン・ソンホン監督率いる大田(テジョン)ハナシチズン、今季AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)出場の浦項(ポハン)スティーラーズ、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)出場のFCソウル、そして江原である。全北現代は「現代自動車グループ」、大田は「ハナ金融グループ」、浦項は「POSCO」、FCソウルは「GSグループ」を母体とする企業クラブだ。

下位グループは昇格組のFC安養、昨季ACLEベスト8の光州、昨季まで3連覇を達成した蔚山(ウルサン)HD FC、そして水原(スウォン)FC、済州(チェジュ)SK FC、大邱(テグ)FCという面々だ。下位グループは企業クラブが蔚山、済州の2チームで、残る安養、光州、水原、大邱はいずれも江原と同じ市民クラブである。

江原の2024年シーズン年俸総額は83億8813万1000ウォン(日本円=約9億133万円)で、金泉尚武を除き1部11チーム中10位。光州(96億6198万9000ウォン=約10億3838万円)よりも少なく、最多の蔚山(209億1237万ウォン=約22億4750万円)とは約2倍の差があるなど、限られた財政規模でも上位に食い込むチームの中心には、チョン・ギョンホ監督の存在がある。

チョン・ギョンホ監督
(写真提供=韓国プロサッカー連盟)チョン・ギョンホ監督

コーチ時代は「有能なナンバー2」の異名

チョン・ギョンホ監督は1980円5月22日生まれの45歳。現役時代は2009年よりKリーグに参入にした江原に創設メンバーとして加入し、背番号10のエースとして活躍した。引退後はユ・サンチョルさん(元横浜FM、柏)が監督の蔚山大学サッカー部、キム・ナミル氏(元神戸、京都)が監督の城南(ソンナム)FCでコーチを務め、2022年にはキム・ナミル監督退任後に監督代行も任された。

そして2023年、成績不振で江原の監督を解任されたチェ・ヨンス氏(元市原、京都、磐田)の後任を務めたユン・ジョンファン氏(元C大阪、鳥栖、千葉監督)のもとでアシスタントコーチに就任。指導者として古巣に帰ってきた。

ユン・ジョンファン監督体制では主に戦術とトレーニングを担当。江原は昨季Kリーグ1でクラブ史上最高順位の2位を達成したが、その快挙の“裏の立役者”とされたのがチョン・ギョンホ監督だった。コーチ時代に「有能なナンバー2」と呼ばれてきた彼が、本格的に脚光を浴び始めたのもこの時だった。

ユン・ジョンファン
(写真提供=韓国プロサッカー連盟)ユン・ジョンファン氏は江原退任後、2部降格の仁川へ。現在は首位独走で昇格目前

2024年シーズン終了後、江原のキム・ビョンジ代表取締役がユン・ジョンファン氏との再契約交渉で決裂した後、すぐにチョン・ギョンホ監督を後任に据えたのもその力量と信頼の厚さゆえだった。現場で見た彼の指導力は、監督を任せるうえで申し分ないと判断されたわけだ。そしえ、その決断は見事に的中した。「コーチと監督は違う」という声も払拭し、チョン・ギョンホ監督は結果で自らの手腕を証明している。

江原は「Kリーグで最も“やりにくい”チーム」

何より、江原が今季開幕前に大幅な“主力流出”を余儀なくされたからこそ、その価値は大きい。昨季準優勝を支えたFWヤン・ミンヒョクがトッテナムへ移籍、DFファン・ムンギが兵役のため一時チームを離脱し、DFキム・ヨンビンは同カテゴリーの全北現代へ移籍。その穴を埋めるだけの補強はできず、加えて外国籍選手たちは軒並み期待を下回るパフォーマンスでチーム運営も難航した。

シーズン序盤には不振が続き、チョン・ギョンホ監督自ら“丸刈り”にして心機一転を誓うという出来事もあった。そんな紆余曲折を経て試合を重ねるうちに、チョン・ギョンホ監督体制の江原は「Kリーグで最も“やりにくい”チーム」へと進化した。

チョン・ギョンホ監督
(写真提供=韓国プロサッカー連盟)今年4月、丸刈りにした当時のチョン・ギョンホ監督

第33節終了時点で総得点「32」はリーグ最少も、総失点「36」は優勝の全北現代に次いで2番目に少ない。ペナルティエリア内での決定力こそ課題が残るが、柔軟な変則3バック、緻密な後方からのビルドアップ、そして連動したプレッシングなど、戦術面の完成度は非常に高い。45歳でKリーグ1最年少監督、そして“新人監督”という肩書きはもはや必要がない。

江原はコリアカップ(前FAカップ)でもベスト4まで進出。決勝進出は全北現代に阻まれたが、準決勝まで駒を進める底力を見せた。また、クラブ初出場となるACLEでも1勝1敗の成績を残している。上位グループ進出によってKリーグ1残留を確定させた今、江原は国際舞台に集中できる環境が整ったというわけだ。

チョン・ギョンホ監督本人はシーズンを戦いながら、試合中に起きる状況への対応や采配に課題があるという自己分析もしている。克服すべき課題は多いが、彼はまだ正式に監督を務めて1年目。チームを作り上げる力量とリーダーシップを土台に経験を積み重ねている最中だ。

彼は今、韓国サッカー界が注目すべき新世代の指導者として、確かな歩みを続けている。

江原は次戦、10月22日にホームの春川松岩(チュンチョン・ソンアム)スポーツタウンでヴィッセル神戸とのACLEリーグフェーズ第3節を戦う。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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