2012年の韓国プロ野球(KBO)は、1試合当たり平均観衆数1万3451人を動員し、歴代最高数値を記録している。
この年は8球団体制最後のシーズンで、パク・チャンホ、キム・テギュン、キム・ビョンヒョンといった元メジャーリーガーが韓国に復帰したことで、ペナントレース序盤からスタジアムは人の波でごった返していたそうだ。
特に故郷のチームであるハンファ・イーグルスのユニホームをまとい、現役最後のシーズンを送ったパク・チャンホの効果はすごかったという。彼が先発登板する試合は、早くから前売り分が即完。ハンファ・イーグルスのホームゲームはもちろん、アウェーゲームにいたるまで韓国全土の野球ファンがパク・チャンホの勇姿を直接目にするために集結していた。
40歳で先発投手として出場していただけに全盛期には及ばなかったが、それでも計23試合121イニングを消化し、韓国人選手として初めてMLBの壁を越えたパイオニアが、韓国野球ファンの前で有意義なキャリアのピリオドを打った。
それから9年後、MLBで最も大きな成功を収めたとされるもう1人の“コリアン特急”チュ・シンスが韓国に復帰をはたした。
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チュ・シンスは2月、SKワイバーンズを買収した新世界グループの球団と入団契約を結び、高校生以来の韓国でプレーする。奇しくもパク・チャンホと同じく、40歳でKBOの舞台に舞い戻った。
同じ年齢での母国復帰ではあるものの、チーム内で占める比重には差があると見られている。
まずポジションが異なり、負傷歴も違う。パク・チャンホが30代で負傷に苦しみながら浮き沈みを経験したのとは違い、チュ・シンスは特に大きな負傷もなくキャリアを歩み続けてきた。
韓国復帰直前のシーズンを見てもわかる。パク・チャンホは復帰直前の2011年には日本プロ野球のオリックス・バファローズで過ごし、先発と中継ぎを兼業しながら15試合に登板した。反面、チュ・シンスは2020年もアメリカでリードオフマンとして出場し続けた。韓国全土から注目を集めている選手が猛活躍する場合、波及効果の大きさは尋常ではないものなのだ。
とあるソウルの球団関係者は、「チュ・シンスを電撃的に迎え入れた新世界グループの決断に拍手を送りたい。今のような厳しい時期に、チュ・シンスという興行的にも大きなカードは、KBOにとって大きな幸運となり得る」とチュ・シンスの韓国復帰を歓迎した。
韓国野球委員会の関係者も、「チュ・シンスの韓国復帰がシーズン序盤の興行における起爆剤になることを願っている。まず入団後、大衆の注目度は非常に高い。われわれが予想していた以上のものだ」と微笑んだ。
チュ・シンスの迎え入れを進めたリュ・ソンギュGMも「チームはもちろん、リーグ全体に良いことではないかと思う。開幕戦から観客入場が可能であれば、この上なく良いだろう」と語った。
そうなると、カギはやはり観客の入場可否だ。リュ・ソンギュGMの言葉通り、開幕戦から観客入場が許されるなら、スタートダッシュを決めることができる。
しかし現在、新型コロナの影響により収容率100%の観客入場は不可能だ。新世界野球団のホームタウンである仁川(インチョン)の場合、直ちに開幕戦が行われるとなると、観客の入場は10%に制限される可能性が高いとされている。
直近に開幕したサッカーKリーグも、“社会的距離確保”の第2段階が適用されている首都圏でのゲームは全体収容人員の10%に、“社会的距離確保”の第1.5段階が施行中の非首都圏でのゲームは30%の観客が入場可能となっている。
球団関係者によると、少なくとも30%以上が入場してこそ黒字になるという。観客入場の際、警備スタッフをはじめとした外部スタッフだけでも数100人が必要となるからだ。
KBOの選手全員が、満員の観客から吹き出す熱い熱気を待ちわびている。もしも、新型コロナ渦でなければ、チュ・シンスの獲得効果はシーズンチケットの売り上げに直結したはずだ。
とある首都圏の球団関係者は「昨年、すべての球団が100億ウォン(約10億円)以上の損害を被った。今年も見通しは暗い。オープン戦もひとまず無関客で行う予定だ」とし、「それでも、レギュラーシーズンを通して50%程度の観客収容が可能となり、野球場の飲食制限などが緩和されれば、昨年よりは良くなるのではないかと思う。チュ・シンス選手が来る試合だけでも、観客入場が可能になることを願う」と話していた。
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