韓国女性議員による秘書の不当解雇騒動は「自分がしたらロマンス、他人がしたら不倫」そのもの?

2021年02月04日 社会

韓国には“ネロナムブル”というスラングがある。「自分(ネ)がしたらロマンス、他人(ナム)がしたら不倫(ブルリュン)」という意味を持つ言葉だ。

最近、韓国のリュ・ホジョン議員が秘書を不当解雇したという騒動を見て、そのスラングが思い浮かんだ。

【画像】リュ・ホジュン議員が“ピンク色ワンピース”で国会に出席して大騒動

リュ議員は2020年12月、随行業務を担当していた7級秘書を解任する過程で、不当解雇疑惑に巻き込まれた。とある党員がわずか1週間前に解雇を通知し、休憩時間もまともに与えなかったという疑惑を提起したことが発端だった。

リュ議員は業務上の性向の違いがあって免職したという立場を出したが、議論は真相追究へと向かう雰囲気だ。なぜか。

「不当解雇された被害者」が看板だったリュ議員

そもそもリュ議員が正義党・比例代表1番候補だったときに掲げた看板は、“解雇労働者”というものだった。彼女は当時、某ゲーム会社から一方的に解雇された被害者という点を強調しながら、不当な処遇を受けているIT・ゲーム業界の労働者を代弁すると主張した。

(写真=リュ・ホジョンSNS)

ところが、今ではリュ議員本人が不当解雇の加害者という疑惑を受けているのだ。

彼女が国会議員になるまで国民に見せてきたアイデンティティは、どこに行ったのかという疑問が浮かんでしまう。「私も不当解雇の被害者だ」というリュ議員の主張も、本当だったのかと疑われても仕方がない。

それについてIT・ゲーム業界の一部からは、リュ議員が典型的な“ネロナムブル”式の考え方をしているとの指摘が出ている。

国会議員に当選する前まで、不当解雇労働者とIT業界を代弁することを自任して革新を約束したが、当選後の歩みからは、そのような姿を確認することができない。

IT・ゲーム業界ではリュ議員が免職事由として明らかにした“被害者の資質不足”というフレーズは、企業が多くの労働者を解雇したときの言い訳としてよく使われる常套句に他ならない。不当解雇された労働者を代弁するというリュ議員が、同じ方便で解雇を正当化することは言動不一致というわけだ。

もちろん法的に見れば、解雇1週間前に当事者に通知したことは労働法に抵触しない可能性が高い。随行秘書など、国会議員の補佐陣は国家公務員法上の特別職公務員であり、民間の労使に適用される労働基準法などの労働関係法の保護を受けないからだ。

補佐陣の免職手続きは、「国会特別職公務員の人事規定」に従う。その規定によると、国会議員は、国会事務総長に免職させる職員にたいする免職要請を提出するだけで、いつでも自由に解雇することができる。解雇の理由に対する制限もない。つまり国会議員の補佐陣は、法律の保護をまったく受けられないわけだ。

それでも労働者側に立ち、誰よりも率先して彼らを守るとしてきたリュ議員が、法の保護を受けられない秘書を解雇したことは正当といえるだろうか。

過去に不当解雇されたと主張したリュ議員は当時、数千万ウォン(数百万円)に達する退職慰労金を受領していたことが知られ、早々と論理的な正当性を失った。今回の議論がイシュー化しているのは、被害者と主張していた彼女の立場が加害者に変わったからだ。

「自分がしたらロマンス、他人がしたら不倫」。誰が作ったスラングかわからないが、これほど簡潔かつ正確に、今回の騒動を整理する言葉があるだろうか。

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