韓国ドラマや映画を語るうえで外せないのが、俳優らの兵役問題だろう。
満18歳を迎えた韓国人男性は19歳になる年に徴兵検査を受け、28歳までに入隊をしなければならない。
これは芸能人も例外ではなく、軍服務期間中には芸能活動ができない。そのため、スターのあいだではある程度地位を確立するまで入隊を先延ばしにしたうえで、兵役による空白期間を設けるという流れが一般的だ。
しかし、なかには芸能界を目指しながらも早期に入隊を済ませ、兵役を終えたのちにデビューして成功を収めている俳優もいる。
今夏の韓国ドラマ・映画界を盛り上げているチョン・ヘインとパク・ソジュンがいい例だ。
7月28日にNetflixで公開されたオリジナルドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン2に出演し、前シーズンに引き続き主人公のアン・ジュノを演じたチョン・ヘイン。彼は大学で演技科を専攻し俳優を目指していたが21歳の在学中に入隊し、所属部隊では2.5tの軍用トラックを運転する師団長運転兵を務めた。
2018年にドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』で国民的人気を得た当時、チョン・ヘインは30歳になる年であった。
去る8月9日に韓国で公開された映画『コンクリートユートピア』で大きな反響を得ているパク・ソジュンもまた、デビュー以前に兵役を終えている。
パク・ソジュンは高校時代に俳優を夢見るようになり大学の演技科で演技を学んだが、1年生の1学期が終わった直後に入隊している。本人によると、演技の勉強に励む過程で伸び悩み、頭を整理しようと早期の入隊を決意したという。
その後ドラマ『ドリームハイ2』で俳優として本格的に活動を始めたパク・ソジュンは、2014年に出演した『魔女の恋愛』でブレイク。当時26歳だった。
パク・ソジュンはのちにテレビ番組を通じて「当時は早い入隊を後悔することもあったが、今ではよかったと思う」と当時を振り返っており、実際にデビューから現在までの華麗な軌跡を見るとその選択が正しかったことがわかる。
いずれも俳優としては遅咲きだが、兵役をすでに終えているため活動の見通しを立てやすく、安定した人気を維持できるという点は強みだろう。
ソン・ジュンギの親友として知られる俳優イ・グァンスもまた、デビュー前に兵役を終えて今では韓国でお馴染みの俳優となっている。
イ・グァンスはもともとモデルとして活動しており、20代前半に兵役を終えている。「190cmの高身長が俳優にふさわしくない」とされていたため俳優を目指すことをためらっていたという経緯があり、役者としての第一歩を踏み出したのは軍服務を終えてからだった。
ドラマ『明日に向かってハイキック』『トンイ』『シティーハンター in Seoul』などに出演して人気を獲得し、韓国の人気バラエティ『ランニングマン』では11年にわたってお茶の間を楽しませた。
韓国で熱い旋風を巻き起こしたドラマシリーズの3作目『応答せよ1988』に出演してブレイクしたリュ・ジュンヨルは、デビュー前に兵役を終えた俳優のなかでも公益勤務要員(現在の社会服務要員)出身の俳優だ。
公益勤務要員は、兵役判定検査で4級(補充役)の判定を受けた人が現役兵の代替として公的機関で勤務する制度。リュ・ジュンヨルがなぜ現役兵ではなく公益勤務判定を受けたのかは明らかにされていないが、「デビュー前にもかかわらず兵役中にサインの練習ばかりしていた」というエピソードはファンのあいだで今でも語り継がれている。
そのため、ブレイクした当時は世間から「無事にブレイクしてよかった」「練習の成果を発揮できましたね」といった声も相次いだ。
昨今は若手俳優の活躍が目立ち、早い段階で高い人気を獲得することも珍しくない。今では貴重な存在となりつつある“兵役済みデビュー”だが、のちの成功を考えれば合理的な判断ともいえるだろう。
(文=姜由奈)
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