中国最大のオンラインショッピングモール「タオバオ」で、韓国の“歴史的悲劇”に深く関わった人物・全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領の顔を使った商品が販売され、韓国国内で強い批判が巻き起こっている。
韓国・誠信(ソンシン)女子大学のソ・ギョンドク教授は最近、SNSで「多数のネットユーザーからの通報を受けて確認したところ、タオバオでは全斗煥の顔を使った半袖Tシャツやパーカー、バッグなどが複数販売されていた」と明らかにした。
問題の商品は、米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を模倣した「ザ・サウス・フェイス」というロゴの隣に、全斗煥の顔写真をプリントしたデザインとなっている。しかも、1980年に光州(クァンジュ)民主化運動を流血で弾圧し、のちに大統領に就任した当時の顔写真が使われているということで、多くの韓国市民や遺族の記憶を逆なでするものとなっている。
全斗煥は1979年のクーデターを機に権力を掌握し、1980年に非常戒厳令のもとで光州に軍を投入。民主化を求める市民を武力で制圧し、数百人規模の死傷者を出した。この“光州事件”は、韓国の現代史における最も悲劇的な事件の一つとして位置づけられ、全斗煥は現在も「軍事独裁の象徴」「民主主義を踏みにじった人物」として強く批判されている。
これを受けてソ教授は、タオバオ側に抗議メールを送り、「こうした商品の販売は、数多くの犠牲者遺族に再び深い傷を与える行為だ」として、即時の販売中止を要求。「売っていい商品と、絶対に売ってはならない商品を区別する倫理観が必要だ」と厳しく批判した。
さらに、「他国の痛ましい歴史を茶化して収益を得るような行為は、国際的な非難を免れない。歴史的な傷を金儲けのネタにするような行動は、今すぐやめるべきだ」と訴えている。
なお、中国における“全斗煥ネタ”の商業化・揶揄行為は今回が初めてではない。中国人TikTokユーザーが全斗煥を真似て光州の市街地を歩く動画を投稿し、非難を浴びたことがある。ほかにも、中国のプロサッカークラブ・山東泰山のサポーターが、韓国Kリーグの光州FC戦で全斗煥の写真を掲げ、激しい抗議を招いたこともある。
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