ペ・ソンウが日本でゴルフをしたいと考えるようになったのは、2015年からスタートした「THE QUEENS」がきっかけだった。
「THE QUEENS」とは日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)、韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)、オーストラリア女子プロゴルフ協会(ALPG)、ヨーロッパ女子プロゴルフツアー(LET)という、4ツアーによる対抗戦として2015年から行われている。
ペ・ソンウはその第1~3回大会に出場。興味深いことに、その3大会に出場した韓国チームのキャプテンは、いずれも日本女子ツアーでプレーする選手たちだった。
第1回大会はイ・ボミ、第2回は申ジエ、第3回はキム・ハヌルだ。
「3大会連続で出場したのですが、1年目はよくわからなくて、単純に日本のゴルフ場でゴルフしてみて、日本女子ツアーでやってみたいなとぼんやり思いました。ボミ・オンニ(姉さんという意味)とも日本ツアーについていろいろいと話しましたが、そのときはまだ確信を持てなくて。
2回目の韓国チームのキャプテンは申ジエ選手でした。同じ大学の先輩なんです。ジエ・オンニと日本ツアーについて話したときに、“私がいる間に日本に来れば”とも嬉しい言葉もいただいて。そして3年目にはキム・ハヌル選手とも日本ツアーの話をたくさんして。そんな3年間があって、本格的に日本でやってみたいと思うようになったんです」
韓国ゴルフ界の“チジョン(至尊)”と呼ばれる申ジエをはじめ、“神セブン”に挙げられるイ・ボミやキム・ハヌルから日本ツアーの魅力を聞き、日本への思いを育てたわけだ。
だからといって、すぐに日本に行こうとはしなかった。まずは韓国で「自分の確固たるプレースタイル」を身につけることが先決だったからだという。
「本当は大学卒業と同時に行こうと思ったのですが、両親と話して、自分の確固たるプレースタイルを身につけて、韓国でトップクラスになってから日本に行くべきだと思いました。しっかりとした実力がなければ、日本に行っても仕方がないと。
昨シーズン、韓国女子ツアーの賞金ランキングで2位になったからというわけではないですけど、ある程度、自分のスタイルを固めることができたと思ったので、今シーズンから参戦しています」
ペ・ソンウは実際に日本でプレーして、いくつか印象が変わったことがあるという。
例えば、日本の選手たちに対して抱いていたイメージだという。
「これは私個人というか、韓国人選手の多くが持つ先入観でもあると思うのですが、日本人選手はあまり飛距離が出ないと思っていました。そもそも日本はコースも短いというイメージがあって。
でも実際にプレーしてみると、飛ばせれば飛ばせるほど成績が上がるコースになっていました。何よりも日本の選手も飛ばします。私なんかまったく駄目なようです(笑)。韓国にも飛距離がある選手が多いですが、日本にもそういう選手がたくさんいることに御驚きました」
また、会場を訪れるギャラリーたちの試合の見方にも日韓には違いがあるという。韓国のゴルフ・ファンたちは、特定の選手を応援するために会場に訪れる。一方で、日本のゴルフ・ファンは「プレー重視の印象」を受けたという。
「日本のギャラリーは、美術館のギャラリーのようだという言い方をしますよね。その通りで、日本のギャラリーは、良いショットやナイスプレーを称賛してくれます。日本はゴルフを見にくる、韓国は選手を応援するといった印象です。文化が少し違うようですが、どちらもありがたいことです」
日本のギャラリーからお菓子などのプレゼントもらったときは、驚いたという。韓国にはない文化だからだ。「プレゼントの中にはその地域の名産物やスターバックスカードもあった」と笑うペ・ソンウは、そんな日韓の違いをとても楽しんでいる様子だった。
何よりも、日本と韓国のツアーでプレーする選手たちの印象にも、違いを感じるという。韓国は結果重視、日本は内容重視という印象を受けるそうだ。
「韓国女子ツアーはサファリパークのようで、虎やライオンと戦っている感じがします(笑)。とても怖いです(笑)。すべての試合、すべてのホールで火花を散らしながら熾烈に争うスタイルで、最近は若い選手も続々と台頭してきます。
それに比べると、日本は全体的に結果よりも内容を重視するように感じます。韓国は結果に対する追求が強く、日本は内容に対する追求が強いという特長があると思います」
長らく日本女子ツアーへの思いを持ち、今季からその思いを現実のものにしているペ・ソンウ。ゴルフの結果で存在感を示しているのはたしかだが、初の海外暮らしに苦労はないのだろうか。
ペ・ソンウは意外にも、日本で1998~1999年生まれの“黄金世代”と呼ばれる選手たちと仲がいいと話す。