『ミセン(未生)』(2014年/tvN)8.2%、『応答せよ1988』(2015年/tvN)18.5%、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(2016年/tvN)20.5%、『太陽の末裔』(2016年/KBS)38.8%、『ミスター・サンシャイン』(2018年/tvN)18.2%。
これら作品の特長を簡潔に紹介しながら、イ・ビョンフン監督は言った。
「『太陽の末裔』の視聴率が最も高いですが、地上波で放映された作品です。そのほかはすべてケーブルチャンネルであり、着実に平均視聴率を伸ばしている。ケーブルテレビでは視聴率が1~2%を突破すれば大成功といわれるなかで、10%を楽々と突破しているのです。
視聴率が良いから広告スポンサーも増えた。もともと韓国では地上波だと30分に1回、ケーブルテレビだと15分に1回の頻度でCMを差し込めるため、企業もケーブルテレビのドラマのスポンサードを好む傾向にあるんです」
そうしたこともあって、地上波の収入も落ちているという。
例えば韓国の公共放送KBSの場合、1998年には580億ウォン(約58億円)の赤字だったが、2019年は赤字が1000億ウォン(約100億円)に肉薄するのではないかとイ・ビョンフン監督は語る。
「もともと韓国ではドラマを作っても局はほとんど赤字でした。それでも視聴者が望むので地上波各局は身を粉にしてドラマを作ってきました。実際、『イ・サン』は全77話、『トンイ』は全60話、『馬医』は全50話、『オクニョ』は全51話です。
ですが、そういった長編ドラマを作れる体力がなくなりつつある。長編で企画されたのに視聴率も取れず、広告収入も得られないとなると、テレビ局にとってドラマはリスクでしかない。だから近年のトレンドは16~24話作となっているのです」
16~24話の作品であっても、1クール平均10回前後の日本に比べれば十分に多い。それに話数が少なくなったことで、興味深い現象も起きているという。
「韓国の地上波では、これまで警察モノや推理モノなどはあまり人気がなかったのですが、話数がコンパクトになってスピーディーな展開が大衆に受けているのかもしれません。
また、今年だと『熱血司祭』(SBS)が平均22.0%、『椿の花咲く頃』(KBS2)が平均23.8%と、地上波でもヒットが生まれました。ただ、この2作品は全40話なので、ヒットしても赤字です。
韓国ではドラマがヒットしても、50~80億ウォン(約5~8億円)は赤字を覚悟しなければならない。ドラマ関係者やテレビ局関係者たちの間でよく嘆くんですよ。“ドラマをやれば赤字だが、やらないわけにはいかない”と」
しかも最近は、視聴率競争や広告収入の落ち込み以外にも、強力なライバルが出現している。イ・ビョンフン監督も「ある意味、韓流ドラマは危機に直面している」と言った。
その核心については、また改めて紹介したい。
(文=慎 武宏)