グローバル市場への再飛躍に向け、まさに“ゴールデンタイム”を迎えているK-POPが、思わぬ壁に直面している。
“BTSの父”と呼ばれるHYBEのパン・シヒョク議長に、株主間契約をめぐる疑惑が浮上。金融当局や捜査機関の調査対象となり、K-POPを代表する企業のグローバルプロジェクトに影響を与えるのではないかという懸念が高まっている。
特に、BTSの復帰が目前に迫るなか、この問題がHYBEのグローバル戦略のみならず、K-POP全体のイメージにも悪影響を及ぼしかねないとの指摘もある。
警察および金融監督院(韓国の金融当局)は最近、パン議長のIPO(企業公開)に関連した株主間取引について調査に乗り出したと報じられている。疑惑の中心は、HYBE(当時はBig Hitエンターテインメント)の上場前に、既存の財務投資家(旧FI)から新たな投資家(新FI)への株式譲渡の過程で結ばれた契約内容にある。
具体的には、上場に失敗した場合にはパン議長が投資家の持分を買い取り、上場に成功した場合は一定の利益を分配するという条項が含まれていたという。しかし、この契約内容が実際の上場時に提出された有価証券報告書に記載されていなかったことから、議論が拡大。「上場計画があったにもかかわらず、それを隠して株式を譲渡したのではないか」との見方が浮上し、資本市場法上の“詐欺的な不公正取引”にあたる可能性があるとの指摘も出ている。
これに対しHYBEは、「上場や投資誘致など、さまざまな選択肢を投資家と協議してきた。上場計画を否定したり、隠したりした事実はない」と反論。実際には、上場と投資誘致の両方を検討していたことを、ほとんどの投資家に伝えていたという。
また、当時持分を売却した旧FI側も、企業の状況や戦略的方向性を把握したうえで自主的に判断して売却したと強調。該当契約についても法的な検討を経て、公示義務の対象外であることを再三説明している。
それにもかかわらず、現時点で調査内容が“確定した容疑”ではない段階にも関わらず、一部で既成事実化される風潮が広がっており、HYBE側は困惑を隠せない様子だ。特に、パン議長がプロデュースの全般を直接統括しているBTSが、今年後半にカムバックを予定しているだけに、リーダーシップの揺らぎがグループ活動のみならず、会社全体のグローバル戦略にも影響を与える可能性がある。
実際、HYBEはBTSの復帰に加え、北米・南米市場においてK-POP式の制作ノウハウを応用したグローバルアーティストのローンチを目前に控えている。Kコンテンツの“前哨基地”として、同社の海外展開はすでに国際エンタメ業界から注目を集めている。
しかしこのように、経営陣が疑惑に足を取られる状況が長期化すれば、コンテンツ企画や投資誘致、国際的な連携といった流れそのものが萎縮するリスクもあるとの見方が出ている。
とりわけ、オーナー型リーダーシップが支配的な韓国エンタメ業界では、経営トップの不安定化がアーティストの活動やコンテンツ制作、海外進出にまで波及する可能性が高い。そうした背景から、業界関係者や政策当局の双方に、より慎重でバランスの取れた対応が求められるという声が強まっている。
ある業界関係者は次のように語った。
「BTSの復帰が予定されている2025年後半から翌年上半期にかけては、K-POP産業が再び飛躍できるのか、それとも全盛期を過ぎて、香港映画や日本アニメのように“世界の懐かしのジャンル”として記憶されるだけになるのかを分ける分岐点です。新政権が“文化強国”を掲げている今こそ、K-POP産業が本来持つ競争力と創造性を発揮し続けられるよう、企業が外的要因に左右されない安定した環境を整えることが重要です」
(記事提供=OSEN)
前へ
次へ