FC岐阜に所属するMF文仁柱(24)が、自身が生まれ育った日本の地で北朝鮮代表デビューを果たした。
文は3月21日、東京の国立競技場で行われた北中米W杯アジア2次予選の日本代表戦で後半38分から左サイドバックとして出場。アディショナルタイム含め約10分間、背番号7が国立のピッチを駆けた。
1999年8月生まれ、埼玉県出身の在日コリアン。埼玉の朝鮮学校から東京朝高、朝鮮大に進学し、2022年に金鍾成監督(現FC琉球監督)が当時率いたガイナーレ鳥取でプロデビューした。今季から岐阜に完全移籍加入し、新天地でも左SBで主力を張る。J3通算成績は53試合出場2得点。
北朝鮮代表には今年1月29日~2月5日の合宿参加を経て、今回の日本戦で初招集。“サッカーの聖地”国立でA代表デビューの瞬間を迎えた。
試合前の選手紹介で文の名前が呼ばれると、3000人を超える北朝鮮ゴール裏の在日応援団の歓声が一気に高まった。試合中も、前半途中からゴール裏近くでアップする文に激励の声が飛んだ。
後半38分の投入直前、文がベンチでトレーニングウェアを脱ぎ、赤色の代表ユニホーム姿でピッチ脇に立つと応援団のボルテージも最高潮に。直後、国立の芝に足を踏み入れた文に再び熱い声援が届けられた。
1点ビハインド、それも試合終了間際という難しい時間帯だったが文は臆することなくプレーし、同サイドで対面したFW浅野拓磨(29、ボーフム)ともマッチアップ。結果は前半2分の失点が響き0-1の敗戦となったが、試合後は文やチームに在日応援団からエールが送られた。
文は試合終了の笛が鳴った直後、この試合では途中出場だった日本代表キャプテンのMF遠藤航(31、リバプール)と握手を交わし、互いの健闘を称え合っていた。
なお、過去にW杯予選で日本代表と対戦した在日コリアンの北朝鮮代表選手では、今試合で解説を務めた鄭大世氏(元川崎F、清水、新潟、町田)をはじめ、安英学氏(元新潟、名古屋、大宮、柏、横浜FC)、李漢宰氏(元広島、札幌、岐阜、町田)、梁勇基氏(元仙台、鳥栖)などがいる。
文もこれまでJリーグで活躍した先輩たちに続き、北朝鮮代表選手としての第一歩を踏み出した。
(取材・文=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)
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